人生最高のカレー

2009/10/31, 15:00 | 固定リンク

10月31日 土曜日 晴れ 

 毎週愉しみにている金曜日のディナー。今日は3日に渡ってその制作過程をつぶさに眺めてきたカレー。it's only カレー、but i like it. オレはグルメでも何でもないのだけれど、こんなに「喰いたい」という衝動を覚えたのは久しぶり。そんな生命力が残ってて、良かった。ありがとう、マスター。開店1分前にオレは店に到着して、待望のそれを食した。一言、美味かった。あまりに美味かった。あまりに美味かった(くどい)ので、しばらく経って、もう一回喰った。そのカレーはいろんな食材の味がするのだが、口の中で見事にひとつの味となって昇華していくのだ。シンプル極まりない食材。けれど、手間暇かけると、こんなに深い味わいになるのね。

 今日は休日。多分、ツアー前、最後の休日。5ヶ月ぶりに髪を切った。これだけ伸びっぱなしにしてると、ほとんどカリフラワーかアルファルファーみたいになっていた。これじゃ人前には出れん。この頃思うのだ。この街からいろんなものをもらっているのだから、出来るだけ街に還元しよう。可能な限り、オレは街の商店で買い物をすることにしている。マスターに無口な美容師を紹介してもらって、カットしてもらい、店を出ようとしたら、次の客は明日、ハーフを一緒に走るヨシミ君だった。お主、考えることがオレと一緒だ。

 今日、とあるところでこんな文章を見かけた。「夢や希望を実現するのはたやすいことではありません。誰もがそれを望んでいますが、その道のりの遠さに、途中で諦めたり、背を向けたりします。でも、敢えてそんな遠い「本当の道」を選ぶ人もたしかに、います」。ふーむ。遠いからこそ、行くんだと思う。さぁ、明日は思い切り走ってこよう。

 

by 山口 洋  

cleaning windows

2009/10/30, 16:07 | 固定リンク

10月30日 金曜日 晴れ 

 レースに向けての最後の調整。ゆっくりと10キロ走る。クールダウン、クールダウン。すべての事に愛と感謝を込めて。明日は走らず、蓄積した疲労を取る。ひと月かけて、自分にできることは全てやった。正しかったかどうかは不明だけれど。練習も学習もストレッチもメインテナンスを施すことも。そして人生をやり直すことも。今月の総走行距離274キロ。やり残したことは何ひとつない。

 最初は「無」になるために走っていた。何もかもゼロにしてしまいたかった。「世界に変化を求めるのなら、まず自分が変わらなければならない」と云ったのはガンジー。オレは過去にいろんな事を引き起こしてきた。あるいは引き寄せていた。顕在の世界では到底太刀打ちできない、あまりに膨大でどうにもならない潜在意識によって、それらは引き起こされていた。ある学問では、その事をインナーチャイルドを云うのかもしれないし、業と云うのかもしれない。走りながら、それらの事に気づき始めた。もともと「起きた」すべてのことを他人や社会や環境のせいにするタイプではなかったと思う。それでも100%、それらが自分の潜在意識によって引き起こされていた、とは考えていなかった。オレの家族や先祖から受け継ぐしかなかった業のせいにしていた部分があった。何故、オレの家族はひとり消え、ふたり消え、最後には犬までも居なくなり、オレは一人になったのか。その理由を知るには、満州国建設にまで遡らなければならなかった。けれど、人は追いつめられて、本当に生き始める。走りながら、居なくなったひとりひとりと会話してみる。彼らが抱えていたやるせなさや痛みが少しづつ理解できるようになった。それらをひとつひとつ受け入れる。「ありがとう」とか「ごめんなさい」とか「愛してる」と云う言葉を心でつぶやくことによって。ひとつひとつ、負の記憶を丹念に消していく。窓を磨くように。光が差し込むように。274キロの間に、それらの言葉をどれだけつぶやいたんだろう。「誰をも、何をも、操作したり、画策したりすることなく、ひたすらおわらない愛を目指していけば、必ず道は拓ける」。オレは誰かの未来になる。そう思うようになった。言葉なんか覚えるんじゃなかった。今までに何度もそう思った。けれど、「ありがとう」、「ごめんなさい」、「愛してる」。この3つの言葉ほど、オレに何かを教えてくれた言葉はない。今までに、オレに注がれた愛は無限だった。気づかなかったのは自分だ。そして、それは永遠に失われることはない。

 「cleaning windows」と云う大好きな歌がある。窓を磨き、そして光が差し込んでくる。面倒な人生だったと思う。しなくてもいい苦労をしたのかもしれない。けれど、これらの経験によって、オレの人生のチャプター2は始まったのだ。だから、今はすべての事に対して感謝の気持ちしかない。もう、あの「怒り」はなくなった。神が居るとするなら、それは宇宙と音楽の中に。生きている間に何処まで行けるのか分からないけれど、その道を往こうと思う。そこには光が差している。本当にありがとう。

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by 山口 洋  

グレッチ、お前の出番だ

2009/10/29, 15:12 | 固定リンク

10月29日 木曜日 曇り 

 これからはレースに向けて、クールダウンの時期。小雨の中、ゆっくりと10キロ走った。

 さぁ、いつもはクローゼットに超ハードなケースと共に「格納」されているグレッチを引っぱりだして、メインテナンスを施そう。このギターはheatwaveの歴史そのものだ。何回か軽い浮気はしたけれど、アマチュアだった頃から、ずっとこの一本だけを弾き続けてきた。ヴィンテージ・ギターとしての価値があろうがなかろうが、そんなことはどうでも良くて、オレは彼女を墓場まで持っていくだろう。
 この数年間、エレクトリック・ギターを弾きたいと云う衝動がまったくなかった。出来るだけ身軽に旅しなければならなかったこともあるのだが、日本中をヤイリのギターを抱えて旅をしているうちに、エレクトリックとアコースティックの違いが、そもそもどうでも良くなってきた。気がつくと、アコースティック・ギターなのにエレクトリック・ギターのような音がしたりして、必要は確かに発明の母でもあった。でも、今回のツアーは弾こうと思った。去年まで、オレは一度も彼女を病院に入れたことがなかった。他人に触られるのが嫌だったからだ。でも、もう限界だった。フレットはすり減り、あちこちにガタが来ていた。「この人ならヒロシさんでも絶対信用できると思う」と日本一、いや世界一かもしれないグレッチ専門のリペアマンを紹介してくれたのは、川村カオリちゃんだった。グレッチ入院の日にはわざわざ立ち会ってもくれた。そしてグレッチは完璧に息を吹き返した。このギターには少しだけ彼女の想いも入っている。だから、魂を解放するために弾いてみようと思う。

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by 山口 洋  

未知の領域、30キロと大切なアナウンス#4

2009/10/28, 18:56 | 固定リンク

10月28日 水曜日 晴れ 

 今週日曜日のレース前にLSD (long slow distance - ゆっくりと長い距離を走ること)の仕上げとして、どうしても未知の領域である30キロの世界を体験しておきたかった。実行するなら今日しかなかった。随分疲労もたまるだろうし、だいいち、ここまで仕上げた身体が故障したら、意味がないし。
 決して飛ばさないように、1キロ6分のペースを守って走り出した。快調だ。足の調子もいい。けれど25キロを過ぎたあたりから、足が鉛みたいに重くなった。自分の足じゃないみたいだ。かろうじて余力が残っている上半身と根性に、足は引きずられているだけの状態。しんどいにも程がある。せめて気分を換えようと思った。今まで経験したすべての事に、思いつくまま、ひとつひとつ感謝を込めて、走ることにした。「ありがとう」を何回心で云ったんだろう。走り終えて、倒れこんだ。キツかった。確かに未知の領域だった。巻物には30キロをフツーにLSDで走れるようになったら、ペース走に移行せよと書いてあるが、まだ無理。だいたい生まれてこのかた、3時間11分も続けて走ったことなんてないし。
 収穫もあった。心肺とガッツだけはぜんぜん平気だ。まだイケる。ペースも最後まで落ちなかった。でも、いかんせん脚力が42キロを走るには心もとない。30キロは肉体的な中間地点らしい。ここからの12キロが地獄だと。これ以上の地獄って一体どんなんだよ、と思いつつも、まだ走り始めて3ヶ月じゃねーか、と。フツーに30キロ走れる肉体になってやろうじゃねーか、と沈みゆく夕陽に誓った。

 さて、バンドのツアー前の大切なアナウンス#4です。
 「heatwave結成30周年記念モデル - 希望を載せて飛ぶための羽根4号」はジュエリー・デザイナーの中野さんによって、女性も身につけやすいようにデザインされています。http://www.five-d.co.jp/heatwave/blog/index.php?id=09100023
 ところで、今回のキーリングはオレのリクエストによって作られました。野郎共が「一生モノ」として使えるもの。使えば使うほど愛着が湧いてくるもの。何よりもモノが溢れているこの時代に、オレや中野さんが「欲しい」と思うシンプルなもの。日本の職人さんたちがその技量を余すとこなく発揮できるもの。昨夜、完成したものを見せてもらいましたが、サイコーです。素晴らしい。素材や制作過程について、オレは詳しくないので、中野さんのblogを参照してください。これも羽根4号と合わせて、ライヴ会場特別価格で提供してもらいました。そんなに沢山作っていないので、欲しい人は早めにゲットしてください。詳細はウチのスタッフから近日中にまとめてアップされると思います。

http://k-a-g.com/

 さて、マラソンランナーでもあるスタッフS君による「結成30周年記念インタビュー」も第七回までたどり着きました。1994年、アルバム「NO FEAR」のあたりです。あと15年あるけど、ツアーまでに間に合うのかな?楽しんでください。

http://d.hatena.ne.jp/theRising/

 何はともあれ、今週日曜日にハーフマラソンを走ったら、バンドのツアーに向けて、思い切りシフトします。迷ってないで、みんな来んしゃい。30年分のロックンロールの奇蹟をお見せします。ワン。

