彼方に降る雪

2006/11/30, 16:34 | 固定リンク

11月30日 木曜日 曇り 

 俺はこの3日間でいったい何時間眠っていたんだろう?どれだけ寝ても、またすぐに眠れる。多分40時間は寝てた。すべてのプレッシャ−から解放されて、鍋喰ったり、ビール飲んだりして、何もせずに殆どの時間を眠りに費やした。
 彼方の青森では雪が降ったと、北海道では55cmも積もったと、風の便りに聞いた。みんなどうしてるかな、と思ったら郵便屋さんがでっかい段ボールを運んできた。それは青森のT君がアルバム完成を祝して送ってくれたりんごだった。ツアーで訪ねた際、たわわに実るりんごを見て、多分俺が「喰ってみたいなー」とか云ったんだと思う。彼は「この街でりんごを買わなきゃいけない奴はダメな奴っすよ」とか云ってた気がする。早速、喰ってみる。美味い。俺は断片的にしか知らないんだけど、あの厳しい冬があるからこそ、この何とも云えない甘さが封じ込められてんだろうなぁ、とか。まったくシャイなくせに、優しい奴だよなぁ、とか。りんご、みんなに配っておくよ。俺が独り占めすんのはもったいない。もう雪が降ったそうですよっちゅー言葉を添えて。

by 山口 洋  

Dream harder

2006/11/27, 17:08 | 固定リンク

11月27日 月曜日 雨 

 午後8時を過ぎる頃。新子安のビクターのマスタリングルーム。尊敬する小鐵さんのマスタリングが施されて、アルバムは完成した。氏は63歳になられるのだが、若輩者が奏でるロックンロールに、これほどまでの音楽的理解を示されると、もはや感嘆するしかなかった。ちょうど一年くらい前、このプロジェクトを始める際に「dream harder」とマイク・スコットの言葉を借りて記したのだが、一年の歩みと云うものは、アイロニックなことにその言葉のままだった。はは。もう一回同じ事をやれと云われたら、「non!」と即答するだろうけど、歌の中で主人公が語っているように、後悔は微塵もない。分かれ道に立つたびに、迷わず自分たちの行きたい方向にシフトしてこれたのは、沢山の賛同、支援してくれた人々の想いが背中を押してくれたからだ。クレジットを希望した人の数1300人あまり。でも、実数はそれだけではない。それらの人々の想いが幾重にも積み重なって、このアルバムは作られた。スタジオで一通り聞き終えて、最初に湧いてきた感情は「音楽には力がある」と云うことで、それはかけがえのないもので、同じ分だけの「ありがとう」という気持ちだった。居合わせた人々と握手を交わして、久しぶりに夜の街に消えた。穏やかないい酒だった。
 ありがとう。さぁ、受け取って下さい。

by 山口 洋  

知恵熱

2006/11/26, 23:31 | 固定リンク

11月26日 日曜日 雨 

 多分、人生においてこれだけ悩んだことはないと思う。山でも、山からの帰りの高速道路の15時間の間も、都会に戻ってきてからも。ずっとエヴァー・グリーンな曲順を探してきた。最初は、ま、そのうち何とかなるっしょ、と大きく構えていたものの、だんだん締め切りは近くなる。いよいよ今日は最終日。追い込まれた。曲順を決めるのが面倒なのは、「最終的に」頭からケツまで全部聴かなければ「流れ」が分からないことにある。朝方からipodを持って、渋谷の街を歩き続けた。俺は一体何キロ歩いたのか?でもグっと来るものは見出せない。家で爆音で聞いてみる。見出せない。万策尽きた。要するにヘビーなのである。書いた曲には全て思い入れがある。ミックスした曲にも全て思い入れがある。サウンドトラックと云いつつも、確かにこの3年間、俺はヘビーな毎日を過ごしてきた。だから仕方ないのかもしれない。けれど、俺は聞いてくれる人を沈痛な気持ちにさせたいのではない。現実は厳しいけれど、その中にある光を受け取って欲しい。困った時の最後の頼みの綱、魚先生に電話するも不在。遂に限界に来たのか、知恵熱なのか、急に発熱。体調は悪くなる一方。知り合いにリサーチしてみる。ある人は「CDなんだから、嫌いな曲は飛ばせばいいんだよ、これはお前の3年間の集大成なんだから」と。ある人は「曲を飛ばすようなCDをあんたに創って欲しくない」と。苦楽を共にして来たレーベルの人間は「量よりも質を優先させてくれ」と。嗚呼、決めるのは俺だ。雨の中、俺は車に乗って、首都高をアテもなく走った。曇るガラスに叩き付ける雨。まさか、最後の最後にきて、こんなに苦労するとは思わなかった。環状線をグルグル廻りながら考えた。途中、魚さんから電話がかかってきた。彼の意見を聞いた。またグルグル走った。何だか羽根を付けたら飛びそうだった。湾岸線が9号線と合流するあたりで、俺は決断した。断腸の思いではあるけれど、2曲外そう。俺はクドいものだけは創りたくない。外した曲は、いつかどこかで発表できないとも限らない訳だし。フラフラになって家に帰り、もう一度聞いてみた。多分、これがベストだ。明日、早起きして、もう一回だけ聞いてみることにしよう。

