トミー

8月7日 金曜日 晴れ

ともだちのトミーが遠くからやってきてくれたから飲んだ。飲み方も最近変わってきて、夜を徹してなんてことはもうしない。17時、開店とともに暖簾をくぐり、早ければ19時、ロスタイムが長くても21時には看板。早い話がじいちゃん化。長い経験から、この方が翌日を無駄にしないし、身体へのダメージが少ない。

トミーは来年還暦。ってことは定年を迎える。どうしてともだちなのかもう忘れたけど、父親の職場が同じという稀有な間柄。そういえば、僕にギターを教えてくれた画家の向井も父親の職場が同じ。これってただの偶然じゃないかもね。

トミーは誰もが知る大会社において、誰もが知る報道番組をずっと作ってきた。僕も尊敬する故人のジャーナリストのスピリットとトラディションを受け継いで。ある意味「報道の」と言われたその会社の最後の砦を身体を張って死守していたんだと思う。

でもトミー、もういいんじゃないかな。

巨大な組織じゃなきゃできないことがある。その中でもう十分すぎるほどやってきたと思う。僕はテレビを見ないから、ツアー中だけホテルのテレビで密かに見てた。よく頑張ったよ。

一方、僕はすべての組織を離脱した。だって向いてないんだもん(子供か)。レコード会社の社屋に入っただけでお腹が痛くなる。たぶん、その組織の中にいたなら今頃生きてない。だから個人として生きてきた。死して尸拾うものなし。でも、その保証のなさが背中を伸ばしてくれたんだと思う。

そういえば、長谷川さんとも3人でよく飲んだよね。プライベートなこと、突き詰めるとまれにパブリックなことに突き当たることがあるって。彼が作った言葉だけど「プライパブリック」。僕らはいつもそこを違うpoint of viewで見つめてた気がする。

トミーの新しいチャプター。組織に揉まれた人間だからできる「個」からの発信。きっと自分でもそう思ってるんだろうけど。と思ったとき彼から「ブン屋」感が抜けていることに気づいた。ある種の爽快さを身につけていた。

人はいつだって次のチャプターに行けるはずなんだよね。そういうことをトミーから教えてもらったんだと思う。いい夜だったな。ありがとう。

カウンターだけの居酒屋って、人生が交錯する。席が少ないと客にも責任が生じる。飲み方が汚い奴が混じるとすぐに空気が悪化する。昨日のトミーは芳香剤みたいだった。笑。明日とある人物に会うんだよって伝えたら、トミーが41年前、予備校生時代にその人物から受け取ったハガキを見せてくれた。かように人生は円環を描く。おもしろいね。

そういえば、トミーにいつもの店を案内するために「食べログ」ってやつで住所を送った。僕はその店の常連だけど、もちろん「食べログ」なんて見たこともない。店主もぜったいに見ないってさ。で、初めて読んだんだけど、よくもまぁ、一回しか行ったことのない店のことをここまで書けるもんだと、ある種の感嘆。これもひとつの承認欲求。知らない町で知らない店の暖簾をくぐる緊張感がいいんじゃん。それを繰り返して、目が肥えてくるんじゃん。

ナビと同じで、こういうガイドが人をダメにするんだよ。ってか、怖いな。ネット。店主にとっては公開処刑みたいなもんだよ。

トミーのネットにおける公開処刑っぷりもほんとうにすごかったから。僕は僕で裁かれてきたけどさ。でも、60年も晒されると抜けるよね。抜けて爽快感を身につけるのってすごいよ。笑。

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トミー への1件のコメント

  1. 平山秀朋 より:

    素敵なお話を有難うございます。何度もうなづきながら読みました。

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