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by 山口 洋  

will

2009/10/27, 17:24 | 固定リンク

10月27日 火曜日 晴れ

 たとえ誰に何も云われようとも、どんな誘惑があろうとも、譲れないことがある。自分が100%正しいなんて、これっぽっちも思わない。けれど、そのしち面倒臭い道をまっすぐに行くことでしか、学ぶことが出来ないタイプの人間もこの世に居ることだけは分かって欲しい、とは思う。道程で過ちに気づいたなら、それは率直に認めて反省しよう。絶えずこれでいいのかと、客観性を保っておこう。やがて、主観は客観と同義になるだろうし。度を超した誤解は、きちんと向き合って理解してもらう努力をしよう。水は易きに流れる。経験上それも知っている。let it be - すべてあるがままに -take it easy - ケセラセラ、エトセトラ。その言葉の意味も若い頃に比べれば分かってはいる。その上で、水は雨となって大地に降り注ぎ、地中にしみ込んで、やがて川となって海に注ぎ、また天へと還る。「おわらない円環」。手にしたことがない「おわらない何か」を夢想し続けること。それはオレの自由だと思うのだ。変わり続けるけれど、そこだけは変わらないだろう。「お前は45歳だから、もう根本は変わらないよ」。それは有る意味でそうだと思う。けれど、変わることは何も怖くないし、変えたいことはたくさんあるし、どこまでも変わり続けることを愉しみにさえしている。譲れないのはただ一点だけなのだけれど。

「もしもわれわれが空想家だと呼ばれるのなら、そしてできもしないことを考えていると云われるのなら、何千回でも応えよう。その通りだと」チェ・ゲバラ

「世界の中で、完全に迷子になれ」ヘンリー・ソロー

「笑いとは地球上でいちばん苦しんでいる生き物が発明したものである」ニーチェ

「オレの代わりはいないんだ」勝新太郎

「人間は生き、そして堕ちる。そのこと以外に人間を救う便利な近道はない」坂口安吾

「もう終わりだと思うのも、さぁ始まりだと思うのも、どちらも自分である」フェリーニ 

 二日間、雨で走れなかった。足の状態は良くなったこともあるが、どちらかと云うとふくらはぎが腫れていくばかりで、メインテナンスを施しても好転しなかった。多分、飲み過ぎもある。ならば、ゆっくりゆっくり走って治そうと、10キロをゆっくり走ってみた。少しほぐれてきた気がする。何よりも、10キロってこんなに短かったっけ、と感じる自分にびっくりした。ゆっくりだけれど、前には進んでいるんだと思う。
 

by 山口 洋  

「カンテラ」に寄せて

2009/10/26, 12:49 | 固定リンク

10月26日 月曜日 雨 

 青森県弘前市のロックシンガー、アキラから段ボールが届いた。開けてみると、そこには今年のリンゴと彼のバンドcreepsの試聴盤が入っていた。今まで無数にサンプル盤が送られてきたが、リンゴが入っていたのは初めてだ。何だか、いいね、こういうの。さっそくライナーを書かせてもらった。冬になったら、スキーを抱えて遊びにいくぜ。それまで元気でな。以下、ライナー。

 竹内晃とは何度も東北を旅したことがある。彼がステージに上がって歌う度に、目の前に弘前の情景が広がってくる。情けなくてチンケな(褒めてますから)野郎どもの日々が短編映画のように浮かび上がってくる。決して上手くはない。でっかいギルドのギターも弾いていると云うよりは、そのデカさに翻弄されているような。でも、それがいい。
 僕は音楽にイケてる要素なんて、何も求めてはいない。三味線の音を聞いたから、すなわち青森を感じるのでもない。けれど、このアルバムの奥底には、津軽の男どもの、そこはかとない優しさがある。厳しい冬と、日々を生き抜いた者たちの歌に嘘はない。試聴盤の入った段ボールにはリンゴが同封されていた。開けると、部屋に弘前の匂いが広がっていく。僕は今日、いつもバーにリンゴを持っていって、みんなで食べようと思う。そんな風にcreepsの「カンテラ」が広がっていくことを、僕は夢想するし、それは決して実現できない夢ではない。

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by 山口 洋  

poetic champions compose

2009/10/25, 15:58 | 固定リンク

10月25日 日曜日 曇り 

 街を吹き抜ける北からの風。もうすぐ冬。慌てて長袖のシャツを注文した。

 昨夜、近所で行われたライヴに出かけた。街の有志が日本のジョージ・フェイムと呼ばれるミュージシャンを呼んで行われたのだけれど、有志たちのその真っすぐな想いがとても気持ち良かった。「愛」があれば、それに応えるのがミュージシャンの仕事。どんなライヴでも学ばないってことはない。アップライトのベースプレイヤーはかなり素晴らしかったので、家に帰って、彼の名前で検索してみた。不思議なもので、彼の文章はまるでベースプレイそのものだった。きっと彼は心で楽器を奏でているのだろう。何か、機会があったら、こちらから声をかけてみようか、と思う。先日バーで出会ったサックス・プレイヤーもなかなかのものだった。彼の前には唯一、譜面がなかった。きっと彼もオレと同じで、音楽が身体に「入らない」と演奏できないタイプの男なんだろう。
  
 ところで、この街のスーパーランナー、ゲンちゃんから「スーパーマッサージ器具」をプレゼントされた。先日、オレは彼とマラソンコースですれ違った気がしたので、その旨、尋ねてみたら、やはりあのサバンナを走るガゼールのような男はゲンちゃんだった。モノが違う。一方の彼はオレを評して、こういった。「何だか、オーラのない中年が苦しそうに走ってるなぁ、と思ってたら、やっぱりヒロシさんかぁ」。ぐはは。君にそう云われるのは仕方がない。多分、それは事実そのものさ。今更、マラソン選手になれる訳がなく、走ってる姿もひどく無様なものだろう。それでも駆り立てられるのは、こみ上げてくるものがあるからで、無になりたくて、そして越えたい山があるからだ。どんなに無様でも結構。多分、いつか走りきったなら、号泣するだろう。その位には今だって、充分に苦しい。
  
 ようやく言葉とメロディーが結びついてきた。長い時間をかけて、3曲を同時進行で書き上げている途中。これが仕上がったなら、ひとつめの小さな山を越えるだろう。目覚めた時に、新しい足の痛みがやってきた。これは、今日は走ってくれるな、と云う身体のサインだと思う。なので、今日は休養日に充てて、身体のメンテナンスをしようと思う。

by 山口 洋  

金曜日のポトフの味

2009/10/24, 19:01 | 固定リンク

10月24日 土曜日 雨 

 毎週金曜日はマスター手作りの料理が味わえる日。前日から、美味くなるとしか思えない仕込みを横で眺めていたオレは、丸一日の「おあずけ」の拷問を食らったイヌみたいに、ポトフを喰いにでかける。ひとこと、美味かった。
 今朝はサーフィンデビューの日だったのだ。でも朝7時に連絡が来て、ティーチャー・ヨシミが風邪っぴきのためにダウン。あはは。ままよ。つーか、音楽やって、走って、夜「出勤」してるだけで、毎日結構忙しかったのだ。すぐ眠くなるし。
 明日はどうやら雨らしい。ひどく降ったら休養日に充てるとして、小雨の中、今日は四度目の一人ハーフマラソン。21,4キロ。2時間19分。来週は二度目のレース。どうにか「棄権」だけはせずに完走できそうだ。今月の通算距離は214キロになった。目標を達成したら、いよいよバンドのツアーに出る。みんな来てね。 

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by 山口 洋  

ゲンちゃんの解剖学、大切なアナウンス#3

2009/10/23, 18:16 | 固定リンク

10月23日 金曜日 曇り 
 
 身の回りで、続々と走る人が急増中。一度あの感じを体験したら、止められるはずもなく。奥が深いし、金かからないし、自分の好きな時に出来るし。オレひとりで秘密の巻物を独占しているのはもったいないので、毎晩「出勤」するバーの蔵書にしてもらって、みんなでそれを共有することにした。
 
 ところで昨夜、バーでこの街のスーパーランナー、ゲンちゃんに会った。彼は1キロを4分15秒で走る。凄すぎる。これ幸いと、ゲンちゃんに質問責め。彼はお金をかけずに独学で知識を身につけたと云うのだが、身体に関する考察はもはや、解剖学だった。事実、彼は人体解剖図を見て、筋肉や骨格の流れを勉強したのだと。唖然。例えば膝のある部分が痛いとする。それはすなわちその箇所がイカれているのではなく、骨に上下でジョイントされている筋肉そのものが炎症を起こして骨に癒着しているから起こる痛みである。そう彼は説明しながら、オレの骨から筋肉をひっぺがすような感じでゴリゴリとマッサージを施してくれた。すると、本当に痛みは消えるのだった。自分の身体と45年もつき合ってきたけれど、オレは何も知らなかった。面白い。果てには毛細血管の育て方から、ピッチの刻み方、ストレッチの方法まで、ありとあらゆることを教えてくれた。ありがとね、ゲンちゃん。でも、一番好きだったのはオレが「何でそんなに真剣に走り始めたん?」と聞いたなら、彼が「失恋」と即答したこと。まったく、男っちゅー生き物は。あはは。

 な訳で、ゲンちゃんの教えを反芻しながら、15,4キロ走って参りました。ゲンちゃんストレッチを導入し、ゲンちゃんマッサージをゴリゴリ施し、冷水と温水で、毛細血管を育てました。面白い。

