ベリー・初日

2006/07/12, 23:06 | 固定リンク

7月12日 水曜日 晴れ 

 寝不足のまま飛行機に乗って、故郷に帰った。空港を出て、驚いた。ここはグアムか?そんな空気だった。東京との距離、約1200キロ。九州の方が陽が随分長い。おまけに山笠のシーズン。でも、この暑さはちょっと懐かしい。濃い夏の海辺の匂いが郷愁と共に蘇ってくる。あぁ、九州に帰りたいと、訳もなく思った。

 随分前にこの街で音楽を始めて、今に至る。何もかも、変わってしまったような、何ひとつ変わらないような。ただ、やればやるほど、音楽は深淵なものだと云う想いは深まるだけ。よく、「あなたの音楽はどんなジャンルですか?」と訊かれるけど、もう「我々の音楽です」としか云えなくなった。得意な技もいくつかある。確かにある。けれど、今回はそういうエンターテイメントではなく、あくまでも前に進んでいる姿(途上の路だったとしてもね)を見てもらいたかった。
 いや、久しぶりに不自由な自分たちを多いに発見した。例えるなら、ベリー・初日。パスが繋がらない、ゴールが決められない。昔なら、思うに任せない自分にキレてたところかもしれん。でも、不思議とそんな感情は湧いてこなかった。新しい途上の音楽にベリー・集中している事にわずかなコーフンを覚えていたから。それらのポテンシャルと云うものが、良くも悪くも如実に見えてきた。故郷で、人々の前で演奏することによって。
 イベンターから訊いたのだけれど、当日沢山の人が仕事の都合をつけて、見に来てくれたのだと。本当に嬉しい。ありがとう。我々が今、提供しようと思っているエンターテイメントはとっても分かりにくいかもしれん。1曲目からノリノリ、総立ちって類いのものでは決してない。でも、我々も何処に辿り着くのか不明な旅を、見ている人々にもそれぞれの形で楽しんで欲しい。少し傲慢かもしれないけれど。今日の虹には「茶色」が混じっていたと思う。ありがとう。

 飲み屋に場所を移して、イベンターやスタッフやもちろんメンバーも含めて、いい言葉が見あたらないけど、このバンドになって初めて「反省会」のような流れになった。もっと良くなるはずだ。ここはこうした方がいい。それはとても実りのあるものだった。来てくれて、ありがとう。当たり前だけど、聴いてくれる人たちが居て、俺たちが居る。重ねて、ありがとう。願わくば、楽しんでくれたかい?

 そうそう。中学の時の同級生が来てくれたんだ。K、お前だよ。ありがとう。27年振りだな。誰だか、全然分からなかったよ。「場違いだ」って云ってたけど、そんな事はない。ちびっこだって、おばあちゃんだって、誰だって来て欲しい。もし、気に入ったなら、また足を運んでくれ。

 沢山の友人たちに囲まれて、久しぶりにみんなで飲んだ。いい酒だった。池畑さんが店にあったギブソンのJで何故か「love is like a HEATWAVE」を弾き語ってた。ふふ。「じゃ、勘定を」。「1000円で」って、それはないだろう?俺は少なくともビール7杯は飲んだぜ。

 何にせよ、ありがとう。会えなかった友人たちにも、ありがとう。俺たちの旅は続きます。また帰ってくる日まで、どうかみんな元気で。

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by 山口 洋