Dirty old man

2005/11/14, 22:25 | 固定リンク

11月14日 月曜日 晴れ 

 まったく大した魂だよ。
 都会に戻り、俺の友人の中でも最年長者であるS氏からの手紙を読んだ。彼は70ウン歳、四国の某県在住で、英語学者で、アウトサイダーでもある。ひょんな縁でかれこれ10年以上、便りを交わしてきた。一方的に無数のインスピレーションをもらってきたんだけれど、今回のはちとばかし衝撃的だった。そういえば、しばらく便りが途絶えてはいたけれど。
 内容はこうだ。
 4月8日に救急車で病院に搬送され、翌日に右脚ひざ下約20cm以下を切断。直接の原因は靴ずれによる傷にバイ菌が入り、組織が壊死したためだが、間接的原因は長年に渡る糖尿病。その後、過酷なリハビリを経て11月中旬に退院予定。これが極秘裏に敢行された理由は、お見舞いに関する諸々に対応しきれないと判断したから。S氏は痛みに苦しむこともなく、また療養生活を味わい尽くし、むしろ楽しんでいた模様。その間に観察したことなど全てが次回作品に活かされる予定。しかし、某県の文化賞を受賞。それは某県では最高の賞で、文化の日にご夫婦揃って車椅子で表彰式に出席する予定。
 全くもう。メゲないっつーか、何っつーか。そんな彼に「大丈夫ですか?」なんて書ける訳もなく。「ただひとこと。そのメゲない魂に敬服」、と書き送った。我が身に起きた事。どこどこまでもポジティヴに受け入れると、そこから巻き起こる結果はかなり違ったものになる。とは云え、云うは易く、行うは書くまでもなく。同封されていた写真には我がヒートウェイヴのT-シャツを着て、うら若き美女と共ににっこり微笑むS氏の姿。か、勝てねぇ。達観と云うよりは、その瞳の中にはエロスを伴った生命力を漂わせているのであった。うーん。感服。人生は深い。そんな素晴らしき彼に、俺の机の上に咲いている、季節はずれのフリージアを贈ろうと思う。ブラボー。

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by 山口 洋