by 山口 洋  

サウンドトラック

2006/11/25, 16:48 | 固定リンク

11月25日 土曜日 晴れ 

 同じ時代に生きる人たちのサウンドトラック。それを創りたくて、この一年やってきました。自分の感情がどうだ、とか、訴えたいことがある、とか、それがメインではなかったのです。日本中、いろんな季節に可能な限り廻り、沢山の人たちに出会い、変わらぬ想いと、変わっていくものを受け止めました。結果、僕が求めていたあるものは、人々の心の中に「確実」に存在していたことに気づきました。音楽の場所です。それはどんな事があっても、色褪せることのない、かけがえのないものです。僕にとっては。デザインを担当した渡辺某にも、「これはサントラなんだ」と話しました。12の短編が入ったサントラ。それを彼なりに受け止めてくれた事が嬉しかったのです。
 この国には四季があります。嬉しくなったり、切なくなったりするけど、それは素晴らしいものです。いつも外国の友達に「はかなさ」について、英語で説明することに苦労します。でも、それはとても大事な感情です。僕にとっては。同じように、人生にも四季があるのです。きっと。自分が何処に存在しているのか、僕には分からないけれど。
 村上春樹さんと夏目漱石が僕の中で、どう違うのか?お二人とも、いろんなインスピレーションを与えてくれる作家であることに変わりありません。ただ、村上さんの場合、「同じ時代に生きている」事が決定的に違うのです。夏目漱石の書いたものには普遍性があります。いつ読んでも違うインスピレーションを与えてくれます。ただ、同時代性だけがないのです。仕方のないことだけれど。
 僕は今日、ipodにミックスしたものを入れて、松濤の瀟洒な街を歩いていました。この街はあまり好きじゃないけど、渋谷のド真ん中より現実離れしていて、曲順を決めるのには、いいかなと思ったのです。ハイソな犬、警官、暮れていく都会の空、豪邸、一抹の空しさ、希望、虚勢、優しさ、切なさ、エトセトラ。いろんなものがいつもと違って見えてきました。これで良かったんだ、と。間違っていなかったんだ、と。山でミックスしたものは優しい音でした。ノリノリの音楽を期待している人はがっかりするかもしれないけど、どうしても耳が痛くなる音楽を創りたくなかったのです。そのうち反動がやってきて、また子供の頃のようにエレクトリック・ギターをかき鳴らす日が来るかもしれないけれど。曲順もほぼ、決めました。本当にあと少しです。みなさんの日々の中で、響くことを夢想しています。

