歌わない歌

2006/09/11, 23:08 | 固定リンク

9月11日 月曜日 晴れ 

 9月11日、か。
 ひとりでツアーを続けている。ライヴの流れは観客と作り上げていく。たまに、「何か、聞きたい曲ない?」と、問いかけてみる。「それ?何だっけ?」と自分でもすっかり忘却の彼方にある曲の名前が上がったりする。稀にやってみる。原型をとどめないほど、ボロボロだったり、意外に新鮮だったり、恥ずかしくて死にたくなったり、いい曲じゃんとか、思ったりする。これからの自分と、これまでの自分。比べようもないんだけど、圧倒的に前者のことしか考えていない。でもこれまでの自分の礎の上に、これからが成り立っているってことを、如実に知らされる。「満月の夕」をあちこちで、いろんな人が歌ってくれる。いろんな表情がある。そして、俺は一度たりとも「歌い切れた」と思ったことがない。一方、新しい曲は放流されていない稚魚みたいなもんだ。どんな魚になるのか、果たして大海を乗り切れるのか、まったく分からん。毎回、歌う度に気に入らないところが出てきて、移動中に書き直す。それは俺にとっても初めての経験。コンピュータの前に坐って、ウンウン唸ると云うよりは、直感として「これは違う」と思うことを、一気に書き直す。それでいいと、思う。どんどん変わる。歌と共に旅してる気がしてくる。ツアーの残り、何本だっけ?何が生き残って、何が葬られるのか?書いてる俺にも分からないけれど、そんな日々を愉しんでいます。

by 山口 洋