〜夜空の種火について〜

 開放弦のギター・コードをびろ〜んと鳴らし、アイルランド民謡のような、日本の童歌のような懐かしいメロディを爪弾きながら山口洋のソロ・ステージは始まる。
 いつものバンド・メンバーはいない。ステージにいるのは彼一人。控えめなスポットライトが彼を照らし、その肌色はオレンジ色に映る。歌うたいの背後には本人のシルエットが浮かび、さながら2つの生き物が同じ音楽に揺れているかのよう。今夜、音楽は夜空の種火だ。オレンジの夜が始まる。
 音数の少なさをむしろ逆手にとって、口笛を吹いたりギターのボディを打楽器のように叩いたりして、できるだけ山口は音楽を立体的に構成しようとする。見事な“芸”である。しかしその芸は考え抜かれたものというよりも運動神経が導く即興に近く、その咄嗟の思いつきやセンスに一流のミュージシャンシップを感じ取る場合が多い。
 こんな時代である。経済の逼迫が様々な種類の思いやりを蹂躙している時代だ。歌に何ができるだろう。人は歌に何を求めるだろう。このライブ盤に印された山口洋は空元気や切り返しの意気を提供する代わりに、聴き手の心を温めるような優しい音楽を奏でようとしている。台の上からではなく同じ目線で、聴衆に共感や同感を求めている。
 中高年に人気の某コメディアンなら“とにかく頑張っていただきたいのです!”とメッセージを送るのかもしれない(笑)。山口洋ならば“不安も苦痛も絶えないけれど、せめて魂だけは荒野を駆けてゆきましょうよ”と歌の中で呼びかける。そう感じていたいのは他ならぬ歌い手本人でもあるだろう。
 この頃山口は、こんな話を良く口にする。
 「こんな時代にわざわざ俺のライブに来てくれるお客さんは、ホント俺にとっての神様ですよ。今は奇跡のような夜は作れないし作ろうとも思わない。昼間の仕事や家事を終えて音楽を聞きに来てくれる人に、ちょっとだけ楽しい思いを感じて欲しいんです。ああ生きてて良かったと思って欲しい。それだけで俺は充分なんです」
 カフェ・ミルトンでのライブ盤は、まさしくそんな音楽だ。聴き手はきっと、ちょっと楽しい思いになれる。静寂の中にふと立ち上がる、願いや希望や善。夜空の種火とは、きっとそれを指すのだろう。

★ライヴ会場 & 通信販売限定リリース!★

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山口洋のソロ・アルバム第二弾「Live at Cafè Milton」を置いてくれているお店の情報です。
随時、追加、更新します。
text by 山口洋

札幌ボタニカルガーデン

(札幌市厚別区厚別南2丁目 13−28キャッスル肇1F中央)

業種 - 無意味に熱いジーパン屋

ソロの北海道ツアーで、出会った無意味に熱い男が始めたジーパン屋。彼の目は「本気」と書いて「まじ」だったので、置いてもらうことにしました。俺、まだ行ったことないんだけど、間違いなく札幌の「Land of music」でしょう。祝!開店。
TEL&FAX:011-893-8785

panの森

(北海道函館市)

業種 - 魂が入りすぎてときどき空回りしてる有機野菜農場兼直売所

無類の音楽好き(ヒートウェイヴのアルバムをマイク・スコットに渡すためイギリスに行ったっちゅー逸話あり)夫婦とその母が営む、有機野菜直売所。その野菜は「野菜ってこんな味だったのかーーー」って事を教えてくれます。アルバム買って、野菜も手に入れて帰るってのはかなりオツだと思います。ワン。
http://panwithin-farm.com/

アサイラム

(青森県弘前市)

業種 - 魂の入った飲み屋

弘前市が誇る入魂のレコード・ショップ、「joy pops」亡き後、店主ヒロシ(56)が始めたアナーキーな飲み屋。ここには5万を超える収録曲を誇るスーパー・コンピューターから絶え間なく素晴らしい音楽が流れています。飲み物はすべて500円。意味不明なチャージなんて、もちろんありません。あるのは無愛想な店主の妙なホスピタリティーと極上の音楽のみ。俺が飲み屋に求める全てがここにあります。ただし、店主変人につき、店のありかは伝えません。自分で探して下さい。土手町にあります。

モリタミュージック

(福島県相馬市)

業種 - 身体はメタボってるけど、魂キレキレの正しいレコードショップ

モリタさんちは代々続くレコード屋さんです。業界に吹く逆風をその無意味にデカい身体でモノともせず、今日も魂込めて、良質の音楽を紹介し続けています。1995ツアー(12年前)に出会いました。お互い、こんなに深い仲になるとは。とほほ。

カフェ・ミルトン

(宮城県白石市)

ここに置かなくて、何処に置くのよ、このアルバム。

knife* acoustic groove*

(渋谷区代官山)

業種 - 熱すぎるジュエリーショップ

云わずと知れた、「羽根シリーズ」を製作してくれているジュエリー・ショップ。ディレクター、中野さんの仕事っぷりを観ると、この世界にも「ロックンロール」っちゅー言葉があんのね、と納得します。是非、実物を。彼と話していると、アイデアが湧いてくる(もちろんミュージカルなことも含めて)ので、最近良く会ってます。お互い熱すぎるのが「タマニキズ」だけど。
http://k-a-g.com/

a workroom

(渋谷区代官山)

