may her rest in peace

2006/05/31, 16:59 | 固定リンク

5月31日 水曜日 晴れ 

 昨日の明け方近く、空が白み始める頃。ハナが死んだ。と云うより、親バカを承知で書けば、召された。目の前で魂が抜けていく様をずっと見ていた。俺にも奴にも、飼い主と人間と云う意識はあまりなく、毛がもじゃもじゃの、そこに居ることが当たり前の、ハナと云う生き物だと思っていたから、急に居なくなられても、正直なところ、その意味が理解できずに居る。奴は俺に似たのか、とてもヘタレだったので、「Z」に激しく特徴のある、E.YAZAWAのタオルに包まれて、友人も見守る中、荼毘に付された。この季節なのに、良く晴れた日。鶴見川沿いの火葬場から立ち上る色のない煙を見ながら、「あぁ、奴は昇っていったんだ」と思った。そして、心にぽっかり空いた穴に新緑の風が吹きぬける。多分、それを埋めてくれるのは、時の流れでしかない。

 当たり前と云ってしまえば、それまでだけれど、奴は一度も俺を裏切らなかった。俺がどんな気分の時も、荒れていても、ふさぎ込んでいても、騒いでいても、いつも同じ体温で、穏やかに尻尾を振るのだった。たかが犬、かもしれん。でも、俺はこの一点に於いて、奴を心から尊敬しているし、それを俺が煙になる日まで変わることなく、心にとどめておきたい。願わくば、俺もそのような人物でありたい。ハナ、ありがとう。R.I.P。

追伸
 沢山のメールや励まし、ありがとう。それらはすべて、奴に伝えました。

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by 山口 洋  

レコーディング2日目

2006/05/29, 23:55 | 固定リンク

5月29日 月曜日 晴れ 

 ダヴィング2日目。録音を担当してくれたエンジニア、コナ君が遊びに来てくれたのをいいことに、「立ってる者は親でも使う」ヒドいバンド。昨日は順調に進んだけれど、今日はさんざん試行錯誤を繰り返して、記録されたのはアコースティックギタ−2本のみ。うち一本は魚先生が弾いたとさ。ま、こんな日もある。

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by 山口 洋  

レコーディング再開

2006/05/28, 23:21 | 固定リンク

5月28日 日曜日 晴れ 

 都内某スタジオにて、レコーディング第二クールのダヴィング作業を再開。自然の中で録音したものは、都会の半地下にある空間にも良く響いた。付け加える楽器が微量で良くなったと云うことは、バンドとして成長してる証なんだと思う。前のアルバムに比べて、圧倒的に音数が少ないのだが、絶妙なバランスで成り立っている。
 伝家の宝刀と云えば、グレッチを弾くことなのだけれど、敢えてその道を行かずに、魚さんの指導のもと、俺には意味不明な機械(写真参照)をいろいろ繋いでもらって、実験を繰り返している。突き詰めた挙げ句、本末転倒して目的を逸脱することもあるんだけれど、必然偶発的にヘン、かつ普遍的な謎の音に行き当たることもある。そんな時、バンドってすげぇな、感嘆符をつけたくなる。

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by 山口 洋  

冒険家の言葉

2006/05/26, 22:19 | 固定リンク

5月26日 金曜日 晴れ 

 出典が明らかではないから、氏名を書くことはできないが、ある冒険家の言葉を友人が教えてくれた。
 「銀行は国債を買う。日本は日本の国債でアメリカの国債を買う。アメリカの国債はミサイルを作る。だからミサイルを買うための融資をしない銀行を求めないと、世界は変わっていかない」。
 低金利のこの時代に、人々は何とか自分の今後のために、資金を増やそうとする。例えば、国債を買う。その国債がこんな「循環」を生み出してるなんてことは、俺も含めて、殆どの人は知らない。昨日も書いたけれど、「モノを売る」ことには責任があると、俺は思う。このことが、きちんとアナウンスされていたとするなら、あるいは我々が知ろうとしていたなら、国債を買う人は減っていたかもしれない。先日、パタゴニア社の長の言葉を聞いた。記憶が正しければ、「経営者として、責任を取らなければいけない相手は、株主でも社員でもなく、地球の今後である」と。深い感銘を受けた。どこかに落とされる爆弾に、巧妙な形で、自分が関わっているなんてまっぴらだ。だから、自分なりに目を開いて、いろんなものを見ておきたい。

