日別アーカイブ: 2026年5月1日

父のギター

5月1日 金曜日 雨 父親は状況に合わせて複数の字体を使い分けることができる人でした。小さな頃からそれに憧れてました。フォーマルなときは非のうちどころがない美しい字を、フレンドリーな局面ではちょっとくだける。母親に宛てたものは、角がなくて優しい。外国語に至ってはあなたどこの国の人ですか、みたいな。 そこはかとない知性。未だに。僕に向けて書かれたものは愛しかない。 妙にスピリットの深いところで理解しあっていたので、アル中だった(そうなる理由も幼い僕には理解できた)彼をなんとか止めようと、小学校低学年の僕が説教しつつ、また飲んで、やらかして、僕に謝罪する文書が額に入って残っています。いい思い出。 そんなわけで、僕も自分の字を書こうと、幼い頃から努力したんだけれど、ひとつの字体しかモノにできず。おまけにオリジナリティーに走りすぎて、最近は自分のメモを判読できないことがしょっちゅう。笑。これじゃ、字の意味がない。 唯一、父親に勝てた才能が音楽で、14歳の誕生日に親友からギターを教えてもらって、翌日父親のギターをかきならしていたら、「お前、いつからギター始めたんんだ?」。「昨日だよ」、「嘘つけ!」。みたいな。 それまで数十年弾いていたはずの彼をたぶん、一週間くらいで追い越した。キャッチボールも僕の方が速くなった瞬間にやめた人なので、焦ってるのが手に取るようにわかった。僕は福岡の岩田屋って百貨店でモーリスW20って2万円のギターを買ってもらった。あとにも先にも買ってもらったギターはこれ一本。起きてる間はずっと弾いてるから、とんでもないスピードでうまくなる。さらに焦る父親。ついには「オレの(父親の)ギターがボロいから上手くならない」って意味不明なことを言い出して、財力に任せて、町に一軒だけある楽器屋でいちばん高いガットギターを買ってきた。 そういうとこ、かわいい。笑。 18のときに、酔って2台の車に轢かれて彼は死にました。そして、オレにはそのギターが遺された。ガーディアンエンジェルって曲で描いた、そのギター。 福岡での貧乏時代。 妙に人気があるけど、カネはない。ほとんどヒモみたいな時期もありました。父親のギターも質屋に入れてしまった。そして、取り返す資力もなく流してしまった。さすがに落ち込みました。 デビューが決まって東京に行く日。ガールフレンドが「そこの押し入れを開けてみて」と。そこには父親のギターがありました。嗚呼。なんというか、言葉になりません。 僕が持っているガットギターはこれ一本だけ。数年前、神リペアマンに修理してもらって完璧な状態を保っています。生涯、これだけでいい。 とある曲を弾くために、このギターが必要になったのです。だから、最近毎日弾いています。ここに書いたストーリーも相まって、実に味わい深い音がします。 受け継いだのはこのギターと万年筆だけ。でも、それで十分。 その曲を咀嚼できたなら、このギターでみんなに届けにいこうと思うのです。   ついしん ともだちが教えてくれたんだけど、デビット・クロスビーのドキュメント。なかなかに壮絶。人生の幕をどう閉じるのか。最近紹介したリンゴ・スターとは対極の生き方。 陰鬱。でも、嫌いじゃない。 「少なくとも僕には正直に語る勇気がある」。その言葉がすべて。無料で視聴できます。GW中に時間のある方はぜひ。 かなりぐっときました。 どう死にたいかってことは、どう生きるかってことと同義です。リンゴの新譜と合わせてどうぞ。きっと、その中間にみんなの理想があると思うから。        

カテゴリー: 未分類 | 5件のコメント