a musical history

2005/09/30, 21:38 | 固定リンク

9月30日 金曜日 晴れ 

何度も何度も「これで終わり」と思いながらも、DVD制作の道は終わっていなかった。でも、今日、追加された曲にマスタリングを施して、今度こそ、終わりだ。

俺には音楽的嗜好が共通してる友人が沢山いて、ゴキゲンな新譜がリリースされると、必ず知らせてくれる。ありがたき存在の数々。打率はほぼ10割に近いからして、本当に感謝してる。きっと、あまりの素晴らしさに、独り占めしてるのは「音楽に失礼だ」と思ってしまう、音楽ファンの性なんだろうけど。
 今日は若手のIからメール。内容があまりに熱かったから、早速、ザ・バンドのボックス・セットやその他もろもろを買いに行った。このボックス。ロビー・ロバートソンが能動的に関わっているからして、総合的な仕上がりが素晴らしい。マスタリングはもちろんのこと、ブックレットも殆ど洋書の世界だし、通常おまけっぽいDVDも、かのビッグ・ピンクでの演奏シーンを含め、無駄なものが一切ありません。ザ・バンドの豊潤な音世界が余すところなく展開されてます。全てのアルバムを穴が開くくらい聴いてる連中も「おーーーっ」と楽しめるところがすごい。
 カナダから流れてきた者、インディアンの血を引くもの、どっぷりとルーツ・ミュージックに浸っているもの、静かなる男、お調子者、マッド・サイエンティスト、エトセトラ。それらが複雑に絡み合った上で、歴史や音楽やメンバーと格闘して、ハードなツアーを乗り越えて、あれらの音楽が奏でられてるってところが、まさにミラクルとしか言いようがない。
 一昔前のミュージシャンは本当に個性が豊かで、ロビーの指にはピックと鉄の爪(俺は何度もトライしたけど、あれじゃ弾けない)が同居してるし、リック・ダンコはあんなリズムの取り方でどうやってグルーヴを出してるのか意味不明だし、レヴォン・ヘルムのドラムは誰よりも歌ってるし、リチャード・マニュエルにはいつだって哀愁が漂ってるし、ガース・ハドソンのクールな壊れっぷりはロバート・クワイン並みだし、導師もメソッドも教師もなく、我が道を行くことの凄みを充分に堪能した。ありがと。

by 山口 洋