by 山口 洋  

夏の匂い

2006/05/25, 23:23 | 固定リンク

5月25日 木曜日 晴れ 

 誰かの言葉だけど、「もう夏の匂い」がするね。
 
 実は昨日、俺の車からガソリンが漏れてた。スタンドの人がびっくりするくらい。本当はメンバーを乗せて、東京に戻るはずだったんだけど、あまりに危険だったから、一人で帰った。車の中で、録音したものを聴いた。まだまだ手を加えなきゃいけないものもあるけど、引火の危険と相まって、宇宙に飛んでいきそうな音だった。早計かもしれんけど、いいアルバムが出来てる。それが嬉しい。コンピュータに音楽を記録するようになって、音程やリズムまで、いろんな修正ができるようになった。けれど、ヒートウェイヴの場合、それをやると何かが確実に死ぬ。ダビングでさえ、気をつけないと空気が死ぬ。だから、最低限の楽器を加えるにとどめる。歌い直しなんてこともほぼ確実に音楽を殺す。へくったところも含めて、バンドてのは全ての微妙なバランスで成り立っているもので、それを修正すると、ただのつまらない良くできた音楽にしかならない。とはいえ、俺の歌の音程は未だヒドいもんだけど。しゃーない、それが俺の今の力量でもある訳で。つまり最先端の機材でもっとも古いやり方のレコーディングをしてる。そこにあるのは虚勢のない、ただのおっさんのボヤキに近いものがあるけど、それを、その宇宙を描きたかったから、アルバムプロジェクトは音と云う意味でも成功しつつある。それが嬉しい。

 朝起きて、車を修理に出した。ガソリン漏れはこの車種のリコール対象だそうな。ドイツ製のこの車は最近、日本市場からの撤退を決めた。俺は6年前に新車で手に入れた訳だし、修理もディーラーでやっている訳だから、リコールを伝えられなかったってのは言い訳にしかならん。そんな事も知らされずに、漏れたガソリンに引火したら、「still burning」じゃ済まされんだろ、売りっ放しかよ、と怒りがこみ上げてきたが、相手の目には「云っても無駄だ」と書いてあった。こんな時、総合的な会社のポリシーってもんに疑問を持つ。例えば、松下電気のファンヒーターがリコールになった。でも、あの対応は結果的に会社の好感度をアップさせたと思う。モノを作るってことには責任がある。自分が音楽に向かうべき姿勢を逆説的に教えられた気分になる。

 今日は音楽から離れていたかったし、ずっと犬のそばにいた。粗相の始末は慣れないし、身体がでかいから大変だけど、訳もなく愛おしい。耳が聞こえなくても、目が殆ど見えていなくても、それでもコミョニケートできるってことが嬉しい。奴には本当に大事にしなきゃいけないものを日々教えられてる。ほら、もう夏の匂いがするぜ。

by 山口 洋  

第二クール終了

2006/05/24, 19:21 | 固定リンク

5月24日 水曜日 曇り 

 某県山中での「HWニューアルバムプロジェクト」レコーディング第二クール、無事終了。差し入れ、メッセージ、ありがとう。プライベートな事なので、詳しくは書けないけれど、このスタジオのオーナーの心意気、関わってくれた全ての人々に深く感謝してます。ありがとう、アゲイン。今までのアルバムのどれとも違う空気感が記録されています。楽しみにしてて下さい。