 さて。今日はツアーに関する三度目のアナウンス。

 この数年、ずっと我々をサポートしてくれている代官山のジュエリー・ショップ「knife acoustic groove」の中野さんが、ツアーに合わせて「heatwave結成30周年記念モデル - 希望を載せて飛ぶための羽根4号」を渾身の力で制作してくれました。彼の店にはオレの1958年製のレスポールJr(本物)と昔使用していたアンプ、ampeg VT-22が常に展示されています。弾きたい人は遠慮なくどうぞ。
 彼とオレはモノ作りに対する気持ちで繋がっています。日本のシルバー職人は圧倒的な力量を誇るのですが、安価な外国製に押されて、その世界も大変な状況になっているそうです。今回の4号は彼が考えられるすべての感性をつぎ込みました。ひとつひとつを熟練職人が手仕事で仕上げ、模様の入らないピュアなターコイズを使い(そのため傷がつきやすいそうなので、他のものとじゃらじゃらつけるより、一点で身につけるのがおすすめだそうです)、「座」を作って、そこにマウントし、オレが書いた「espoir」のプレートが裏に埋め込まれています。会場ですぐ首から下げられるように、レザーループが付属しています。これは彼の店でももちろん手に入れることが出来ますが、30周年を祝って、会場で手に入れた方が安くなるように提供してくれました。詳細はまたいずれ。男性はもちろんすが、女性にぴったりのサイズだと思います。イカツイ野郎共にはもうひとつ別の「一生モノ」をオレのリクエストで作ってもらいました。そのアナウンスもまた、いずれ。制作過程などは彼のblogにアップされるそうなので、読んでみてください。

http://k-a-g.com/

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by 山口 洋  

ゆっくり走れ、メロス

2009/10/22, 17:54 | 固定リンク

10月22日 木曜日 曇り 

 今年初めての移動灯油売りがやってきた。「北風小僧の寒太郎」のメロディーにのせて。嘘だろ?でも、オレはその時走るためのランニングシャツを着ていた。シュールな出会いだったなぁ。そっか、もうそんな季節か。
 身体に自覚的になることによって、心と身体の声が聞こえるようになってきた。こんなところにも筋肉があったのか、とか。この筋肉はこう動いてたのか、とか。心が
何処に存在してるのか、とか。身体と心はどう繋がってるのか、とか。エトセトラ。決して健康のためではないのだけれど、おそらく足りていないであろう、栄養を取るためにサプリメントを買った。そんな自分が信じられない。人はこうまで変わるものなのか。足の指のために、ワセリンがプレゼントされ、オレは三度目の一人ハーフマラソンに挑んだ。21,4キロ、2時間12分。今日こそは未知の領域である、30キロに挑もうかと、心が云った。けれど、身体が「止めてくれ」とそれに応えた。その会話を聞いているのが面白い。
 身体の発言は実に正しくて、帰ってきたら血マメがまたひとつ増えていた。こりゃ靴だな、と身体が云った。良く調べてみると、まだ三ヶ月しか履いていないその靴の底はすり減り、しかもひどく偏って減っていた。ふーむ、そうかもしれん。ストレッチをして、スポーツ用品店に行き、若くて元気のいい店員のお兄ちゃんに、靴とオレの足を見せて、ふたりで靴選びをした。「こんな状態で走ってるんですか。そりゃ無茶ですねぇ」。奴はとってもナイスだった。よし、君はプロだ。君が選んでくれたものを買おうじゃないか。しかし、出てくるものすべて、信じられないくらいヒドいデザインだった。あまりにヒドすぎて泣きたいくらいだ。三ヶ月前だったら、こんな靴履いてる輩と友達になれたかどうかも疑わしい。けれど、もうオレの心はその場所にはなかった。もともと人に見て欲しくて走ってる訳じゃない。水分を取るために、スポーツ用のウエストポーチ(それは外国を流浪してる時代に一番嫌っていたものだった)だってしてるし、五本指のソックスだって履くし、デジタル時計だってしてるし、意味不明のデザインのランニングシャツだって着るし、足が痛くなけりゃそれでいい。お兄ちゃんと協議の結果、この宇宙に行けそうな靴がベストだという結論に達し、握手をして別れた。はは、何だかなぁ。
 ゆっくり走れ、メロス。日々もマラソンも音楽も人生も。君は必ず夢見た場所にたどり着くことができるはずさ。

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by 山口 洋  

同じ眼光

2009/10/21, 16:36 | 固定リンク

10月21日 水曜日 晴れ 

 身体がまた一回り締まってきた。ジーパン屋の友人がやっと探してくれた、この国ではおそらく一番細いジーンズも、ウエストが合わなくなってきた。でも、友部さんが云ってた。一度痩せるけど、ちゃんと太る、と。そうじゃなきゃ困る。着るものがなくなる。
 晩秋の陽ざしを浴びて、15,4キロ走った。気持ち良かった。ところで、オレがどの時間にコースに行こうとも、必ず見かける女性が居る。年の頃はオレと同じくらいか。つまり彼女は一日に5時間くらいは走っている。どうしてそんな無茶をするのか、どうしても分からない。楽しんでいると云うよりは、自分に対する罰のように苦悶の表情を浮かべて、ずっと走っている。もはや、女性とは思えないくらいに日焼けして、頭は角刈り、異様なまでに肉体は引き締まっている。一般的な女性としての、いろんな事は捨てたようにしか見えない。いい加減、相手もオレの顔を覚えただろうから、すれ違う度に会釈はするが、彼女からリアクションが返ってきたことはない。ストイックにも程がある。走りながら、いろいろと考えてみる。ひょっとして、彼女は何がしかの秘密組織のスナイパーなのだろうか。それとも、過去を振り払うために肉体を追い込んでいるのだろうか。体形から想像するに、マラソン選手ではない。存在が岩なのだ。失礼を承知で書くなら「女岩石」。きっと陽が落ちたら、何がしかの筋肉トレーニングに励んでいるんだろう。失礼だとは思いながら、彼女の事を想像するだけで、短編がひとつ書けそうだ。そこまで考えて、はたと思い当たった。同じ目を観たことがある。
 随分と前のこと。オレはネヴァダの砂漠でヴィジョン・クエストをするために車で彷徨っていた。灼熱地獄。どこまでも続く一本道を金髪の女性がリュックをしょって一人で歩いていた。危険だ、と思ったから(もちろん下心なし)、「乗りなよ」と云ったら、恐ろしいほど怖い目をして(ちなみに彼女はとても美人だったが)「Fuck you!」と云われた。あの彼女は何を探していたんだろう。同じ目だ。

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by 山口 洋  

whole night sky

2009/10/20, 17:09 | 固定リンク

10月20日 火曜日 風の強い日 

 昨夜、飲み屋であまりの足の痛みに耐えかねて薬局で薬を買った。マスターが湿布をくれた。普段、薬に頼らない生活をしていると、びっくりするくらい効く。ある種、不気味ですらある。おそるべし、ロキソニンとインドメタシン。
 おかげでオレの足は走れるところまで恢復した。意気揚々と海沿いのマラソンコースまで行ったが、風が強くて走れない。砂塵を巻き上げ、コースはとんでもない状態になっていた。仕方がないから、隣の国道を15,4キロ走った。それはそれで悪くなかった。

インタビュー第六回、更新されています。
http://d.hatena.ne.jp/theRising/

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by 山口 洋  

休養日

2009/10/19, 11:12 | 固定リンク

10月19日 月曜日 晴れ 

 しかし、足が痛い。爪も膝もくるぶしもふくらはぎも全滅。記録によるとこの6日間で86キロ走っていた。バカだ。それでもオレはマラソンコースに行ったのだが、2メートル走って棄権。今日走ったら、壊れる。学ぼう。今日は休もう。
 何に駆られてるのかって、正確には自分でも分からない。ただ、走ることによって保たれている何かがあるのは事実。正気なのか我なのか、何なのか。ミュージシャンの自死を伝えるテレビのニュースはもう観たくない。興味本位の哀しみほどタチが悪いものはない。胸が痛い。誰かの言葉にひどく傷ついてる友人の顔を観るのも辛い。オレとて、「言葉なんか覚えるんじゃなかった」と何度思ったことだろう。でも、仕方ないのさ。起きたことは。フツーに受け入れて、走って、それをマラソンコースに捨ててこよう。もうすぐ何かが出てくると思う。抱えている心の渦のようなものは、自分でも手に負えなかった。それをポジティヴなものに変化させるには走るしかなかったんだと思うし、それに出会えて本当に良かった。メンタルな問題をフィジカルにかき回す。すると、何かが湧き出てくるんだと思う。それは「経験の歌」だと思うし、できることなら、汚れた哀しみの末にある「songs of innocence」であって欲しい。

 以前だったら、絶対に買わなかったであろうデザインのランニングシャツを買った。格好悪い。でも、走るのには楽な方がいい。自分の汗が重いのだ。そして帰途につくと、急激に寒くなる。人の細胞は一年で入れ換わるのだと。さぁ、明日は走るぜ。

by 山口 洋  

街と人と暮らしと音楽、国内某所にて

2009/10/18, 15:12 | 固定リンク

10月18日 日曜日 快晴 

 晴れた。気分がいい。

 いつも出勤しているバーでお忍びライヴ。10キロ走って、楽器を店に運びに行ったら、マスターが獅子奮迅の働きっぷり。何せ、普段はバーな訳だから、ライヴをやる時にはとんでもなく大変なのだ。頭下がるわ。本当に。これが「愛」だよ。

