夏の匂い

2006/05/25, 23:23 | 固定リンク

5月25日 木曜日 晴れ 

 誰かの言葉だけど、「もう夏の匂い」がするね。
 
 実は昨日、俺の車からガソリンが漏れてた。スタンドの人がびっくりするくらい。本当はメンバーを乗せて、東京に戻るはずだったんだけど、あまりに危険だったから、一人で帰った。車の中で、録音したものを聴いた。まだまだ手を加えなきゃいけないものもあるけど、引火の危険と相まって、宇宙に飛んでいきそうな音だった。早計かもしれんけど、いいアルバムが出来てる。それが嬉しい。コンピュータに音楽を記録するようになって、音程やリズムまで、いろんな修正ができるようになった。けれど、ヒートウェイヴの場合、それをやると何かが確実に死ぬ。ダビングでさえ、気をつけないと空気が死ぬ。だから、最低限の楽器を加えるにとどめる。歌い直しなんてこともほぼ確実に音楽を殺す。へくったところも含めて、バンドてのは全ての微妙なバランスで成り立っているもので、それを修正すると、ただのつまらない良くできた音楽にしかならない。とはいえ、俺の歌の音程は未だヒドいもんだけど。しゃーない、それが俺の今の力量でもある訳で。つまり最先端の機材でもっとも古いやり方のレコーディングをしてる。そこにあるのは虚勢のない、ただのおっさんのボヤキに近いものがあるけど、それを、その宇宙を描きたかったから、アルバムプロジェクトは音と云う意味でも成功しつつある。それが嬉しい。

 朝起きて、車を修理に出した。ガソリン漏れはこの車種のリコール対象だそうな。ドイツ製のこの車は最近、日本市場からの撤退を決めた。俺は6年前に新車で手に入れた訳だし、修理もディーラーでやっている訳だから、リコールを伝えられなかったってのは言い訳にしかならん。そんな事も知らされずに、漏れたガソリンに引火したら、「still burning」じゃ済まされんだろ、売りっ放しかよ、と怒りがこみ上げてきたが、相手の目には「云っても無駄だ」と書いてあった。こんな時、総合的な会社のポリシーってもんに疑問を持つ。例えば、松下電気のファンヒーターがリコールになった。でも、あの対応は結果的に会社の好感度をアップさせたと思う。モノを作るってことには責任がある。自分が音楽に向かうべき姿勢を逆説的に教えられた気分になる。

 今日は音楽から離れていたかったし、ずっと犬のそばにいた。粗相の始末は慣れないし、身体がでかいから大変だけど、訳もなく愛おしい。耳が聞こえなくても、目が殆ど見えていなくても、それでもコミョニケートできるってことが嬉しい。奴には本当に大事にしなきゃいけないものを日々教えられてる。ほら、もう夏の匂いがするぜ。

by 山口 洋