東京タワー

2005/09/20, 00:00 | 固定リンク

昨夜遅く、ネットで見かけたリリー・フランキーさんの「東京タワー」と云う本が無性に読みたくなった。結局、朝まで曲を書いていたので、渋谷のブック・ファーストが開くまで待って、寝るのを止めて、読み始めた。
読み終わったのが午後1時半。俺は3時間に渡って、爆笑と嗚咽を交互に繰り返しながら読んだ。でも涙は止まらなかった。1963年、福岡生まれ。ほぼ同じような環境(厳密には福岡と北九州、それに筑豊ってとこはかなり気質が異なるんだけど)で生まれ育ち、東京に出てきて、同じように訳分からん日々を過ごし、つい最近同じような状況で母親を亡くした俺にとっては、たまらない内容だった。実のところ、俺もいつか「それ」について書こうと思っていた。でも、もういい。ここに美しい本があるのだから。
何処かに書いたけれど、オースターの言葉を借りれば、「人間の落下を止めるのは愛だけ」だと思う。それは普遍だし、太古の昔からそれは脈々を繰り返されてきたんだと思う。でもこの美しい本には、今を生きる者の言葉として、それが見事に描かれている。「何かを永遠に失う事の意味」。それは順等に事が運べば、誰しもが避けられないし、いつか必ずその時はやってくる。癒してくれるのは結局のところ、時間だけのような気もする。それでも朝の光の中に、時に宙空に、誰かの存在を感じることがある。ときどき語りかけてみる。その時間は決して悪いものではない。
東京タワー。いつも気にかけている割には、上京以来、一度も登ったことがない。行ってみよう、と思う。リリーさん。書いてくれてありがとう。読み終わった後、心は台風一過の秋の空のように、妙に晴れやかでした。

by 山口 洋