by 山口 洋  

爆走の果て

2006/11/24, 22:44 | 固定リンク

11月24日 金曜日 曇り 

 まだ夜も明けぬうち。霧に包まれた山の家で仮眠から目覚め、家を片付けて、一路東京を目指した。道中、曲順を考えながら、都合10通りのものを聞いてはみたが、ベストと呼べるものは見つからない。山で考えたものは、高速道路にはまったくミスマッチだった。マスタリングまであと3日だけれど、今までの道のりを考えれば、こんなもの逡巡のうちに入らない。東京に戻ったら、ipodに入れて、渋谷のド真ん中を歩きながら聞いてみようと思う。果たして、そんな曲順はあるのだろうか?
 ところで、機材を満載した我が車、さすがに阿蘇=東京と云う行程は無茶だった。京都あたりで、「うーん、疲れたなー、中川敬に電話して、休ませてもらおうかな。いや、俺も男だ、大津までがんばろう」なんちゅー考えが頭をかすめた瞬間、後方にパトカーのライトが点滅していた。あっはっは、またやってしまったか、おのれ。39キロオーバー、3万5千円也。おまわりさんはとってもナイス・ガイだった。後1キロで一発免停。多分、負けてくれたんだと思う。何でも都合良く考える俺は、こりゃ急ぐなっちゅー事だと理解して、ゆっくり走ることにしたら、音楽の聞こえ方が変わった。にしても、だ。辿り着いたのは夜10時。車から降りたら、地面が揺れていた。朝は霧の中だったのに、渋谷にはどうしてこんなに人が居るんだ。未だギャップについていけず。

 道中、彼女と別れたばかりの広島のオマエとか、辛かっただろう岡山のオマエとか、加古川の君とか、三重のあんぽんたんとか、名古屋のモテそうでモテない君とか、いろいろ。音楽と共に、エネルギー送っておいたぜ。あとちょっとで終わる。もう少し待っといてくれ。とりあえず、今日は寝ます。おやすみ。

by 山口 洋  

山を下りる

2006/11/23, 23:41 | 固定リンク

11月23日 木曜日 雨 

 たっくさん連絡をくれた友人達。返信もできずにごめんね。俺は明日東京に向かいます。山での宴はいつか必ず。道中は曲順を考えながらのものになると思います。ツアーで訪れた街を通過しながら、それを考えてみます。今日は地元の人々にごちそうになったんだけど、すごくいい目をした若者に会いました。嬉しかったな。

by 山口 洋  

ありがとう

2006/11/22, 17:07 | 固定リンク

11月22日 水曜日 曇り 

 山は紅葉も終わりに近づき、本格的に冬の匂いがします。数日前に、魚先生は東京に戻っていきました。風邪ひいてないといいけど。馬刺が美味かったと、メールが。そりゃ良かった。僕は東京に戻る準備と、家の冬支度をしながら、曲順を考えています。前回の更新の際に、「おっしゃーーーーーーーーーっ」と書いたけど、山にこもって、音楽だけを見つめていたミックスはかなりの修正を必要としていて、そのままイケてたのはわずかに1曲のみ。とある2曲に関しては根本から創り直すあり様。けれど魚先生の意見はしごく説得力のあるもので、この時代にエヴァー・グリーンなものを求めて、我々は作業に没頭していました。そんな中、デザインを担当している渡辺某が山を訪ねてくれ、ジャケットを見せてくれました。それはウォームなものを求めていた僕のイメージより、はるかにクールで、当初戸惑いを感じていたのですが、「ヒロシの頭の中は今、こうやろ?」という奴の言葉と共に、必然的に音楽がそっちの方向に引っ張られていきつつあります。奴はリズムを録音した後の作業を殆ど把握していなかったにも関わらず、最終段階に及んでイメージを形にして、方向づけをする。いつも我々のアルバムにproduced by heatwaveと記されている「総合的」な意味はそこにあります。
 このアルバムは曲順によって、受ける印象がどのようにも変わってしまいます。難しいところです。残された時間はあとわずか。その中で出来ることをやり尽くしてみようと思っています。ジャケットも音楽も、この時代に生きる人々のサウンドトラックとして響くように。おそらくもう一度微調整のために、音楽に向かうことになると思います。
 残念なのは、大事にしていたカメラが壊れてしまったこと。この山での日々を記録していたものは、そのまま自分の心象風景でもありました。音楽に合わせて、それもいつかみんなに見て欲しかったんだけど。

