暴風雪とジョニ・ミッチェル

2010/12/24, 19:42 | 固定リンク

12月24日 金曜日 

 僕らの行き先には「暴風雪」と云う聞いたことのない文字が踊っていた。それを見て胸を踊らせるのは確かにヘンタイだとは思う。
 山形から弘前まで。道中の85%は吹雪だった。僕は運転が嫌いじゃないし、苦手でもない。ただし、雪道はほぼ素人に近い。ずっと吹雪の中を走っていると、何だかこの世とは思えなくなってくる。「何だか、すごいことになってるよ」。そう話しかけようとしても、おおはた先生(別名、うちのオカピーちゃん)はほぼ即身仏のように眠っているのだった。確かに彼は解脱していた。目を覚ました隙に「この暴風雪に似合う音楽は何だろうね?」と聞いたなら、「ジョニ・ミッチェルじゃないすか」と彼は応えた。音楽が風景と相まって、まるで映画のようだった。「すごいね」、そう話しかけようとしたら、既に彼は気絶していた。ぐはは。寝る子は育つ。

 日が暮れて、ようやく弘前にたどり着いた。正直云って、怖かったが、一般道の方がもっと怖かった。カキンコキンに凍っていたからだ。自慢のスタッドレスも無意味に巨大な馬力もまったく意味なし。どうにかこうにか弘前の魔界「asylum(強制収容所)」にたどり着いて、ほぼ気絶。僕らは北をナメていた。ナメきっていた。軽い後悔。魔界には主のサイトー・ヒロシが待っていてくれて、男3匹の酸っぱいにも程があるクリスマスイヴを過ごした。悪くない、悪くないんだってば。そういえば、去年のイヴも僕はおおはた君と過ごしていたのだった。よーし、ホモ説を大々的に流布しよう。ヒロシと雄一の仲の良さに嫉妬するサイトー・ヒロシ。うーん、史上最悪の三角関係。

キャプション
1. 思えばこの頃はまだ写真を撮る余裕があった。北に進むにつれて、視界はほぼゼロになっていく。そんな道を100キロで走るのはほぼ自殺行為に等しい。特にトラックの後ろは舞い上がる雪で何も見えなくなる。道がどうなっているのか全く不明なのだ。カーナビで長いトンネルを見つけ出し、一気にブチ抜く。かなりデンジャラスな行程だったが、雄一先生は最後まで即身仏を貫くのだった。大物だ。
2. 史上最悪の三角関係。
3. サイトー・ヒロシは画家の奈良さんの親友である。よって、魔界には彼の絵が飾られている。彼の絵を紫煙で汚すという暴挙がこの店ではまかり通っている。

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by 山口 洋