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by 山口 洋  

驟雨と焼き魚

2006/05/23, 20:50 | 固定リンク

5月23日 火曜日 驟雨 

 驟雨の中、レコーディングは続きゆく。いろんな意味で濃密な時間なので、最初に録音したものがどうなのか、もう忘れてしまった。スタジオの階下は歯医者さん。音楽に過激に理解のある歯医者さん。とは云え、営業中に「どったんばったん」演奏することはさすがに出来ず。それゆえ、昼間は静かな音を奏でていることが多い。リズムセクションの皆さん、その間見かけないな、と思っていたら、何故かニジマスとイワナを手に帰還。しかも、焼き魚専用炭火コンロ付き。「何しとったん?あなた達」。その後は、火のマエストロ池畑兄の先導の元、見事な焼き魚を頂いたのであった。あ、あの。食い物も素晴らしいけど、音楽もちゃんとやってますから。念のため。

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by 山口 洋  

新しいルール

2006/05/22, 12:53 | 固定リンク

5月22日 月曜日 曇り 

 レコーディング3日目。はじめは外で食事をしていたが、手の空いている人がいつの間にか食事を作ってくれるようになった。音楽を作る上での「食事」ってのは、とても大切なものだ。都内のスタジオで店屋物ばかり喰っていると、音楽もそっち(どっち?)の方に引っ張られる。今回は池畑さんと渡辺某、マネージャー堀田の作ったものをごちそうになってる。それぞれにそれぞれの良さがあって、とても興味深い。料理って、音楽作るのに似てるもんね。

by 山口 洋  

振幅

2006/05/21, 23:54 | 固定リンク

5月21日 日曜日 晴れ 

 朝から晩まで、音楽に浸る。 まぁ、良くもこれだけの振れ幅があるもんだと、我ながら感心する。音楽はかつてなかった宇宙に達しつつあります。期待しといて下さい。

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by 山口 洋  

一瞬の晴れ間

2006/05/20, 23:52 | 固定リンク

5月20日 土曜日 曇り 

 午前中に射した、一瞬の光。奏でている音楽も、そのように。

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by 山口 洋  

レコーディング初日

2006/05/19, 22:57 | 固定リンク

5月19日 金曜日 雨 

 山梨県某山中にてHWニューアルバムプロジェクト、第二クールに突入。今日は前のセッションが長引いていたので、機材搬入も出来ず、仕方ないので、写真撮影なんぞしたりする。外は雨だし、ま、ゆっくりやりますかい。

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by 山口 洋  

ドリアン・グレイの肖像

2006/05/17, 18:23 | 固定リンク

5月17日 水曜日 雨 

 雨が降っている。しとしとと、日々を洗うように降っている。曇天。でもそんなに重い色じゃない。今日の雨はそんなに嫌いじゃない。
 
 歌を書いている。いつもは地下の仕事場に居るのだけれど、犬が居る2階の部屋で書いている。スースーと寝息を立てて眠っている。ピースフル。机の上にはラフ・スケッチが入ったipodと紙と鉛筆とギターとカポタストだけ。考えてみれば、本当のところ、必要な道具なんて、これだけじゃないか、と思う。だったらいいな。身軽でいいな。ふとギターを見やる。いつ、何処で買ったんだっけ?マーチンのD-28。このところ、ずっとこれで曲を仕上げてる。阿蘇に逃避する時には何故かヤイリを持っていきたくなる。どうしてなんだろ?自分でも分からない。永い間に刻まれた沢山の疵。でも、これは妙に愛おしい。多分、怒りや憎しみで出来たものじゃなくて、表現はどうか、と思うけど、多分それが「愛の証」みたいなもんだからかな?随分前、「増えていくのはギターの疵だけで充分だ」って云った人が居るけど、俺もそう思うんだ。

 簡単に、シンプルになっていく。包んでいるのは「空しさの雲」。あるいは雲海のようなもの。それは霧じゃないんだよ。雲なんだってば。無理にヘッドライトをつけたって、余計それは見えなくなるんだ。だから、自分の心の声を聞く。あるいは耳を澄ます。新聞を読んで、街を歩いて、人々の顔を観察する。殺伐、そして殺伐。もう誰も他人の顔を見ようとはしない。人は一人で生きていないことを知ってるくせに。でも一人だけれど、独りではない。いつも、いつもそう思う。望んでいるのは「空しさの勝手な連帯」みたいなものだ。手を握り合うことじゃない。愚痴ることでもない。あるニュース番組の背景に「変」という言葉。俺ならそこに「空」と書き込みたい。「空虚」で「空しい」けれど、それは「空」とも読めるからね。