業種 - 仕立て屋さん

ここのプロデューサー及び、クリエイティヴディレクター、岡田さんからメールを頂いて、実際に足を運んできました。その洋服にかける情熱は本物でした。
おそらく殆どの商品がユーザーのニーズに合わせた一点ものなんだと思います。ディスプレイしてあった、ツイードのコート。欲しい。
http://www.a-workroom.com/

お願い

この代官山の2店舗にしか、今のところ東京には置いてありません。相当数、納品されているので、即座に売り切れることはないと思います。安心してどうぞ。
けれど、これらのお店の本業は云うまでもなく、レコード屋さんではありません。ですので、それぞれのサイトをチェックして頂いて、そのお店に置いてあるものに、興味を持った方が訪れて頂ければ、と勝手ながらに思います。

横川シネマ

(広島県広島市)

業種 - 広島一ダメな男が切り盛りする素晴らしい映画館

あるべき映画館の姿がここにはあるとです。売店には由緒正しいおばちゃんも居ます。最近は良くライヴも行っています。映画のラインアップも当然こだわり抜かれてます。是非。

ポレポレ

(広島県福山市)

業種 - ポレポレとしかいいようのない場所

福山駅にほど近い場所にあります。記憶が正しければ天満屋のすぐ近くです。オーナーのユウさんはずっとずっとずっと、この街の趨勢と音楽を見守ってきた人です。だから、嘘はつけません。ついたら、すぐ見破られます。ここにはスワヒリ語を話す音楽の神様が棲んでいます。福山に来たら、コーヒーだけも飲みに寄ってみんですか?もしその夜ライヴをやっていたら、行ってみんですか?ポレポレには「ポレポレが呼んだんだから、今日ライヴに行ってみようか」っちゅー類いのお客さんが多数存在します。それって素晴らしくないすか?

月光荘

(山口県山口市)

業種 - 厳選素材と雑穀レストラン&カフェ

ここのオーナーには田中さんには、先日の「月の庭」のライヴでお会いしました。月光荘はオーガニック・レストラン「月の庭」の流れを汲む、生まれて間もないお店です。去年、ライヴで訪れましたが、まぎれもなく山口の「Land of music」でした。

シマネヤ

(島根県出雲市大社町)

業種 - 眼鏡屋さん

地域密着型の眼鏡屋さん。眼鏡は顔の真ん中にのっかってる「必需品」なので、僕もこの気骨のある店で、いつか作ってもらおもうと思ってます。コーヒーを飲むだけでもいいんで、ふらっと立ち寄ってくださいと、店主より。
http://www.shimaneyamegane.com/

ジューク・レコード

(福岡市天神)

業種 - 炎のレコード屋さん

オーナーの松本さんの心意気。30年に渡って、この街のLand of musicであり続けています。この店がなかったら、俺はミュージシャンをやっていなかったか、やっていたとしても随分違うタイプの音楽をやっていたことでしょう。不明な事があったら、勇気を出して松本さんに質問しましょう。その膨大な知識の中から、求めている音楽を伝えてくれると思います。ね、師匠?
http://juke-records.net/

ボーダーライン・レコード

(福岡店·小倉店)

業種 - 炎のレコード屋さん

ヒートウェイヴが故郷福岡でくすぶっていた1987年。
社長、甫足(ほあし)さんが僕の目の前に現れ、ポンと現金を差し出して、「これでアルバムを作りんしゃい」と。そうして出来上がったのがアルバム「my life」です。その恩を忘れたことはありません。このレコード店が地元のミュージシャンに果たした役割はこれまでも、これからも変わることはないでしょう。
感謝。

サウンド・コスモ

(福岡県久留米市)

業種 - ロックとアニメに強い、商店街のレコード屋さん

昨年火事で全焼しました。けれど、彼等はその翌日からワゴンを借りて、商店街の路上で、お店を再開しました。その魂のワゴンには、「made in Aso」も乗っていました。近くに住んでいる方は是非、この魂の入ったお店をサポートしてあげて下さい。現在、新店舗で営業中です。

レコード屋 iN a DAY

(熊本県熊本市南坪井町)

業種 - 中古レコード屋さん

来年でオープン14年目になる中古メインの、しかもアナログ8割のレコード屋さん。先日の熊本のライヴで「うちにも置かせろ!」と直談判。その際、たまたま彼が持っていた自分の店の商品を見せてもらったのですが、すべて、俺持ってました。がはは。

R-10

(長崎市)

業種 - レストラン・バー

長崎の出島ワープにあります。目の前が海です。本当です。店主、工藤ちゃんは見かけはコワモテだけれど、心の優しい本物の男です。俺も何度もこの場所で歌わせてもらいました。海を眺めながら、一杯飲むのもよし、工藤ちゃんが作る魚介メインの食事をするのもよし。気取らず、楽しめるよか店ですたい。長崎を訪れて、行く場所がなかったら、迷わずR-10を訪ねてみんですか?
http://www.bar-r-10.com/

桜坂劇場

(沖縄県那覇市)

業種 - 映画館

先日、ツアーで訪れた桜坂劇場です。カフェ、本屋、レコード店、3つの劇場が併設されていて、ライヴも行われます。シネコンにはない「文化を愛する香り」とスタッフの情熱が感じられる素晴らしい場所です。
ふらっと立ち寄っても充分に楽しめます。