yellow moon

2006/05/04, 23:49 | 固定リンク

5月4日 木曜日 晴れ 

 GWまっただ中。どうもやる気がしないから、車をすっ飛ばした。山の中で、友人の古いカルマンギアを運転してからと云うもの、この6年間、ただの一度も壊れたことがない自分の車に不満を抱えている。人間はかように勝手な生き物である。でも、俺の車にはipodが付いてる。このところ、明星の「yellow moon」がずっと流れている。「昨日はコールサイン 全部携帯で/歪んだジャズギター ヘンな公園で」(だったっけ?)。字にすると、あり得ない歌詞なのだが(これは井上陽水さんと明星の共作である)、これが音楽と相まると、異様な説得力を放ってくる。流れていく車窓、確かに俺は黄色い月を見た気がする。素晴らしい。
 その昔、歌詞は「タテ書き」じゃないと気が済まない時期があった。レコード会社のブックレットの標準仕様は「ヨコ書き」になっていて、「タテ書き」にすると、工場で手作業の封入をしなきゃならんので、コストが上がると文句を云われたことがある。今や、俺は「タテ書き」の歌詞どころか、年配の方に手紙を書こうにも、もはや「タテ書き」そのものが出来なくなった。読めるけど、書けなくなった漢字も無数にある。某所で居合わせた人々と「豆板醤選手権」をやった。「とうばんじゃん」とただ漢字で書くだけなのだが、これが、誰一人書けやしない。抱腹絶倒。でも、ちょっと笑えなかったりする。   「yellow moon」。確かに奇妙な時代に生きてるなぁ、と思う。突然、携帯電話を投げ捨てたくなる衝動に駆られる。タクシーに乗っていて、この先の渋滞状況が分かって怖くなることがある。街で流れている音楽が全部同じに聞こえることがある。安価が売り物のレストランのオムレツが冷凍で、しかも目の前に運ばれてくると「とろーり」といい案配になっていて、戦慄を覚えることがある。観たい写真展があるけど、会場が「表参道ヒルズ」っちゅーだけで引いてしまう自分がいる。エトセトラ。そんな時代に生きてる俺には「yellow moon」の有機と無機のバランスが必要だ。

by 山口 洋