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師匠

6月8日 月曜日 雨 師匠の映画が公開される。あと一回の公開なんだけど、オレは翌早朝からツアー。逡巡したけど、行けない。残念だけれど、仕方がない。     オレがプロデュースされたのは佐野元春さんと、彼ドーナル・ラニーだけ。 そこで学んだことは計り知れない。 溢れるくらい大きな愛で、なにもかも包み隠さず伝えてくれた。多すぎて、デカすぎて持ちきれなかった。ひとことで言えば、「愛」を伝授されたんだと思う。ある日、彼はオレにこう言った。 「今、オレがヒロシにそうしているように、ヒロシのところには 10年後には若いやつがやってくる。でも、それを決して拒んじゃいけない。 どうしてって、学んでいるのはオレの方だからだよ。そうやって 音楽は受け継がれていくんだ」って。 その言葉を忘れたことはない。 もうひとつ、レコード会社をクビになって落ち込んでいたら、珍しく怒られた。いわく 「いいか、契約ってものはこっちがしてやる類のもので、 それがないからって、落ち込む理由なんかどこにもない」って。 その通りだった。 ダブリンの彼の家でマッシュポテトの作り方を教えてくれたことがある。アイルランドでジャガイモはタダみたいな値段だけれど、スーパーでドーナルはイモを吟味し続け(オレには違いがわからない)、マッシャーはこれじゃなきゃダメなんだ!とお気に入りのマッシャーをプレゼントしてくれ、果たして出来上がったマッシュポテトは人生最高レベルのものだった。料理のプロセスがドナルド・フェイゲンみたいに緻密でおかしかった。 ドーナルにブズーキを売ってる楽器屋を教えてもらって、ダブリンで手に入れて持って帰った。それを元にヤイリで国産の第一号機が作られ(オレが弾いてる)、量産されることになった。今や、ドーナルもヤイリのものを使ってる。そういう受け継がれ方、たいせつにしたいと、今でも思う。今でも思う、アゲイン。 彼(ら)が60年代の後半から苦闘とともに巻き起こしてくれた旋風のようなもの。それがなければ、今自分がここに立っているかどうかも怪しい。 だから感謝しかない。元気に音楽を紡いでほしい。

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