 百貨店の一階はどうして化粧品売り場なんだろうね。失礼を承知で書くなら、そこに足を踏み入れた瞬間、お腹が痛くなる。頭がガンガンしてくる。ものすごい臭い(ごめん)が混じり合ってる。それもまた雲海かもしれん。意味もなく、女性ってすげぇ、と思う。ドリアン・グレイ。

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by 山口 洋  

頭の中の風景

2006/05/16, 21:45 | 固定リンク

5月16日 火曜日 曇り 

 いつも頭の中に風景が見えるんだ、と書いた。あるようで、ないようで、でも確実に見えているぼんやりとしたその風景。文章を書く時も、音楽を作る時も、写真やフイルムで動画を撮る時も、ずっとそれを観ている。伝えていこう、と思う。
 デザイナーの友人に話をして、今度のツアーの風景を描いてみた。近いうちにアップできると思います。音楽は画一的なものではありません。少なくとも僕にとっては。応えはあっても、答はないものだし。足を運んでくれた皆さんが「enjoy yourself」であることができる空間。それを作っていきたいと考えています。

追伸
ウチの犬、今のところ、小康状態を保っています。心配かけてごめんね。ありがとう。

by 山口 洋  

let it be

2006/05/15, 23:37 | 固定リンク

5月15日 月曜日 晴れ 

 夕方から、打ち合わせ、取材を数本。無理なく無駄なく、「すべてあるがままに」。それが俺のテーマである。

by 山口 洋  

ハナが立った

2006/05/14, 21:38 | 固定リンク

5月14日 日曜日 曇り 

 可愛い娘、ハナ(13歳、犬ですから)を犬猫病院に預けていた。最近、奴は癲癇を起こしていたので、獣医によーく診て欲しかったのだ。獣医氏はべらぼうな金額を取って、さんざん分かるような分からないような講釈をぶった。もうこ奴のところに連れてくるのは止めよう、と思った。俺が細かく観察日記をつけて、信用できる医者を探したるわい。家に帰ってきたハナはまず「腰が抜けた」。目が中空を彷徨っている。そんでもって、次第にここには書けないような、筆舌に尽くし難い状況に変化した。俺は覚悟した。「今夜が奴との最後の晩になるかもしれん」。だから、奴の横で夜を明かした。朝になる頃、ヒドい状況が少し落ち着き、気がつくと、俺は連日の睡眠不足でうたた寝をしていた。午前10時、ハナが立っていた。ウソだろ?でもそれは夢ではなかった。「クララじゃなかった、ハナが立ったーっ」。確かに奴は俺の手をペロペロ舐めていた。もう散歩をすることも、ボクシングをして遊ぶことも出来ないと思っていたから、嬉しかった。それから奴はフラフラしながらも、自力で外に出て、豪快な下痢をした。ひどく通りを汚したけれど、そんなことはどうでも良かった。まだ予断は許さないけれど、何にせよ、奴と暮らしてるってのは俺にとってかけがえのないことなのである。

by 山口 洋  

R.I.P

2006/05/13, 21:14 | 固定リンク

5月13日 土曜日 雨 

 時期が重なったので、両親合わせての法事を故郷にて。喪主は俺。一番似つかわしくない役どころと思っていながらも、こればかりはどうしようもなく。段取りがまずかったり、いろいろあったけれど、これで彼等が本当の意味での「R.I.P」で居られるなら、それでいい。結局のところ、来てくれた人々の故人を偲ぶ想いと、友人達の尽力に助けられて、無事終了。こういう時間も悪くない、と近頃は思うのだった。「堅苦しいことが嫌いな両親でしたので、どうぞ平服でお越し下さい」と案内を出した結果、一番ドレスダウンしてるのが、俺っちゅ−情けない事実。し、しまった。親も苦笑してたに違いない。すまん。母と祖母は生前ソリが合わなかったので、納骨の際に、「あんたもいい加減にしなさい」っちゅー意味で、「遺骨、隣り合わせの刑」に処していたのだが、今日を機に、住職に頼んで、祖父、祖母、父、母という並びにしてもらった。親父は49歳で死んだので、鬼籍に入った母親が67歳じゃ、釣り合わんなぁとか、考える。まぁ、いい。仲良くしてくれれば、それでいい。 