 オレはこの街でノーウェアマンとして静かに暮らしていた。出来るだけ自分の職業は伏せて、どこでもない男として、街に埋没していたかった。観察するだけの男として。でも、今年になっていろんなことがあって、一人でこの店に出勤するようになって、あっと云う間にたくさんの友人ができた。キツいツアーから帰ってきても、いつだってフツーに迎えてくれる。焼きたてのパンや、切り干し大根や、ひじきや味噌なんて差し入れられたりもする。えっと、昨日は地鶏と馬刺もらったっけ。ありがとね。暮らしの中で音楽をフツーに楽しんでいる人たちが沢山居て、オレの職業はミュージシャンな訳だから、恩返しをするとしたら、音楽しかないじゃん。この空間がなかったら、オレはずっと穴の底に落ちたままだっただろう。だから、通称リズム刑事(命名山口洋 - 写真参照。とてもナイスな奴)にはリズムの取り方を伝え、サーファー兼ギタリストで、オレのマラソンのライバルには弦の張り方と狂わないチューニングの方法を伝え、ギターを弾きたいと云うキュートな二人組とは、ほぼ毎晩一緒に演奏してきた。その昔、尊敬するドーナル・ラニーに云われたのだ。「ヒロシ、いいか。お前がどんなにアマチュアのミュージシャンと演奏しようが、そいつがどんなにヘタクソだろうが、お前が何も学ばないってことはないんだ。だから、音楽家として、お前の役目はそういう人々に音楽の素晴らしさを伝えることでもある。お前はそれができる人間だし、そんな機会があったら、面倒くさがらずに、全力でやれ。それが結果的にお前の能力を高めることになるし、そもそも音楽はそうやって発展してきたんだ」、と。

 な訳で、可愛い二人組とも一緒に演奏することにした。そりゃ緊張するわな。人前で演奏するの初めてだしね。でもこの二人組がこの一ヶ月半、どれだけ練習してきたか、オレはよーく知っていた。走った距離は裏切らない。まぁ、実に初々しい。もはやオレが失ってしまった音楽への瑞々しい気持ちに満ちていた。オーディエンスに歌詞カードを配って、みんなが歌ってくれた。曲の名前は「孤独の旅路」。おいおい。でも誰だってheart of goldを探してるのだ。ドーナル、やっぱりあなたが云う通りで、学んでるのはオレの方だったよ。 

 少しだけ、街や人に恩返しが出来たような、そんな気持ち。ありがとね、楽しかったよ。

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by 山口 洋  

過去と他人、そして自分と明日。

2009/10/17, 15:02 | 固定リンク

10月17日 土曜日 曇り 

 曇りの日は目覚めたときから気分がすぐれないことが多い。カーテン越しのぼんやりした光を見るだけで、その日の空模様が分かってしまう。灰色の空と心のブルー。そんな時は無理に「おふとんの国」から出ずに、言葉を失っていたときに見つけたある「言葉」を自分に投げかける。今までのいろんなことにゆっくり感謝し続ける。そして、ストレッチをしてから、ベッドを出る。多分、オレは触れることに飢えている。でも、これ以上心が渇かないように、海を見ながら走るとしよう。
 
 連日のハードトレーニングで、階段を降りることもままならず。でも、ゆっくりと時間をかけて、10キロ走る。1時間5分。海辺ではたくさんのファミリーがくつろいでいて、その光景が目に染みる。でも、今のオレに出来ることはこれしかない。乗り越えていく以外に方法はない。
 
 家に帰って、テニスプレイヤーの杉山愛さんのドキュメントを観た。彼女はアスリートならではの簡潔な言葉でこう語った。「過去と他人は変えられないけれど、自分と明日は変えることができる」。その目はとても美しかった。経験が人を作る。ならば、マイナスの経験ってのはあり得ないはずだ。多分。

 酒場には暗黙の掟がある。その人が自らの口で語らない限り、他人の過去に介入してはいけない。一人でふらりと入ることができる店には、自然とそのようなルールが出来上がっている。稀にいろんなことを詮索する輩が居たりすると、ひどく居心地が悪くなる。たまに真面目な話もするけれど、オレは他愛もない、くだらない話をして笑っているのが好きだ。静かに音楽を聞いているのが好きだ。たいていの人間がなにがしかの傷のようなものを抱えている。あるいは家族が居ないか、遠く離れているか、エトセトラ。その暗黙の掟の上に、一人でふらりと現れた者たちが、その日限りの「疑似家族」のように他愛もない話をして、家路に着く。その空気を繋いでいるのが極上の音楽と、絶妙なヴォリュームコントロール。

 さ、書きかけの曲に向かって、夕方からライヴに行くとするか。

by 山口 洋  

ハーフマラソン#2、ツアーの詳細

2009/10/16, 16:30 | 固定リンク

10月16日 金曜日 晴れ 

 だんだんマラソン日記と化してきたけど、許してください。今、頭の中は音楽のこと、バンドのツアーのこと、走ること、夜バーに出勤すること。それだけなのです。悪しからず。

 会う人の殆どに「痩せたね」と云われ続け、「そうじゃなくて、締まったんすよ」と言い返し続けてきたが、最近は「締まったね」と云われることの方が多くなった。体脂肪を計ったことがないから分からないけれど、あからさまに身体は引き締まり、贅肉は殆どなくなった。秋だと云うのに日に日に日焼けして、もはや職業が何なのか、不明だと思う。昔は「報道記者?」とか「売れない作家?」とか云われたものだが、初対面でオレの職業を当てられる人は少ないと思う。外食も殆どしなくなり、いろんな友人たちが差し入れてくれた美味しいお米とか、味噌とか、漬け物とか、粗食を日に二回、自分で作って食べる。体調はバーに出勤して、一杯目のビールで分かる。このところビールがまずかったことがない。マスターに「今日も元気でビールが美味い」と報告する。もう暴飲もしない。いい感じに酔っぱらったら、家に帰って寝る。そんな日々。

 LSD (long slow distance - ゆっくりと長い距離を走ること)を始めて、いろんなことが見えてきた。1キロ6分というのは今のオレには走ることを楽しむことができる理想的なペースだ。ただ走っているだけだけれど、本当に楽しい。一度、ipodで音楽を聞きながら走ってみたけど、音楽はない方が好きだ。風の歌とか、トンビの声、潮騒、人々の笑い声、それから自分の胎動から聞こえてくる音楽。それを聞いている方が楽しい。さぁ、ゆっくりハーフマラソンの距離を走ってみよう。21キロとちょっと。心肺はまったく問題なし。筋肉と関節がまだそれについていけないけれど。2時間18分。ああ、楽しかった。多分、今度のハーフは棄権せずに走り抜けるだろう。もともと、これだと思ったら無茶苦茶に努力するタイプだから、気をつけようと思う。走ることを嫌いになりたくない。自分で分かるのだ。オレにはまだフルマラソンを走る資格がない。だから、ゆっくりと地力をつけて、3月に完走を目指そう。それでいい。

 バーで明日から四国88カ所を巡るのだと云う23歳の青年に会った。いい目をしていて、嬉しかった。所持金が15万だと云うので、何人かの四国の友人達を紹介した。な、訳で奴がボロ布のような風体で現れたら、よろしく頼みます。ラフ・ハウスの今城くん。そこにたどり着いた頃にはホームレスみたいになってると思うんで、美味しいうどんと酒を飲ましてやってください。オレのツケで。

 人はどうして、そんな無茶なことをするのだろう。オレも良くは分からない。でも目標は遠い方がいい。ブレないから。遠くを見つめながら悪戦苦闘しているうちに、人はタフになっていく。全体的な視野を手に入れながら。生い立ちが何であれ、性別や国籍が何であれ、この世が生きるに値すること。多分、それを一生かけて証明したいだけなんだと思う。自分の利益とか、豊かな老後とか、そんなことではなく。自分が誰かに必要とされていること。それを実感したいだけなんだと思う。

 オレたちのバンドには、はっきり云って潤沢は資金はない。沖縄に行くことですら、ある種の「賭け」だったりもする。でも日々のもろもろをファンタジーに変えるだけの力がある。そんなに効力は長く続かないかもしれないけれど、オーディエンスの日々を、見上げた空を2,3日広いものに変える力がある。音楽の奇蹟を味わってほしい。だから、迷わず足を運んでください。待っとるよ。

HEATWAVE 30th ANNIVERSARY TOUR 2009

11月8日 (日) 名古屋・HeartLand STUDIO

開場/開演=17時30分/18時30分
チケット料金=4,500円 (税込/ドリンク代別途500円)
チケット販売=8月29日 (土)より、チケットぴあ、ローソンチケット、HeartLand STUDIO店頭にて発売
HeartLand STUDIO Tel_052-202-1351

11月9日 (月) 大阪・Shangri-La

開場/開演=18時30分/19時30分
チケット料金=4,500円 (税込/ドリンク代別途500円)
チケット販売=8月29日 (土) より、チケットぴあ、ローソンチケット、e+、 CNプレイガイドにて発売
問=ソーゴー大阪 Tel_06-6344-3326

11月11日 (水) 福岡・DRUM Be-1

開場/開演=18時30分/19時30分
チケット料金=4,500円 (税込/ドリンク代別途500円)
チケット販売=8月29日 (土) より、チケットぴあ (Pコード:334-806)、ローソンチケット (Lコード: 84881)、e+にて発売
*先行予約有り。詳しくはTSUKUSUのHPをご覧になって下さい。
問=TSUKUSU Tel_092-771-9009

ASYLUM2009 presents
11月13日 (金) 沖縄・桜坂セントラル

開場/開演=18時30分/19時30分
チケット料金=4,500円 (税込/ドリンク代別途500円)
チケット販売=8月29日 (土) より、チケットぴあ、ローソンチケット、桜坂劇場窓口にて発売
*お得なASYLUMイベントパス発行予定。詳しくはASYLUM公式ブログにて後日発表。
問=桜坂劇場 Tel_098-860-9555