by 山口 洋  

the land of music

2006/11/17, 21:05 | 固定リンク

11月17日 金曜日 晴れ 

 「おっしゃーーーーっ」。卓球の愛ちゃんの「さーーー」よりは確実におっさん臭い叫びを山の中に放った。長くて苦しい日々だったけれど、今日、俺は自分の仕事に一区切りつけた。つまりは、ミキシングがひとまず終了したと云うことで、発売日におそらく間に合うと云うことで、アルバムの音の行程は約一年をかけて、ほぼ9割方終わったと云うこともである。明日、魚先生が東京から来てくれる。3日かけて、最後の微調整を施したら、後は巨匠小鐵さんの手によるマスタリングを残すだけだ。
 朝、起きたら雲一つない快晴だった。今まで随分躊躇してきたけど、犬を阿蘇の地に還してやる時だと思った。既にいくつかの魂を葬った場所に、奴を撒いた。麓のお店で「みもざ」を買って植えることにした。その光景を遠くに眺めながら、最後の曲のトラックダウンをした。タイトルは「prayer on the hill」。狙った訳でも何でもなくて、あまりの偶然に自分でも笑ってしまった。
 いつもこれしか書けないのだけれど、本当にありがとう。あと、もう少しです。

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by 山口 洋  

友からの便り

2006/11/14, 16:10 | 固定リンク

11月14日 火曜日 曇り 

 ここに居ると、郵便や宅急便でいろんなものが送られてくる。何だか、とても嬉しい。今日だけで、合計5回くらい。本当のところ、俺は自分ちの住所を知らないのである。正式な住所があるにはあるけど、それは古い「アザズ」と呼ばれるもので、それだと誰も配達してくれない。だから、いちばん近所にある、お世話になってるお店の「隣」ちゅー住所(ぜんぜん隣じゃないつーの)を編み出したのだが、それだと迷わず届けてくれる。おもろい。
 午前中一番に届いたのは近藤智洋のDVD。いや、いいバンドだわ。ヒエラルキーがないのが音楽に滲み出てる。メンバー対等ってのはありそうで、なかなかないのだ。ヒロシは「音楽やりてぇ」っちゅーエネルギーがドラムから出てるし、ピロ君のパーカションはいわゆる「お仕事」の人とは全然違うエネルギーに溢れてるし、個人的にファンであるベースのよっちゃんはスーパークールなんだけど、音は暴力的。俺、ベースでブタれたい。ありがとう、近藤。元気出たよ。
 続いて届いたのは1曲だけ、魚さんにお願いしていたミックス。アンバランスの中のバランスっちゅー無茶なリクエストに見事に応えてくれました。素晴らしい。ありがとう。

by 山口 洋  

the dark side of the moon

2006/11/13, 16:09 | 固定リンク

11月13日 月曜日 晴れ 

 シブい闘いは続く。締め切り間近で、いよいよケツに火がついてきた。一切の雑音がないと云う意味では、山に来てよかったけれど、あまりのタイトさに時々気が触れそうになることがある。追い込まなければ見えてこないものもあるのだけれど、追い込みすぎると頭も身体もすべてが悲鳴を上げる。放っておくと、どこまでも追い込んでしまって、元に戻れず訳が分からなくなる。冷静に考えてみると、そりゃ当たり前の話で、起きてる時間の90%音楽に向かっているのだから。このままじゃ、ヤバいと思ったところに近所の皆さんから宴の誘い。今日はもう止めようと思う。24時間の間に「save as」されて上書きされたファイルをすべて聞き返してみたら、前進どころか、次々に後退してるのが分かったから。もう夜には道が凍る季節。深夜には凍った道に月が反射して輝きを放つ。