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by 山口 洋  

ソングライター

2006/05/11, 20:25 | 固定リンク

5月11日 木曜日 雨 

 雨が降っている。曲を書いている。下旬に予定されているレコーディングに向けて。書き上げたと思った曲の殆どを削って骨だけにしている。余計な修飾が不快に感じるようになった。自分がそういう生き方をしていれ「さえ」すれば、誰でもが知っている言葉で、その奥にある真意を伝えられるようになる。少なくとも、俺はそう思っているし。その事に今は興味がある。音楽も削ってゆく。A-B-C-D-Eみたいな構成の曲は本当に興味がなくなった。何も起きない、何も変わらない。他愛のない、しがない日々の中にも「旅」や「永遠」や「ハプニング」はあると思う。空しさの雲海、明日の光。言葉と言葉の狭間。音と音の隙間。こんな逡巡が可能になったのも、アルバムプロジェクトのおかげだと思う。一体、誰に向けて創っているのか、とか。ピンと来ないものはしばらく「放置プレイの刑」に処する、とか。制約のない創作の環境を賛同者の支持のもとに得られていることに感謝している。ありがとう。

by 山口 洋  

痛み

2006/05/10, 19:10 | 固定リンク

5月10日 水曜日 曇り 

 永かった冬が去って、ほんの少しだけ春の香りを楽しんでいたら、もう古傷の右手がじくじく痛みだした。俺の右手は「翌日の雨」を予報してくれるっちゅー、嬉しくもない特技を持っている。湿度が上がってくると、どういう訳かその昔、骨折したところが痛みだす。だから、梅雨の時期は気候と相まって鬱陶しいったらありゃしない。
 小谷美沙子ちゃん(ちゃんでいいのだろうか?)の新譜を聞いた。近年稀にみる「痛い」アルバムだった。このような「痛さ」を投げかけるシンガーが同じ時代に存在していることが、とても嬉しい。そのCDに添えられた宣伝文は、俺が勝手に受け取った彼女の世界を表してはいなかった。(あの、批判してる訳ではないからね)何人たりとも、彼女の世界を言葉に変換することは出来ないと思う。だからこそ、歌と音楽がある。それが素晴らしい。
 ふたつの「痛み」は似ているようで、かなり違うものだ。俺の頭の中には云いようのない「空しさ」が渦巻いているんだけれど、それは単にネガティヴな感情でもない。ふわふわ浮いているような「空しさ」の雲の中に、さっと一筋の光が刺すこともある。その光景を美しいと思うことがある。爆音の激しい演奏に、ちっとも強さを感じないことがあるように、相反するアイロニックな状況の中に、求めているものが凛々しくそっと佇んでいたりする。願わくば、そのようなものを描きたいと思っている。「虚勢」よりも「とんでもない情けなさの吐露」の方にタフネスを感じることもある。

by 山口 洋  

お知らせ

2006/05/09, 17:03 | 固定リンク

5月9日 火曜日 曇り 

アルバムプロジェクトに賛同してくれた方のクレジットについて

 アルバムプロジェクト。おかげさまで順調に進んでいます。今月の中旬から第二クールのレコーディングに突入します。みなさんの新しいアルバムに対する想いをしかと、受け止めています。今やりたいことを何の制約もなく、存分にやりきることだと理解しています。本当にありがとう。三月末までに賛同してくれた方のうち、希望する方の名前をアルバムにクレジットするっちゅーだけで、「本当に全員載せられるのか?」という数には達していますが、どうせなら、分け隔てなく可能な限り記載した方がプロジェクトとして美しいのでは、と云う意見が多く、クレジットに記載可能な期限を7月末まで延長します。歌詞よりも、異様に人の名前が記載されているブックレットになるかもしれませんが、それもまた良しかな、と。4月以降に申し込まれた方に関しては、希望の有無をこちらからご連絡します。今後ともアルバムプロジェクトをどうぞ、よろしく。

