レコーディング第三クール初日

2006/08/21, 23:51 | 固定リンク

8月21日 月曜日 多分晴れ 

 盛夏。レコーディング第三クール、都内某スタジオにて。スタジオと云っても、ほんのりいかがわしくて、ヘビーメタルを録音するのを得意としてるようで、夜なのに「おはようございます」と発するようなアホな連中が絶対に行き来してなさそうな、そんなスタジオ。
 今年の正月、ここのハウスエンジニアにばったり会った。奴は10年以上前、某リゾートスタジオのアシスタントとして、某県山中で働いていた。アシスタントと云えば、聞こえは良いが、録音業界とカメラマンの世界の下克上と云ったら、そりゃぁもうヒドいもんで、奴はあんなことから、こんなことまで、ありとあらゆる業務を山深いところにあるスタジオでこなすあまり、「湾岸戦争」が勃発したことを半年以上知らなかったと云う、無敵のエピソードを持っている。当時から熱くて暑い男だったが、晴れて下克上の末にエンジニアとなった今も、充分に暑苦しいところが、妙に俺の心にヒットしたのだった。
 スタジオにはブースがなかった。ははは。仕方がないから、コントロール・ルームで俺は歌っていた。でも、何だかしっくりこない。音がお上品なのである。さんざんみんなで考えた末、ひとつの部屋にメンバー4人がカンズメになって、せーので録音した。でも、何の問題もなかった。奴と今頃、ここで再び仕事が出来たことが嬉しかったし、どんな状況であれ、時代とたぶん逆行する形で打開策を見つけることが愉しい。今日ここに居た人々は、奴とはまた違った形で、熱くで暑苦しいんだろうと、帰りしな録音したものを聞きながら思った。悪くない。

by 山口 洋