悪魔の誘い

2005/09/01, 00:00 | 固定リンク

今年に入ってから、多種多様の音楽に携わっていたことは、確かに俺にもいろんなものをもたらしてくれた。でも、あからさまに俺は疲れていた。身体にはガタが来ていた。
よし、自分の道を行くぞ、と決めたはいいものの、毎日目の前にある事に全力を尽くすことで精一杯で、予定は全て未定だった。何なんだ、俺の人生。こんなに無計画でいいのか。もう少しだけ鋭気を養ったら、創作活動に向かおうと思う。
今日は久しぶりにソファーで本を読んでいた。そんな時間を過ごしたのは久しぶりだった。活字が脳味噌に染み渡っていく。至福。そんな時に悪魔の電話が鳴った。あの酒癖の悪いTからだった。アーメン、哀れな俺たちはまた夜の街に吸い込まれて、あーでもない、こーでもないと語り合うハメになった。でも、奴の脳味噌に渦巻いているアイデアは素晴らしいものだったので、俺も出来る限りの協力をしようと思った。
思うに、俺たちのジェネレーションが育った環境はヒドかった。いや、それはもうヒドいもんだった。勉強が出来ない奴は「落ちこぼれ」るしかなくて、教師には「人生失格の烙印」を押されたのだった。ティーン・エイジャーにして早々と「負け犬」になる。国立の大学に入るためには「共通一次試験」っつーのがあって、5教科7科目まんべんなく出来なければならなかった。俺に云わせてもらえば、まんべんなく何かが出来るってことは何も出来ないってことである。その手の人間しか国家は必要としてないって事なのだ。だって、若いんだから何かひとつの事に夢中になってれば、それで充分じゃないか。いろんな事はその道程の中で見つけていけばいいじゃねーか。俺は英語の成績だけは素晴らしく良かったけど、初めて外国に行った時、チーズバーガーが買えなかった。そんな教育に意味があるとは思えないんだよね。とにかくそんな人間にはなりたくなかったから、俺は試験の日に雪合戦をして遊んでいたら、見事に2次試験を受ける大学がなかった。実のところ、俺の父親はその試験の問題を作ったりする立場に居たから、「こんな問題が解ける事に意味あんのかよ?」と聞いたら、彼は「ない」と言い切った。俺はそんな親父が好きだった。
俺には信じるものがあった。それは音楽だった。だから、廻りがガシガシ勉学にいそしんでいて、俺がどんどん落ちこぼれていっても何ともなかった。じゃ、信じるもの。例えばそれが麻原某だった場合どうなるんだい?それは信じてるものが違うって事以外は何も変わらない気がするんだ、俺は。人間はそんなに強い生き物じゃないんだ。単に宗教って意味じゃなくて、何かを信じてなきゃ生きられないんだ。書かなくても分かると思うけど、俺はオウムがやったことを容認してる訳じゃないからね。
Tの説によると、それは先の大戦がどう語り継がれたかにかかってる、と。俺もそう思うんだ。
1. 体験があまりに辛かったから語らなかった
2. 体験を美化して伝えるしかなかった
3. 体験をありのまま伝えた
語り合ったのは1と2、あるいは「失われていく記憶」について。これ以上書くと、とんでもなく長い話になるから、今日はここまで。
人間として一番大事なことは「honest」であることだと思う。その態度を貫くにはとんでもなく忍耐と勇気を必要とする。でも、俺はそうありたいと強く思う。

今日Tに話したんだけど、某クリントンが某モニカ・ルインスキーとホワイトハウスでの「不適切な関係」を認めた。でもさ、「不適切な関係」って何だよ?「すいません。モニカがあまりに魅力的だったんで、つ、つい*******やってしまいました」。って云えばいいのに。結果、彼が失職したとしても、歴史が彼をいつか、とってもヒューマンな大統領として認める日が来ると、俺は思うんだけどね。
Honest we do!

by 山口 洋  
- end -