by 山口 洋  

風の匂いと「soup of the day」

2006/05/08, 23:44 | 固定リンク

5月8日 月曜日 曇り 

 母親の命日。強がってはいたけれど、男にとって母親の不在と云うものは、「無償の愛」がもう存在しないってことを意味するものでもあって、それを受け入れるのは、結構難儀なことだったりもする。リリー・フランキーさんの「東京タワー」に「男は母親を失って初めて一人前になる」って書いてあったけど、本当にその通りだと思うよ。この季節の風の匂いとか、緑の芽生えとか、いろんなものが無意識のうちに、あの出来事を想起させる。それは女々しいことだと、頭から追い払おうとしてたけど、仕方ねーだろう、どうせマザコンなんだし、と苦笑しながら受け入れる。結局のところ、前に進む力ってもんは、時の流れでしかないのかも。いろんな想いがいろんな人たちから送られてきて、嬉しかった。
 ロフト30周年でin the soupに呼ばれて、ライヴ。ロフトに初めて出たのは多分85年だったかな?世話好きの兄貴、スマイリー原島氏が福岡に住んでる俺たちを呼んでくれたんだと思う。随分緊張したのを覚えてるよ。何にせよ、30年ってのは凄いことだよ。in the soupを観てると、いろいろ逡巡してた頃を思い出す。でも相変わらず自分たちも逡巡してるからして、何も気の効いたことは云えないんだけどね。いくつになっても、音楽の深遠さにはまっていくばかり。それは悪いことだとは思わない。出来はともかく、俺は音楽をやってることが愉しい。何故か、飲んでる席には世話好きスマイリー兄も同席してて、いろんな世代のミュージシャンと音楽とバカ話に終始してた。さて、帰るかと思ったら、ポケットの中には800円しかなかった。銀行くらい行けよ。2つのバンドの「soup of the day」。楽しんでくれたかい?

by 山口 洋  

ブルーの理由

2006/05/07, 22:21 | 固定リンク

5月7日 日曜日 雨 

 ボクシングの話の続き。いろんな人の意見を見たよ。ありがとう。確かに現状じゃ、誰もボクシングを観ない。それは理解してる。深夜放送された「世界戦」。素晴らしい試合だったが、場所は後楽園ホールで、あり得ないくらい深夜の放送だった。詳しくは知らないけど、チャンピオンが純日本人じゃないからなのか?でも繰り返すけど、素晴らしい試合だった。
 どの世界でもそうだと思う。音楽の世界も同じだよ。永い間にいろんな人を観てきたんだ。昔、とある芸能畑の事務所の社長って人物に云われた事がある。「君の夢はなんだね?」、「一生、音楽を創り続けることです」。「ふーん、それじゃ成功しないね、君には具体的な夢がなさすぎる。具体的な夢ってのは、六本木の交差点を曲がったところにある、あの車屋に置いてある、あの黄色のポルシェを次のアルバムの印税で手に入れたい、とかそう云うことだよ」って。幸か不幸か、今も昔も、俺にはそんな「夢」も「野望」も何もない。何をもって「成功」と呼ぶのか、価値感なんて、人それぞれでいいと思うけれど、俺のこの「野望」のなさが、人生をややこしくしてるのもまた事実なんだけどね。
 