by 山口 洋  

the tower of silence

2006/11/12, 20:03 | 固定リンク

11月12日 日曜日 晴れ 

 雲ひとつない空。けれど風はもう冬の匂いがする。机の側にもうひとつ灯油のストーブを置かなければ、寒くて作業できなくなった。昨日からずっと「沈黙の塔」を探している。魚さんのデモを聴いた時から、ピサの斜塔のように、傾いたアンバランスなそれがずっと見えていたから。夕刻、ようやくそれが完成した。たぶん、今までにこんな曲はなかった。この曲も最初のテイクが気に入らなくて、スタジオを換えてリテイクしたから、その道のりの分だけ嬉しかった。
 とあるシンガーにバーチャルなコミュニケーションについての歌を書いているのだ、と云ったら、その人物は驚いた顔をして、「私もそれを書いているところなのだ」、と。多分、避けては通れない世界なのだ。沈黙のバベルの塔に関しては。俺は基本的にその世界を過度に信じてはいないし、今後もそれは変わらないだろう。久しぶりにトム・ヴァーラインのような、エキセントリックなギターを弾いた。音が痛くて、ミックスするのが辛かった。でも、それはひとつのメッセージで、バベルの塔からのメッセンジャーが語った言葉でもある。
 今音楽制作の中心にある、ProToolsと云うソフトの素晴らしいところは、こうやって山の中でミックスしたりできることでもあるが、一番優れているのはトータル・リコールが可能なことにある。ある曲のミックスに煮詰まったら、データはセーブしたまま、他の曲に移ることができる。アナログだとこうは行かない。そんな意味で、我々もデジタルの恩恵を充分に受けてるんだけれど、どうにもこうにもデジタルで解決しない場合の殆どは、外部のアナログ機器を通すことでうまく行くことが多い。それらの機械は大抵真空管が使われていて、0と1の世界にはないウォームで「曖昧」な良さがある。要はバランスなのだ。いつだって。ミックスをしながら、この示唆を受け止めている。

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by 山口 洋  

フライと驟雨

2006/11/11, 21:03 | 固定リンク

11月11日 土曜日 雨 

 数日前から、季節はずれの大量のハエの攻撃に悩まされていた。別に俺に危害を加えなければ殺生はしないが、奴ら、どうやらモニターと俺の身体が好きらしく、仕事中に気が散って、ウザいったらありゃしない。とうとう堪忍袋の緒が切れた。俺はキンチョールを手に片っ端から虐殺を敢行した。ちょっと心が痛んだけど。ウイリアム・ブレイクの詩に「蝿」というとても好きなものがある。殆ど今日の俺の心境と同じ。魚さんのメロトロンの名演をEQしながら、ふと目に入ったその屍は、もの哀しかった。すまん。フォーギヴ・ミー。
 山は昨日からずっと雨。土砂降りだと、ミックスも不可能になるほどだけれど。たまに雨が小休止して、遠くの景色が霞んで見える。まるで水墨画の世界に居るようだ。誰もこんな絵を描けないだろう。何か気候の急な変化がある度に、季節は冬へと歩みを進めていく。多分、今日から山の暦は冬。みんな何処へ行ったのだろう?もう麓へ買い物に下りることも、殆どなくなった。今は郊外店のけばけばしい看板すら見たくない。ただあるものを喰らう。締め切りまで余裕はまるでないんだけれど、心は穏やかに。そんな日々。

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by 山口 洋  

旅路

2006/11/10, 23:07 | 固定リンク

11月10日 金曜日 曇り 

 あっはっは。この一週間あまり。更新せずに申し訳ない。予想はしてたけど、スランプってものがやってきて、悪戦苦闘、七転八倒、山の中で、俺は一体何をやっとるんだ、と思うこと数限りなく。異様な肩こり、偏頭痛、混迷に迷走、その他もろもろ。音楽に向かいすぎて、ほぼ幻聴が聞こえてくる状態になって、初めて一日耳を休めなきゃと思った次第。
 とはいえ、それもまた想定の範囲内だったからして、どうかご心配なく。新聞、テレビ、ネット、その他もろもろ。まったく情報から遮断されてる環境に居るんで、世の中がどうなってんのか、まったく不明。まぁ、便りがないってことは代わりもないんだろうけど。さっきからものすごい雨が降っていて、ミックス出来ないのです。それもまた人生。ほんじゃ、また。

