ツアー初日・苫小牧にて
2006/08/25, 19:32 | 固定リンク
8月25日 金曜日 快晴
千歳空港を出た途端、空が広かった。空気が美味かった。住んでいる人には、至極あたりまえの事なんだろうけど、それだけでも旅に出て良かったと思う。
苫小牧。アミダ様と云う歴史のある小屋にはツルさんって強者が居る。この街で何十年も小屋を続けるってことは、多分並大抵の事じゃない。音楽が地域に根付くために。東京の業界人がすっかり忘れてしまった「初心」と「もてなしの心」と「気骨」のようなものが、耐えた風雪と共にここにはある。「on the road,again vol2」だったはずのツアー・タイトルは何故か「三度笠道中/三度」になっていて、チケットは手作りで、ツルさん直筆のダイレクトメールが前回足を運んでくれたオーディエンスに届き、そこにはアイヌの言葉が記されていたらしい。見かけはとっても怖いのだけれど、旅人にまずはコーヒやサンドイッチをふるまってくれる優しい人なのだった。まずは「tea or coffee?」。何処かの国の「その感じ」にとても似てる。
俺はずっとレコーディングの日々を過ごしていて、微細なことにこだわっていた。なかなかライヴ感が戻ってこないし、耳が肥えているオーディエンスも手強かった。北海道だと云うのに大汗かいてるし。でも、地元のシンガーやミュージシャンたちと一緒に演奏する頃にはその感覚が戻ってきた。彼等はそれぞれに地元に住んで、音楽活動を続けている。ちょっと羨ましかったりする。俺みたいに朝から晩まで音楽をやるしか能のない者とは違う「音楽との関わり方」から学ぶことは沢山ある。シンガーの歌からは北の地に暮らす者の想いが滲んでくる。ギタリストは演奏の殆どをフィンガー・ピッキングで通していたし(彼の人格も好きだったな、俺)、いつも俺を空港まで迎えにきてくれるパーカッショニストのバウランは確かに北海道の音がした。生音がきちんと聞き取れる小屋で、彼等と響き合うのは本当に愉しかった。いつかドーナル・ラニーが教えてくれたのだけれど、「世界中、何処に行っても、誰とどんな音楽を演奏しても、何も学ばないなんてことはないんだよ」と。その通りだと、俺も思う。
小さな街の小屋では、終演後にその店で飲むことになる。今日もまた、ツルさんの心ずくしの食べ物がテーブルに並ぶのだった。俺は彼がライヴ中にPAをやりながら、ギャグを飛ばし、料理までこなしていたのをステージから見ていた。カニとかジンギスカンとか、イクラ丼とか。贅沢だなぁ。この手のツアーが止められないのは、人の心に触れることが出来るからで、真ん中に音楽があって、酒が進むほどに、壊れる人間が出てきて、例えば今日は「とうきび」の見事な喰い方を伝授されたりする。ツアーを始める前は「さっさとホテルに帰って、曲を仕上げる」なんてうそぶいていたのだが、目の前の魅力的な人物達との会話を反古にするほど、俺もバカではないのだった。そうそう。ツルさんに「アミダの皿の洗い方」を伝授してもらったんだよ。それひとつとっても、レッキとした歴史の重みがあったんだよ。ちょっと飲み過ぎたけど。
ツルさん、ミュージシャンのみんな、手伝ってくれた人々。本当にありがとう。また戻ってきます。多謝&再見。
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