 このところの「ブルーの理由」を自分で発見して、笑ってしまった。そりゃブルーにもなるわな。ははは。スタジオに行って、久しぶりにバンドのリハーサルをした。山で書いた曲は悪くなかったけど、歌詞も含めて、全面的に見直す必要があった。山じゃ、ずっとギターを指で弾いてて、その宇宙の中に住んでいた。でも、単純に俺のスケールが小さかった。バンドの人たちはデカかった。そのスケールが。久しぶりにバンドに負けじとピックで弾いたら、腕がつりそうだったよ。何でか、知らんが、今はエレクトリック・ギターを弾きたいとは思わない。きっとそんな時期なんだね。

by 山口 洋  

無気力は続きゆく

2006/05/06, 19:36 | 固定リンク

5月6日 土曜日 晴れ 

 先日ボクシングの中継を観た。俺が観たかったのは「試合」であって、決してタレントの喋りや「秘蔵映像」ではない。一向に試合は始まらない。視聴者の気持ちを引っぱるだけ引っぱって、CMになだれ込む。民放だから、こっちが文句を云える立場にはないんだけどね。挙げ句の果てに、勝者がマッチョな歌をリングで歌うっつー場面に遭遇して、哀しくなった。ボクシングよ、お前もか。
 垂れ流されるものと自分がひどくズレてゆく。街と自分がズレてゆく。俺はこの世の中に生きていて、狂わない方が狂ってると思うことがある。自分が社会人の端くれとして、何とか激しく狂わずに生きてられるのは音楽があるからだ。それが社会と俺をかろうじてつないでる。頑張らないことを頑張ることだって、たまには必要だよ。さ、脈略もなく、俺は鮨を喰いにいくぞ。

by 山口 洋  

無気力

2006/05/05, 19:35 | 固定リンク

5月5日 金曜日 晴れ 

 5月病かな?40's blueってやつなのかな?まさか男の更年期か?ひえーっ。身体は何処も悪くないのに、超無気力。脱力。公園に行ってもダメ、街に出ると余計ダメ、仕事場に閉じこもると息が詰まる。テレビを観ると、頭が割れそうになる。要するに八方塞がり。でもこんな時は、憧れてたヘナヘナな音楽を創るチャンスかも、と思う自分が卑しい。
 「こどもの日」があって、「敬老の日」があるなら、「おじさんの日」だってあるべきだーっ。激にゃー。

by 山口 洋  

yellow moon

2006/05/04, 23:49 | 固定リンク

5月4日 木曜日 晴れ 

 GWまっただ中。どうもやる気がしないから、車をすっ飛ばした。山の中で、友人の古いカルマンギアを運転してからと云うもの、この6年間、ただの一度も壊れたことがない自分の車に不満を抱えている。人間はかように勝手な生き物である。でも、俺の車にはipodが付いてる。このところ、明星の「yellow moon」がずっと流れている。「昨日はコールサイン 全部携帯で/歪んだジャズギター ヘンな公園で」(だったっけ?)。字にすると、あり得ない歌詞なのだが(これは井上陽水さんと明星の共作である)、これが音楽と相まると、異様な説得力を放ってくる。流れていく車窓、確かに俺は黄色い月を見た気がする。素晴らしい。
 その昔、歌詞は「タテ書き」じゃないと気が済まない時期があった。レコード会社のブックレットの標準仕様は「ヨコ書き」になっていて、「タテ書き」にすると、工場で手作業の封入をしなきゃならんので、コストが上がると文句を云われたことがある。今や、俺は「タテ書き」の歌詞どころか、年配の方に手紙を書こうにも、もはや「タテ書き」そのものが出来なくなった。読めるけど、書けなくなった漢字も無数にある。某所で居合わせた人々と「豆板醤選手権」をやった。「とうばんじゃん」とただ漢字で書くだけなのだが、これが、誰一人書けやしない。抱腹絶倒。でも、ちょっと笑えなかったりする。   「yellow moon」。確かに奇妙な時代に生きてるなぁ、と思う。突然、携帯電話を投げ捨てたくなる衝動に駆られる。タクシーに乗っていて、この先の渋滞状況が分かって怖くなることがある。街で流れている音楽が全部同じに聞こえることがある。安価が売り物のレストランのオムレツが冷凍で、しかも目の前に運ばれてくると「とろーり」といい案配になっていて、戦慄を覚えることがある。観たい写真展があるけど、会場が「表参道ヒルズ」っちゅーだけで引いてしまう自分がいる。エトセトラ。そんな時代に生きてる俺には「yellow moon」の有機と無機のバランスが必要だ。

