(no title)

2005/09/15, 00:00 | 固定リンク

事のいきさつはともかく。ソニーの法務ってとこに行った。前に世話になっていた事務所の社長氏、音楽出版社の社長氏、そしてうちのチビと共に。ヒートウェイヴは90年あたりから約5年間、エピック・ソニーとの契約の元、アルバムを5枚発表した。しかし、我々のアルバムは廃盤の憂き目に遭っていた。その権利はレコード会社が保有している。我々の手が全く及ばないところにある。新しくファンになった人々が昔の音源を聴きたいと思っても、それを聴くことが(一部を除いて)叶わない状況にある。けれど時代は変わった。配信によって、それを耳にする事が出来る。レコード会社も大きな出費やリスクを負うことなく(サーバーのハードディスクの容量とある程度の人件費を除いて)、言わば「過去の遺産」によって、収入を得ることができる。もちろん我々も。ならば、それを残さず公開して欲しい。あるいはitunes music storeに門戸を開いて欲しい(今現在ソニーはそこに参加していない)。それに関しては、リリースした時と違って、制作上のコストのかかり方が全く異なる訳だから、新たに違う条件で契約を結んで欲しい。そんな申し入れをしに行った。
ヒドく疲れる会話だったし、俺が云いたい事を云えたかどうかも、甚だ疑わしい。資本主義の世の中で生きているのだから、企業の論理も理解できない訳じゃない。ただ、ディランが随分前に云ったように、「時代は変わる」。黒船来襲による、音楽業界の構造改革の嵐の中で、ミュージシャンがいつも音楽バカでいる訳にはいかない時代だと俺は思う。
じゃあ、お前の考えはどうなんだ?と。
音楽を作ることを農業に例えるなら、我々は精魂込めて、美味い野菜を作った。多少アクが強くて、曲がってるけど、これが野菜だろって俺たちが思うものを作った。俺たちが喰いたいものを作った。すまん、農薬もほんの少しだけ使った。それを販売してる。薄利多売じゃないからして、スーパーのそれよりは少し高いかもしれん。それを届けるためならネットでも何でも利用する。さあ、召し上がれ。君たちの晩ご飯がちょっとでも幸福なものになったら、俺たちは嬉しい。そしてその収入で俺たちは生き、また畑を耕す。大事な事は、俺たちは野菜を作るのがとんでもなく好きだってことと、ある種の人間はそれを喰わずして生きていけないってことだと俺は思う。

by 山口 洋