11月15日 (日) 東京・duo MUSIC EXCHANGE

開場/開演=17時30分/18時30分
チケット料金=4,500円 (税込/ドリンク代別途500円)
チケット販売=8月29日 (土) より、チケットぴあ、ローソンチケット、SOGO TOKYO WEB SITE、e+にて発売
問=SOGO TOKYO Tel_03-3405-9999

by 山口 洋  

大切なアナウンスその2

2009/10/15, 16:01 | 固定リンク

10月15日 木曜日 晴れ 

 午前中、携帯屋に行った。一件目、撃沈。昨日と担当者は違ったが、応対はあまり変わらなかった。またしても、携帯を放棄したくなる誘惑に駆られたが、この街にはもう一件店がある。そこに行って駄目ならそうしよう。それから好きになれない人やモノにチャンネルを合わせるのは止めよう。二件目。出て来た若い男性に、事情を伝えた。ん?こやつは違うぞ。「それはお困りですよね、ひどい対応ですいませんでした。やってみましょう」。おおっ。ここまで違うものか。オレの古い携帯からは何故かデータが抜き出せなかった。彼は悩んだ挙げ句、赤外線でそれを抜き出し、店の携帯に一度データを移し、それからwebにアップするという離れ業をやってくれた。作業には一時間くらいかかった。おまけに金を受け取ろうともしなかった。「本当にありがとう。あなたはプロだ」と伝えたら、「困った事があったら、いつでも気軽に来てください」と。ヒロシ感激。結局は人なのだ。次に何かがあるときはその店で買おうと思う。ありがとう。

 夕方。ゆっくりと10キロ走った。1キロ6分というペースも身体にしみ込んできた。天気もいい。最高だ。そこにゲイとおぼしきおっさんがチャリンコで並走しながら話しかけてくる。微妙にお姉言葉。「あーらー、いい天気。汗もいっぱいかいちゃって、今日は最高ねぇ」。みたいな。最低だ。遊びじゃないんだマラソンは。邪魔しないでくれ。おまけにオレにその趣味はない。想像の域を出ないが、彼は苦しんで汗をかいている中年男フェチだ。多分。約1分のすったもんだの末、彼は次の獲物をめがけて旅だって行った。まったくもう。

 さて、今日は二度目のアナウンスです。10月7日のこのdiaryでお伝えした「official bootleg series」の第二弾の案内です。詳細は以下に。

OFFICIAL BOOTLEG SERIES #002
19980623
Live at Fukuoka City (2discs)
¥2,500

Yamaguchi Hiroshi - Vocal and Guitars
Morgan Fisher - Keyboards
Yamakawa Hiromasa - Bass
Ban Yoshimitsu - Drums

disc1
1. the Answer (6:44)
2. 「33」 (5:08)
3. ホーボーマン (8:50)
4. ナイスガイ (15:24)
5. 夜の果てへの旅 (9:06)
6. 竹田の子守唄 (5:43)
7. ファイティングマン (9:36)


disc2
1. 普通の男 (5:02)
2. 放浪の星 (5:42)
3. 遊園地(ルナパーク)にて (8:41)
4. 陽はまた昇る (7:36)
5. たったひとりの友人 (9:29)

 
 1998年、メンバーはモーガン・フィッシャー、山川浩正、伴慶充。アルバム「月に吠える」をリリースした後の福岡のライヴ。このテープは膨大なライブラリーの中から偶然発見されました。30年分のライヴ音源を全部聞くことは到底不可能です。ある日、適当に一本選んで聞いてみたなら、これが面白いのなんの。この時期、このメンツで我々はバンド固有の音を目指していました。その頂点が余すことなく記録されています。アホな男どもから、まっすぐに音楽に向かうところまで。#001と同じく、一切の編集をしていません。ライヴ一本丸ごと入っています。「月に吠える」の収録曲はすべて演奏していますが、アルバムとは一線を画するライヴならではの演奏です。ナイスガイが何故15分もあるのか。それは聞いてのお楽しみってことで。さすがにこの曲は編集することも考えましたが、「official bootleg series」だし、前回も記したように、このシリーズは作品と云うよりは「記録」なので、敢えてすべてをそのままにしてあります。ただし、テープの保管状態が#001に比べると良い状態ではなく、音質は#001に比べると劣ります。そのあたりだけは、皆さんが気にならないように、できるかぎり補正してあります。#001と同じく気軽にみなさんに手にしてもらえるように、出来るだけ手頃な価格に押さえました。来月のバンドのツアーから、ライヴ会場のみで販売します。楽しんでください。

 てな訳で、これからはバンドの30周年ツアーに照準を合わせます。迷わんと、音楽の奇蹟を愉しみに来てください。待っとるよ。

追伸
当時のメンバーのみなさん、後でこちらから連絡します。

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by 山口 洋  

一人ハーフマラソンとiphone事件

2009/10/14, 23:02 | 固定リンク

10月14日 水曜日 晴れ 

 来月、オレは本当にハーフマラソンを走れるのか。実験してみることにした。1キロ6分のゆったりとしたペースを守って、21キロを走る。ゆっくり走ると、疲れる部位がまったく違う。膝や関節ではなく、筋肉そのものが疲れるのだ。ふーん。つくづくニンゲンの身体って面白い。途中、給水とストレッチをしたから、ロスもあるけれど、2時間20分くらいでは走ったと思う。何とかリタイヤはせずに完走できそうだな。でもマラソンって30キロが肉体的な中間地点らしいのだ。まだまだ先は長い。そんな時に走る師匠のS君から、来年3月のフルマラソンの誘いが。やりますとも。あと5ヶ月ある。

 ツアー中に携帯電話がどうにもならなくなった。突然、電源が落ちるとか、通話できない、とか。苦情殺到。多分、オレがまったく愛を注いでいないので、携帯もスネたんだろうけど。これを機会に手放すかっちゅー誘惑にも駆られた。なければないで、生きていける気もするし。そんなもの、もともとなかったんだし。でも、家の電話がまったく鳴らない状態になった以上、フリーのミュージシャンとして、それも大人気ないと思い直して、携帯屋に行くことにした。オレは携帯屋が病院と百貨店の化粧品売り場と同じくらい苦手だ。いろんな説明を受けていると、何もかもどうでも良くなってきて、一秒でも早く用事を済ませて、そこから逃げ出したくなる。でも、オレも大人だ。仕方ない。意を決して入店。45分待ちの看板。仕方ない、アゲイン。でも、店の中で45分待つのは耐えられない。受付票を手にして、30分で蕎麦を喰って帰ってきたら、オレの順番は過ぎていた。アーメン。また受付票を取り直して、更に30分。ようやくオレの番になった。でも、受付嬢とオレの相性は最悪だった。彼女とて、マスカラが乱れている。今日も接客で大変だったんだと思う。それは理解する。でも、そのマニュアル通りのもの云いがどうしても我慢ならないんだよ、オレは。ま、とにかく。オレは新しい電話を手にしてようやく店を出た。相当気分が悪かった。で、家に帰って愕然とした。この電話は前の電話のデータを抜き出して、それを店がweb上にアップして、自分でダウンロードしなきゃいけないらしい。オレもカリカリしてたから気づかなかったけど、そんなの普通、説明するだろ。プロなんだから。つまりオレの電話は何ひとつデータが入っていないまっさらな携帯電話なのである。何百件のデータが入ってるのか知らないけど、そんなもん、いちいち入力できるか。あー、もう。これは人間関係を整理しろって、天の声なのか、それともオレがもう少し現代のやり方に慣れて、大人になれってことなのか。何にせよ、明日、もう一度だけ携帯屋に行って、そっちの説明不足なんだから、データーくらい抜いてくれ、と大人な口調で話してみようとは思う。好きになれないものにチャンネルを合わせてカリカリするのは止めよう。時間の無駄だ。ただ、このような時間の浪費はひどく建設的ではない気がする。

by 山口 洋  

ゆっくり走る方が難しい

2009/10/13, 12:45 | 固定リンク

10月13日 火曜日 晴れ 

 ホームに帰って、ようやく走る時間が持てた。でも、不思議なことにゆっくり走ることの方が遥かに難しい。1キロを5分で走ることはできる。でも、6分で走るのはとても難しい。それが120分の間、苦もなくできるようになったとき、フルマラソンを5時間くらいで走りきれる「総合的な」力が備わるのだそうだ。その1分の間に、能力以上のことをやろうとする焦りが存在していて、それを根性で乗り切ろうとすると、身体の何処かが壊れる。その意味がようやく分かってきた。ストレッチを学んで、自分の身体の調子を己に聞いてみると、走った後のダメージも少ない。身体の変調は今度は爪に移行していて、毎日新しい爪がひとつづつ死んでいく。身体は本当に面白い。
 横浜のサムズ・アップに「ピースケ祭り」に出演するために出かけたら、そこに友部正人さんが居て、音楽の話はそっちのけにして、走ることについて質問攻め。ついでに膝やふくらはぎまで触らせてもらったら、それは鉄人のものだった。単純に太い訳でもなくて、形容できない存在感があった。何処かが痛いのは、絶対に負荷がかかっているから、その原因を取り除くべきだ、とアドバイスをもらった。
 ところで、ピースケ祭り。沢山のミュージシャンが居て、愉しいイベントだったのだが、長い。自分の出番が来る頃には睡魔に襲われていたので、大人気ない演奏をしたかもしれん。でも、いろんなミュージシャンと演奏するのは愉しかった。ありがと、ピースケ。

by 山口 洋  

旅の記憶

2009/10/12, 23:44 | 固定リンク

10月12日 月曜日 晴れ 

 連休最終日。オレはどうしても東京に戻らねばならなかった。ツアーで疲弊した身体に岡山 - 東京間の渋滞はさすがにしんどかった。約束していた神戸のラジオ出演。キャンセルして本当に申し訳ない。今日ばかりは自力で東京に戻る自信がなかった。まだ死ぬ訳にはいかんのだ。だから、許してくれ。この借りは必ず返す。
 このシリーズ、思い返せばレースに出たところから始まり、東名の工事渋滞に巻き込まれ、台風がやってきて、肉体的にはハードだった。でも、それぞれの街で、音楽が力強く人々の心に根付いているのを観た。espoirも観た。いろんな問題がこの国に山積しているのも観た。オレは歌を歌うことにより自覚的になった。本当にありがとう。また来年元気で会おう。そして、来月のバンドのツアー、是非足を運んでくれ。音楽の奇蹟を目指してオレ達は走る。