by 山口 洋  

ass hole

2006/05/03, 23:14 | 固定リンク

5月3日 水曜日 天候失念 

 このwebを運営してるスタッフの朝一番の仕事。世界各地からのエロティックな書き込みをまずはドカドカと消すことだそうで。なぜそんなに書き込まれるのか?しかも、外国から。どうやらサイトの名前に問題があるらしい。このサイトをスタートさせた頃、俺の思考はすべて「ケツの穴」に由来していて、記憶が正しければ、カート・ヴォネガットの著作の中に、「それでは諸君、次のページでそのブラックホールをお見せしよう」みたいな文章があって、高鳴る胸を押さえて、ページをめくると、御大直筆の稚拙でいて、完璧なしわしわの「ass hole」が描かれていたのだった。俺は多分10分くらい笑い転げて、そこに自分の思考の源を定めたのだった。あ、もうひとつ。ショーン・ペンがデニス・ホッパーと初めて共演した時、かのホッパーが「じゃ、お前はアヒルのケツの穴から昇る虹を見たのかい?」ちゅーアドリブをかました話があって、とある歌の中に、敬意を込めて引用させて頂いた。かように、俺は「ケツの穴」に惹かれていったのだった。
 しかし、時は流れた。俺も変わった。頼まれて書くサインに、ヴォネガッド様譲りのケツの穴を描かなくなった。うん、そろそろ潮時かもしれんね、ケツの穴は。では、最後に大学で油絵を専攻していた俺様の見事なケツの穴をお届けして、この話は終わりにしよう。ワン。

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by 山口 洋  

now and then - 重要なお知らせ

2006/05/03, 00:00 | 固定リンク

5月2日 火曜日 雨 

 1. HWアルバムプロジェクト
 既に賛同してくれている、多くの人々に感謝します。ありがとう。今月中旬に2クール目のレコーディングに突入します。引き続き、よろしくです。

 2. 久しぶりに「Life work」をやります
 新しい曲、随分出来たので、歌います。仕事帰りに遊びにきて下さい。ゆっくり、ゆったり楽しめるライヴにしたいと思ってます。このシリーズ、ずっと続けていこうと思ってます。ゆくゆくは東京以外の場所でも出来たら、と。詳細はnewsを参照して下さい。

 3. 7月に「now and then」と題して、ヒートウェイヴのツアーをやります。
 それってカーペンターズやん、ちゅー突っ込みはなしで。まだメンバーと話してないけど、新曲中心の1部、以前の曲中心の2部の2部構成で。時期は7月の中旬頃。平日のライヴに関しては、働いている人が来れるよう、遅めの時間に始めたい、とか、座って聞きたい人と汗かきたい人が共存できるようにしたい、とか。「strikes back」シリーズ第二段のマキシシングルをその際、リリースできたら、と思っています。二部構成にしようと思ってるのは、今のバンドの表現の幅を観て欲しいってことと、ニール・ヤングの前回のツアーがえらく素晴らしかったことに由来します。いつもアナウンスが遅くてごめんね。詳細は決まり次第、このwebでお伝えします。誰かにDJやって欲しいとか、ご意見、ご要望、遠慮なくどうぞ。

by 山口 洋  

東京に戻る

2006/05/01, 16:16 | 固定リンク

5月1日 月曜日 曇り 

 今日もまた、心に触れる。蛇が居て、太陽が降り注ぎ、何故か俺は某所で草むしりに熱中していた。陽射しの中で、幸福な休日を満喫させてもらった。愛そして、愛。ただ、ひとこと。ありがとう。
 次の世代が何かのドアを開けるとしたら、それは明星の音楽だと俺は思う。それは俺にとって、単純にセールスを意味しない。某コメはギターを抱えて、一人で世界へ飛び出して欲しいと、勝手に願う。
 上野から浅草に行って、路上のテーブルで飲んだ。幸福だった。さ、俺のGWは終わりだ。

by 山口 洋  
- end -