Dream harder

2006/01/12, 23:35 | 固定リンク

1月12日 木曜日 晴れ 

 1月12日の朝7時にこれを書いています。もちろんこんな時間に起きた訳ではありません。楽しいけれど、過酷な作業を終えて、みんなとさんざ飲んで話して、いつの間にか朝陽が昇ってきました。レコーディング中は気が高ぶって、ほとんど仮眠しかできない(僕の寝床はソファーです)ので、思いついた事を書き留めておこうと、コンピュータに向かっているところです。
 このスタジオ。実は商業用のスタジオではありません。某高原にある、歯医者さんのプライベート・スタジオなのです。歯医者さんの趣味(と云う領域は遥かに越えてるけど)が高じて、2階がスタジオになっているのです。でも、音楽を愛している人のスペースは所謂レコーディング・スタジオとは違う、味わいのある音がします。昼間はもちろん歯科医院として営業しています。それなのに、爆音を出す我々を受け入れてくれたことにまず深く感謝しています。都会では100%あり得ないことです。こんな人、世の中に居るんだ、と思っていたら、彼の所蔵CDの中に沢山のアイリッシュのアルバムを見つけました。何だか、何処かで繋がってるなーと、勝手にひとりごちています。
 おそらく、我々のレコーディングは超がつくくらいアナーキーなものです。いろんなアイデアがあって、それらを全部試してみます。いつもは専門職である録音エンジニアも不在で、ザ・バンドがビッグピンクでやっていたように、全部自分たちで考えてマイクを立て、録音しているのですが、今回はスケジュールがあまりにタイトであるため、エンジニア氏が来てくれています。実は34歳の彼は、我々と仕事をするのが初めてなのですが、どんな状況でも嫌な顔ひとつせず、無茶なリクエストを全て試してくれます。無茶なアイデアと云うものは、殆どが結果的に却下される場合が多いのですが、その中に予想だにしなかった、効果を上げるものもあります。だから、その努力を怠っていては人と違う音は出せないのです。こんな風に徒労を苦労と思わないエンジニアと出会えたことも嬉しく思っています。
 今回、新しい曲の冒険をしに来たのですが、同時に今のバンドで(特にソニー時代の)以前の曲も今の解釈で録音しています。何故なら、それらの楽曲は聞きたいと思う人が居ても、聞くことが難しい状況だったりするからです。昨夜は池畑兄のものすごいドラムを目の当たりにしました。いや、何と云うか、凄まじい光景でした。何だか、ものスゴイものが出来上がりつつあります。日程は限られているのに、アイデアは無尽蔵にあります。瞬発的に、大胆に、けれど繊細に。ヒートウェイヴが持つポテンシャルが沢山記録されていきます。とんでもなく大変な作業でありますが、多くの人たちの創造力がそこに記録されていくことに興奮している毎日です。

 と、ここまで書いて爆死。

 さて、午後11時です。ここでの作業、無事終了しました。繊細な曲、切ない曲、考えられないほどアホな曲、その他もろもろ。何ひとつ完成しているものはありませんが、素晴らしき冒険の日々でした。いや、まじで。これから東京に戻り、続きの作業に取りかかります。楽しみにしといて下さい。某高原、最後の晩餐は渡辺圭一家に代々伝わる「水炊き」でした。リズム隊の合作による飯は美味かったっす。
 お世話になった方々、声援をくれた皆さんに心から礼を云います。ありがとう。


 

img06010009_1img06010009_2
by 山口 洋