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by 山口 洋  

継続する志、岡山県岡山市にて

2009/10/11, 21:47 | 固定リンク

10月11日 日曜日 晴れ 

 昼前に後ろ髪を引かれながら出雲を出て、岡山を目指した。さすがに疲労が蓄積してきた。途中、大山にちょっとだけ立ち寄った。九州育ちのオレにはこの山はスキーが出来る一番近い山として有名だったから、一度観ておきたかった。秋のゲレンデは可愛らしかった。そっか、こんなに小さなゲレンデに九州のガキ共は憧れてたのか。
 岡山。いつからだろう。もう随分と昔から。変わらぬ体温で応援してくれる連中が居る。もはや何も心配する必要もなく。どんなに疲れていても、彼らが用意してくれた空間にオレは乗っかるだけ。開演前に思わず寝てしまうという失態をおかしても、彼らはそっと寝かしておいてくれた。子供たちもどんどん大きくなる。それがまた嬉しい。最後までやりきることができたのは、足を運んでくれたオーディエンスと彼らの力のおかげに他ならない。楽しんでくれたかい?いつか必ずフル・バンドで岡山に戻ってくるからね。本当にありがとう。多謝&再見。

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by 山口 洋  

all the middle dudes、島根県出雲市にて

2009/10/10, 01:21 | 固定リンク

10月10日 土曜日 晴れ 

 まったくよう。この出雲のバカ共との付き合いは20年を超える。初めてオレを観たのが15歳だったとか、そんな連中が沢山居る。奴らも大人になって、酸いも甘いも噛み締めて、自分の観たいライヴを企画する。歴史のある旧大社駅で。欲を云えば、明日出演する、浜田真理子さんとやりたかった。オレ、明日は岡山だし。でも、オレの前に出て歌ってくれた、ポーグスのシェーンとトム・ウェイツとジョニー・ディップを足して3で割ったような、あいつ。ふてぶてしくて最高だったよ。
 奈良から出雲に来たオレ。平城京の遷都のアニバーサリーなんだってね。おまけに明後日、この街では大学駅伝がある。町中に大学生のランナーが居て、トレーニングをしてる。あいつら、カモシカだ。あるいはサラブレッド。オレは逆立ちしてもあんな風には走れない。だから、音楽をやるのさ。いろんなことが繋がってる。だから、今日も出雲大社に感謝したよ。ありがとうって。
 第一、オレは地方でこんなに立派なPAを観たことがない。完璧だ。演奏に集中できる。それもこれも、奴らがいい音を届けたいって云う意思の元に集まった連中なのだ。ありがとよ、もちろん、あんたたちの気持ちには応える。受け取ってくれたか?じゃ、それでいい。オレも諦めないし、メゲない。だから、来年も元気で会おう。多謝&再見。

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by 山口 洋  

ホームラン、島根県出雲市にて

2009/10/09, 13:05 | 固定リンク

10月9日 金曜日 

 奈良で目覚めて、朝露に濡れた道を二月堂まで走った。いにしえの道を走るのは格別。たとえどんなに睡眠不足だったとしても。早い時間に奈良を出て、約350キロ。出雲を目指した。独り旅のお供はこいつ(写真参照)。陽が落ちる前に出雲大社に行きたかったから。一日のうちに、奈良と出雲。贅沢だ、と自分でも思う。現代の寅さんの特権かもしれんね。感謝しよう。
 ところで、出雲にはもうひとつ用事があった。顔の真ん中に乗っかっている眼鏡を買うこと。いつも買っていた東京の老舗の眼鏡屋が最近?なことが多すぎて、ならば、根性と愛を持って、日本の製品を扱っている古くからの友人ケンタの店で、奴に全てを任せてみようと前々から思っていたのだ。奴の店、シマネヤは出雲大社の参道沿いにある。眼鏡屋なんだけれど、オレのCDも置いてある。眼鏡産業もユニクロよろしく、外国産の安価な製品に押されて大変な状況になっている。日本の眼鏡の殆どを生産してきた福井県鯖江市も、いわずもがな。で、奴はシフトした。特化したのだ。安価なものを大量に売るのではなく、奴の「眼鏡」にかなった作家のものを自力で仕入れて売る。オレが店に到着したなら、おかんがコーヒーを買ってきてくれた。そして、奴の親父さんの代から使っている古いけれど、素晴らしい器具でオレの視力を計り、眼鏡を作ってくれた。プロに任せてモノを買う。何だか、当たり前のことが嬉しい。そして、こういうコミュニケーションが今や懐かしい。店を構える者の膨大な商品知識。それって、当たり前のことだったと思うのだが。走る時にズレない眼鏡。そして日常で使用する、かけ心地のよい眼鏡。ふたつ。それらが出来上がるのは今月末。奴がついでに東京まで配達してくれるのだと。この時間のかかりようも何だか嬉しい。もしも不具合が生じたのなら、ちゃんと眼鏡の事を知っている東京の眼鏡屋に話を通しておくので、そこに遠慮なく行って欲しい。云々。おぬしはプロじゃ。素晴らしい。

 いつの間にか、オレのジーンズは札幌から、野菜はときどき函館や長野や徳島から、ジュエリーは代官山から、歯の治療は宮城県で、そして眼鏡は島根県、エトセトラ。全国を廻っているうちに、こんなことになってきたのだが、プロの道はすべて同じところに通じていると思う。

 ケンタがオレの眼鏡のもろもろのことをやってくれているうちに、オレは出雲大社に行った。お願いはしない。虫が良すぎるから。でも、伝えたい感謝の気持ちがあったから、それを伝えた。神有月。悪くなかった。

 それからケンタとオレは大病を患って入院中の友人の見舞いに大学病院へ。病とは闘わず、共に生きて必ず帰ってこい。奴が一時帰宅を許され、おかんの手料理を喰ったとき、「自分のおかんは料理の鉄人だと思った」っちゅー話にぐっと来たぜ。「ヒロシさん、明日のライヴでベーブルースみたいにホームラン打ってください」と奴が云うので、オレのホームランって何だろ、と考えたのだが。ままよ、いつだって全力だけど、明日はお前のために一曲歌うぜ。Life goes on!

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by 山口 洋  

そうだったのかLSD、奈良県奈良市にて

2009/10/08, 00:09 | 固定リンク

10月8日 木曜日 晴れ 

 台風一過。雨が小降りになった。こんなことで狂喜乱舞するのは、散歩に連れていってもらえないイヌとオレくらいかもしれん。とにかく、小雨が降るなか、美しい奈良の街を走った。平城京は一時間あれば、ぐるりと一周できる。春日大社の長い参道とか、奈良公園とか、興福寺を走るのは至福だった。溜まっていた心の澱のようなものがすべて抜け落ちていった。
 ところで、根性だけでは走ることには限界があると悟った。多分、基礎もクソもないまま無茶苦茶なことを積み重ねてきたのも身体で分かっていた。多分、このままだと何処にもたどり着けないまま身体が壊れる。ちゃんと学ぼう。そう決心して、その道の本を読んで、大笑いした。1ページ目にこう書いてあったのだ。「train, but don't strain (鍛えろ、でも無理はするな)」。根性だけで、ただがむしゃらに走ることがいかに意味がないのか、よーく分かった。LSD - long slow distance。まずはゆっくりと長い距離を走れるようになること。120分、それができるようになって、初めて次のステップに進むのだった。なるほど、そうなのか。何はともあれ、やっぱり時計は必要だ。前にも書いたけれど、オレはイージーライダー世代なので、時計を持っていない。オレは多分生まれて初めて自分のために時計を買った。スポーツ用品店で。ランナーのための時計を。それから膝と足の筋肉と骨格を記した本を手に入れて、アイシングとストレッチについて学んだ。オレの膝の痛みは「シンスプリント」と呼ばれていて、別名「初心者病」なんだと。あはは。まったくもう。

 奈良町にある蔵武D。その名のように古い蔵で出来ている。三年前に訪れたときは、オーディエンスの食事の注文にてんてこまいで、この先どうなることかと思ったけれど、すっかりこの地に根を張って、たくましく、ほがらかに前に進んでいた。こういうの、嬉しいねぇ。オレ、ここのスタッフ、みんな好きだし。住宅街ゆえ、小さな小さな音だけれど、オレは演奏を楽しんだ。小さな音で、モニターがなくても演奏できるミュージシャンは是非、行ってみんですか。愛のあるいい空間だよ。音に誘われて、観光で滞在している外人がふらっと入ってくるのも、ここならではだと思う。

 来年まで、どうか元気で。朝、走ったから疲れて一緒に飲めなかったけど。今度は必ず。本当にありがとう。オレ、奈良、大好きだよ。名残惜しいから、明日も早起きして、是非二月堂まで走ってみるよ。多謝&再見。