by 山口 洋  

生きてるって素晴らしい

2006/11/03, 17:10 | 固定リンク

11月3日 金曜日 晴れ 

 昨夜、隣(つっても500メートルは離れてるけど)の方から肉じゃがの差し入れ。甘くて、辛くてちょっと泣けた。九州って絶対醤油の味が違うんだな。いろんな事、思い出したよ。人の優しさが心に染みる。
 夕方。ようやく1曲目が完成した。風に揺れる杉の木立を眺めながら聴いていたら、訳もなく涙が止まらなくなった。ま、最近涙もろいからってのは置いといたとしても、難産だったから、ひときわ嬉しかった。この曲、阿蘇のこのテーブルで書き上げて、小淵沢で録音した。ダビングを開始したんだけど、どうにもしっくり来なくて、一回没にした。で、灼熱の東京でリテイクした。ところが音の感じがしっくり来なくて、ブースは一切使わず、全員が同じ部屋で、しかも俺のヴォーカルはPAから出して、全員ヘッドフォンを外してせーので録音した(フツーはそんなのあり得ない)。エンジニアの田村にはものすごい心労をかけた。メンバーも「いったい、こいつ何度やり直すんだよ」と思ってたかもしれん。それからヤイコさんに俺んちに来てもらって、歌ってもらった。
 いろいろあったけど、辿り着いた。音楽の端々に関わったいろんな人の想いが溢れていて、多分それにぐっと来たんだと思う。没にしたテイクを試しに聴いてみたら、もはや違う次元の音楽だった。やり直すことがすべてうまく行くとは限らないんだけれど、直感を信じて、人に迷惑をかけても、貫いて良かったと思う。ただ、ひとこと。ありがとう。俺は一人だけれど、独りじゃない。生きてるって素晴らしい。

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by 山口 洋  

お達者クラブ

2006/11/02, 20:00 | 固定リンク

11月2日 木曜日 晴れ 

 都会ではいつも陽が昇る頃に眠る俺が、今日は5時半に起きた。山の生活でいちばん気持ちが良いのは朝。本当に朝が「昇ってくる」。素振りして、体操して、まるでお達者クラブみたいだと、散歩しながら笑った。風呂に入って、8時頃にはもう音楽に向かっていた。一日が長い。そうそう、風呂の蛇口が誰かの顔みたいだったんだよ。(写真参照)おまえ、間抜けな顔してんなぁ、と奴に話しかけた。
 都会でどうにもうまく行かなかったミックスをやり直してみる。突然山の中で、絶好調になる訳もないけれど、録音した際に一番大事にしたことを思い返す余裕があるのはどうしてなんだろう?某ヤイコさんの声をソロで聞いていて、背後から同じ種類の声がしたので、すわ、いつの間にサラウンドか、と振り返ったら、見た事のない鳥が飛んでいた。はは。

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by 山口 洋  

点火

2006/11/01, 20:14 | 固定リンク

11月1日 水曜日 晴れ 

 俺はどうして「ほどほど」ってことが出来ないのだろうか?昨夜は「ちょー」がつくくらい愉しかったのだが、ビールとワインと焼酎っつー禁断の飲み合わせをやってしまった模様で、起きることが出来なかった。っつーか、夕方までゲロゲロで、頑張って音楽に向かってはみたものの、仕事にならなかった。アホめ。ここはひとつ「ちょっと休みなさい」という暗示だと思って、今日はペースを押さえてみよう。
 それはそうと、急に寒くなった。ストーブ屋さんに煙突掃除をしてもらわないと使えないんだけれど、あまりの寒さに禁断の薪ストーブに火を入れてしまった。クヌギの木が燃える匂い。気持ち良いよ。

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by 山口 洋  

2006/11/01, 20:09 | 固定リンク

10月31日 火曜日 晴れ 

 山の中で音楽制作に没入はしていた。でも、草刈りや掃除、家のメンテナンス、その他もろもろ。やることは山ほどあった。空いている時間に、ひとつづつ仕事をこなしていく。今日はカビていた食器を洗って、天日で干すとか。そんな訳で、食生活はヒドいものだった。殆ど「餌」。今日は夕方から地元の人々の宴に呼ばれた。いつも家族みたいに接してくれるし、実のところアルバム・プロジェクトに賛同してくれてたりもするし、熊本でのコンサートに来てくれたりもする。自分が旅している時には、阿蘇から熊本なんて、目と鼻の先みたいに思えるけれど、こうやって腰を据えてみると、熊本市はとても遠い。
 魚だとか、キノコだとか、グラタンだとか、エトセトラ。美味かった。人とも久しぶりに話した。愉しかった、ワン。

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by 山口 洋  
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