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by 山口 洋  

Let's change the world with MUSIC、そして大切なアナウンス

2009/10/07, 21:14 | 固定リンク

10月7日 水曜日 雨 

 昨日、音楽好きのS君からプリファブ・スプラウトの新作「Let's change the world with music」をプレゼントされた。オレは長い間、彼らが作る極上のポップミュージックの大ファンだったので、嬉しかった。最近、ある理由でレコード屋や本屋に立ち入ることができなくなったオレには、最高の贈り物だった。そういえば、名曲「cowboy dreams」が入っているアルバムが出て以来、新作が出ないなぁ、と思ってはいた。S君によると、中心人物Paddy McAloon (アイリッシュとスコテイッシュが混じったみたいなこの名前も最高なんだけど)は難病に冒され、特に耳と目の状態がひどく、自分のピアノの音を聞くことすら苦痛だという状態が続いているのだと。そっか、そうだったのか。でも、彼は長い年月をかけて、アルバムの制作をたった一人で始め、そして完成させた。自ら記したライナーによれば、ブライアン・ウィルソンがあの長いブランクの末、友人達の励ましと助力を受けて遂に完成させたアルバム「smile」にひどく励まされたのだと。
 ところで、オレは豊橋を出て、このアルバムを聞き始めた。確かに思うに任せない体で、しかも一人で作られたアルバムなので、オケの殆どが「打ち込み」で出来ていて、彼のプロデューサーとしての手腕も知っているオレとしては、最初は微妙な違和感を覚えたのも事実。けれど、聞き進むうちに、それを払拭して余りあるだけの、彼が音楽に込めた深い深い愛と感謝の気持ちが伝わってきて、途中から雨なのか涙なのか分からないものがこみ上げてきて、運転不能に。その音楽に「暗さ」や「苦悩」は一切なく、ただただ希望と愛と深い感謝に満ちていた。果たして、今の自分がこのような状態に陥ったとき、このような作品を残せるだろうか?多分、無理だ。音楽を通じて、ニンゲンが進むべき道を「豊かな」形で教えてもらった。おそらくオレにとっては今年最高のアルバム。ありがとう。

 ツアーに出てから、ずっと雨。走れないのはちょっとしんどい。煩悩やネガティヴな考えからシフトする唯一の方法だからして。でも、自然現象に逆らえるはずもなく、それを受け入れる方法を探している。

 さて、気分を換えて、と。これからバンドのツアーに向けて、いくつかのアナウンスがあります。まずは第一弾。

 今までも、ウチの物販隊長を中心に、いろんなグッズをライヴ会場で皆さんに手にしてもらってきたのですが、今回は30周年のツアーと云うこともあり、オーディエンスが求めているものは何なんだろう、と考えました。ウチの場合、絶対に携帯ストラップではなく、「音」だろう、と。幸いにして、この30年間に行ったほぼ全てのライヴの音源が残っています。そのうち、エポックメイキング的なライヴをシリーズ化してリリースしていくのはどうだろう、と。新しくファンになった人は昔の演奏を知らない訳だし、レコード会社に「廃盤」にされてしまったアルバムに入っている曲も、そういう形でなら、手にしてもらうことができる。これに関してはプレスやマスタリングを除いて、音源制作にあまりコストがかかっていない訳だから、手頃な価格で提供することができるし。「作品」というよりも「記録」と考え、修正や編集は行わず、ライヴ一本が全て入っていて楽しめるようになっている。このシリーズ、「official bootleg series」と名付けました。ライヴ会場のみの販売です。今回のツアーで2タイトル手にしてもらうことを考えていますが、第一弾は1995年12月20日に渋谷公会堂で行われたライヴです。収録曲、及びメンバーは以下の通り。ライヴ一本を完全に収録しているので、二枚組になります。クドいけど、そんなバンドだったので許してください。

OFFICIAL BOOTLEG SERIES #001
19951220
Live at 渋谷公会堂
¥2,500

Yamaguchi Hiroshi - Vocal and Guitars
Hosomi Sakana - Keyboards
Oshima Masatsugu - Drums
Onoda Kiyofumi - Bass
Misawa Izumi - Percussion

disc1
1. Winter Sun (5:13)
2. 何よりも僕らしく、何よりも君らしく (5:13)
3. 地平 (7:21)
4. Hey My Friend / Don't Die Young (6:11)
5. 風にハーモニカ (4:03)
6. 灯り (6:38)
7. 森を歩く (4:14)
8. Down (3:53)
9. 荒野の風 (6:10)
10. Tomorrow (7:25)
11. 新しい朝 (9:52)

disc2
1. オリオンへの道 (6:37)
2. 満月の夕 (7:28)
3. Brand New Day / Way (7:12)
4. No Fear (7:18)
5. パンダマン (in your soul) (12:33)
6. 明日のために靴を磨こう (6:18)
7. 千の夜 (5:49)
8. らっぱ (3:39)
9. 馬車は走る (11:39)


 バンドはこのライヴの後、ソニーと所属していた事務所を離れました。このライヴはデビューしてから5年間の集大成でもありました。今、こうして聞き返してみて、いろんな事を感じたのですが、敢えて感想を記すのは止めておきます。聞いてくれる人々のイメージを限定したくないので。

 それからこのライヴに参加してくれたミュージシャンの連絡先も探しています。事後承諾になって申し訳ないす。泉ちゃん、小野田さん、それに大島。もしこれを見かけたら、連絡ください。


追伸
 私、無事に奈良に到着しております。ご安心を。じゃ、明日は奈良で待っとるよ。

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by 山口 洋  

マスターがイカれてるから、愛知県豊橋市にて

2009/10/06, 03:06 | 固定リンク

10月6日 火曜日 雨 

 愛知県豊橋市。実は昨日のうちに、渋滞を乗り越えて入ってはいた。晩飯を求めて、街を歩くと「マッサージいかがですか」と何回も外国の女性に聞かれるし、次第に外出するのが億劫になった。あの言葉はいろんな意味でキツい。でも、多分、こんな街ではないはずだ。
 house of crazyを15年に渡って守ってきた松崎さんは、仕事に関しては本物のプロフェッショナルだ。いつだって腰は低いし、音楽に妥協はしない。年に一度、ニューオリンズのフェスに行って、多分自分を確かめ、音楽の力を再確認し、自分の街に戻ってくる。そんな人だ。満員の客席。でも、何だか、今日は大人しかった。でも、それでいいじゃん。オレは自分が感じていることを音楽に乗せて届けたつもりだ。伝わってるといいけど。
 ライヴを終えて。飲み屋で、松崎さんがハジけた。そのハジけ方がかつてみた事がないほど小市民的で、オレは好きだった。あなた。サイコーです。だから、house of crazyなのね。素敵すぎる。また来年、必ず戻ってくるんで、その話の続きを聞かせてください。オレも自分の物語をつむぎます。多謝&再見。

追伸
巨大な台風が来ていると。誤解を怖れずに書けば、オレは悪天候フェチなので、必ず奈良に行きます。無理のないところで遊びに来んしゃいね。突発的なことがあったら、ここでアナウンスしますから。

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by 山口 洋  

再生、山梨県都留市にて

2009/10/05, 11:37 | 固定リンク

10月5日 日曜日 曇り 

 (昨日の続き)

 初めてのレースに出た後、オレは山梨県都留市を目指した。強力な眠気が襲ってきて、身の危険を覚える。
 
 都留市は織物の街であったそうな。そして、高部座はその山中深くにある。古くは養蚕の里だったのだと。はっきり云ってここは高部君の家である。旧家、そして築100年を超えた建物を丁寧にリフォームしてある。でも、都会の家と異なるところは、巨大な「居間」でライヴを行えるところ。だいいち、一般の民家に座布団が70枚もありはしないし、彼は自前のPAさえ持っている。女性陣は来客すべてのために、心をこめて食事を用意し(絶品)、ビールは飲み放題。こんなところまでお客さんが来るはずがない、と思うのが普通だが、ところがどっこい、毎回満員のお客さんで、その巨大な「居間」は埋め尽くされる。おおよそ信じ難し。

 座長は毎回趣向を凝らして、地元の表現者とオレを組み合わせる。今回は北九州は若松出身の65歳の紙芝居士。聞けば、彼は池畑さんの高校の先輩であった。演目は「黄金バット」。その気迫と間合いはタダ者ではないと思っていたら、来年インド公演を控えているそうで。参った。続いて、高知出身の女性によるポエトリー・リーディング。その詩にオレは胸打たれたので、彼女の許可のもと、転載する。是非読まれたし。嗚呼、何故、この山中にいろんな才能が。最後に座長による弾き語り。その歌は去年より深みを増していて、おぬし苦労したな、と感じさせるものだった。
 ところで、ステージは高部君ちの、これまた「巨大玄関」に特設されているのであるが、地元の大工さんによって、去年よりも増設されていた。人んちの玄関で歌うと云うのは実にシュールな経験なのだが、まずは巨大居間のド真ん中にある仏壇に手を合わせ、その地とオーディエンスが育んでくれた空気にのっかって、筋肉痛、関節痛も忘れて音楽に没頭した。地元の人たち、愉しんでくれたかな?

 そんな山中に宴会をやる店もあるはずがなく、巨大玄関の裏には「奥の院」があって、これまた女性陣総出で作られた沢山の料理が並んでいた。そこには何故がインド人のナイスな青年パール君が居て、あっと云う間に意気投合。彼が求める日本女性の口説き方を教授した。役に立ったとは到底思えないけどね。間違いなく近いうちに高部座も「魔界」の仲間入りだね。

 何であれ、山梨県の山深い場所で、たくさんの心のこもった愛すべきニンゲンたちに会い、それぞれの再生について考えていた。ニンゲンは何度でもやり直すことができる。ありがとう。また戻ってくるからね。


「くじら」 by 小松久理子

私になかには
大きな大きな鯨がいます

私のなかを泳いでいるのです

故郷の高知を離れて
一人、山梨に来ることになった時
高知の海から一頭、連れてきたのです

鯨は普段、
私の中をゆったりと泳いでいるのですが
私が夕方に散歩をしていて
美しい夕焼けに出くわしたりすると
彼も私の体から夕焼け空へと
悠々と泳ぎ出てゆきます

金色の夕陽に 鯨の背中もきらきらと光り
黄色やオレンジや桃色に染まった雲と雲の間を
のびのびと気持ち良さそうに泳ぎ回るのです

そしてオレンジ色に熟れ切った太陽が
ぽとり,,,,と山の向こうに落ちると
鯨は一回潮を噴き、
静かに私の中に戻ってきてくれるのです

くじら、
あなたが私の中で 私と共にいてくれるとき
私は何とも言えない安心感に包まれて
料理をしたり
本を読んだり
飲み物を口にしたり
空を見上げたり 出来るのです

くじら
あなたが大きな尾びれで
私の中の細胞を震わせながら泳ぐとき
我が子の胎動を感じる妊婦のように
私は満ち足りた幸福感に包まれるのです

だからどうか あなたは
あなただけは 最後まで私の中に居てください

私が年老いて
ついに自分の足では歩けなくなり
故郷の海を二度と見ることが出来なくなっても
あなたが私の中で
変わらずゆったりと泳いでいてさえくれれば
私は故郷から遠く離れたこの土地で死ぬことも
それほど怖くは無くなるのです

家族の元から遠く離れたこの土地で
生きていくことを選んだ私

どうかあなただけは たゆたゆと
私の中を泳いで
いつも私の父や母、妹や家族や故郷の海や川や山や風の
代わりでいて下さい

どうかいつも
私と共にいてください



追伸
久理子ちゃん。大切なものは離れても、この世から居なくなっても、君の心からは失われない。絶対に。

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by 山口 洋  

完走、人々の力

2009/10/04, 19:38 | 固定リンク

10月4日 日曜日 晴れ 

 人生初レース。朝6時に起きて、10キロレースの会場へ行く。野郎共4人で参戦。しかし、あまりの人の多さにびっくりする。こりゃ1000人は軽く超えてるな。世のマラソン人口ってすごいのね。
 実のところ、オレの状態はと云えば、訳も分からず短期間にがむしゃらに練習したせいで、両親指はうっ血して微妙に緑に変色してるし、膝は一歩間違えたら、コキっといきそうな状態。おまけに今日は走った後移動して、ライヴだから無茶はできない。でも、ゼッケンを手渡された時点で何だか燃えるものがある。スタートした直後にS君は視界から消えた。速すぎる。サーフィンの先生Y君もすぐに見えなくなった。ああ、そして近所のヨシ君までも。オレ、ビリじゃん。ここはオレがいつも走らせてもらってるコースなので、云わばホームなのだけれど、こんなに沢山の人々と走った経験がないので、自分のペースがつかめない。遅い人と速い人がダンゴ状態で入り乱れていて、ペースを急に変えさせられる度に、膝やふくらはぎにピキっとヤバそうな痛みが走る。それもどうにか落ち着いてきて、折り返し地点に近づき、S君とすれちがった。こりゃ無理だわ。到底追いつけない。Y君、うーん無理かも。でもヨシ君。その差、500メートルだな。何とかなるかも。人間は不思議な生き物で、目標を見つけると俄然やる気が湧いてくる。このくらいの無理なら今日だって可能かも。追われる者より、追いかける方が随分楽なんだね、たぶん。途中で、何で金を払ってまでこんなに苦しい想いをしてるんだろう、とか、人は何故野の花のように生きられないんだろう、とか意味不明なことを考えたけれど、沿道の人々の声援には本当に励まされた。共に走っている人たちの顔もオレと同じように苦しそうだし。人間ってバカだなぁ、とか、すごい生き物だなぁ、とか。いろいろ。
 仮想敵(ごめん)ヨシ君のおかげで、折り返してからの気分は随分楽になった。8キロあたりで、ようやくヨシ君を抜いて、ゴール。65着、記録は55分。しんどかったけど、己と闘うのは愉しかった。今回、野郎共は全員1時間を切ったので、次はハーフマラソンを目指すことにする。来年の3月にフルマラソンを本当に走ることができたら、その時、初めて自分を褒めてやろうと思う。まだまだ道は遠いよ。メゲないけどね。
 
 もともとは兄貴分に云われた一言がきっかけだった。「お前の光を取り戻せ。走れ」。それから数ヶ月、晴れの日も雨の日も、バカみたいに、ただがむしゃらに走ってきた。もちろん今からマラソン選手になれる訳もなく、自分の光が今どうなっているのかも分からない。ただ、諦めない強さと、前を向いて、見えないものを信じて進む力。それは身に付いてきたと思う。i believe in you。オレはメゲないぜ。一歩づつだけど、必ずたどり着いてみせる。

 家に帰ってシャワーを浴び、オレは山梨県都留市を目指した。眠い。でも、とってもいい空間だったから、詳細は明日にでも。

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by 山口 洋  

the whole of the moon

2009/10/03, 06:26 | 固定リンク

10月3日 土曜日 曇り 

 満月の日に。

 やれることは全部やった。後は野となれ、山となれ。頼むぜ、オレの足。

 明日は朝から人生初レースに出て、それからツアーに出ます。山梨、豊橋、奈良、出雲、岡山。多分、今年のソロツアーの締めくくりになると思います。気軽に遊びにきてください。じゃ、行ってきます。

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by 山口 洋  

ancient futures

2009/10/02, 20:14 | 固定リンク

10月2日 金曜日 雨 

 「ancient futures」。その美しい響きを反芻しながら、雨の道を走っていた。自分の意訳で云えば、「どうにもならないことを知る」。ポジティヴな意味で。

 「オリオンへの道」と云う歌はあまり歌わなかった。随分苦労して書いた覚えがあるが、歌っていて、その風景についていけないことの方が多かった。でも最近、ある人物に勧められて、歌ってみて、その曲の方が自分の人生よりずっと先を歩いていたことに気づいて驚いた。ファンタジーとリアリティーを伴って、短編映画の監督のような気持ちで毎回歌えるのだ。その世界に自分が励まされている。不思議だと思う。ボールを遠くに投げて、14年かかって、自分で追いついたようなヘンな感覚。人はオレのことをドリーマーだとか、子供だとか、乙女だとか云うのだけれど、人生のチャプター2を支える推進力は「見えないものを信じる力」だと思う。偶然ではなく、すべてが必然なのだと思う。


オリオンへの道

ラヴ。新しい青い朝が
山のむこうにあふれてくる
ラヴ。君を遠く離れて
僕は夜明けの道をめざす

けれどラヴ。
おなじ言葉をくりかえし

僕等は分かりあえた事がない

けれどラヴ。
どれだけの山や河を
越えて行けばいいのだろう

汗を流し 胸を焦がし
何度でも僕はやりなおす
もう一度 いつものように
夜明けのオリオンを探している

ラヴ。浅い眠りの中で

本当の君に出会えた

ラヴ。君は相変わらず美しく
僕はひどく年をとっていた

けれどラヴ。
風向きは少しずつ変わる
全てをここに捨てることはない
けれどラヴ。
君を遠く離れ

ひとつずつ 近づいてゆく

汗を流し 腹をすかし
何度でも僕はやりなおす

いつものように 今日も君の

夜明けにオリオンは輝いているだろうか

ラヴ。このあふれる夜明けに
君の名前を抱きしめてみる
ラヴ。限りなくおだやかに
また一日を始めてみる

けれどラヴ。
僕等の心若く

道は果てしなく遠い

しずかに世界を見つめ

ひとつずつ 近づいてゆく

汗を流し 腹をすかし

何度でも僕はやりなおす

もう一度 いつの日にか
夜明けのオリオンを越えていくために

君に出会うために

COPYRIGHT BY breast.m.p.

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by 山口 洋  

懐かしき未来、吉祥寺にて

2009/10/01, 03:19 | 固定リンク

10月1日 木曜日 曇り 

 オレは今日、気分がいい。ライヴを終えて、今帰ってきた。

 仕事場の庭木が大変なことになっていた。ある植物は隣の家の柵に絡まり、ある植物は巨大な実をつけ、もはやオレにはどうしようもなかった。世間体なんて気にしないけれど、この街の調和を乱していることだけは間違いなかった。ある日、ポストに手書きのビラが投入され、「庭木のことなら、お任せください。満足できない仕事をした場合、お代は頂きません」と記してあった。何となく、ピンと来たので、電話をしたら、若き九州人が独立してやっている小さな造園業者だった。オヌシ、いい目だ。気に入った。ちとギャラは高いと思ったが、彼はビタ一文も負けようとしなかった。何だか気骨のある男だ。そして、今日オレはライヴなのだ。先に金を払って、オレは会場を目指した。で、さっき帰ってきて、奴の仕事を観て、驚いた。素晴らしいにも程があった。完璧だ。ちょっとカンドーを覚えた。プロの仕事だ。すこぶる気分がいい。目が覚めるような仕事。明日、ありがとうと電話をしようと思う。

 スターパインズに行く前に、本を読んでいた。そこにはこんな言葉があった。「retrofuturism - 懐かしき未来」。ふーむ。そしてアインシュタインの言葉はこう続く。「ある問題を引き起こしたのと同じマインドセットのままで、その問題を解決することは出来ない」。ふーむ。自分が逡巡していることを、ここまで言語化されると、もはや言葉なし。最近、こうも思うのだ。言葉なんか覚えるんじゃなかった、と。そんなもの、なければないで、コミュニケートは可能だったに違いない。あの一言を言い過ぎて、どれだけの人間を傷つけたのか。あの一言でオレはどれだけ傷ついたのか、とか。それを表現するのに、また言葉を用いているオレ。嗚呼、アイロニック。いい時の自分が発しているのは言葉でも、それは言葉ではない。叫びでもないし、それは勝手に出てくる祝詞のようなものだ。走っているとき、あまりの苦しさに出てくる「言葉」がある。それは聞き返したくはないけれど、きっとリアルな自分への祝詞だ。

 考えるのは止めた。スターパインズのスタッフは今日も素晴らしかった。ギターのタッチの仔細なところまで、表現できる環境で演奏できるのはミュージシャンにとっては幸福以外のなにものでもない。楽しんでくれたかい?オレは幸福だったよ。来てくれて、ありがとう。音楽の力で、みんなの日々が少しだけ明るくなりますように。「i believe in you」。多謝&再見。

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by 山口 洋  
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