摩訶舎と嘘のない人生、岐阜県高山市にて

2007/08/07, 23:32 | 固定リンク

8月7日 火曜日 晴れ 

 俺はホテル暮らしが嫌いである。ツアー暮らしのミュージシャンには二種類居て、ホテルの無味乾燥な空間をあっと云う間にデコレーションして、自分の空間に変えてしまうタイプと、俺みたいに「そこは単なる寝ぐら」としか考えずに外で飲んだくれるタイプに大別される。俺はまれに部屋の入り口からベッドまでのわずか数メートルを歩く気力もなく、床に倒れていることがある。前述のミュージシャンは自分のトランクからわざわざ洋服を備え付けのタンスに入れたりする。俺に云わせれば「明日、どうせ出さないかんやん」ちゅー話なのだが、彼等には「少しでも自分の家みたいにしてくつろぎたい」と云うレッキとした云い分があるのだった。
 
 そんな話はさておいて。「飛騨の里」の近くにそのとんでもない場所はあった。名を摩訶舎と云って、「せっちゃん」と云う日本のオリジナル・ヒッピー世代が切り盛りしてる店だ。何がアナーキーでまっすぐかって、そのような言葉を書き連ねることが、今となっては陳腐に感じる。彼は子供のように大人で、とても魅力的な言葉を話し、彼は彼であって、以上でも以下でもなかった。高山が8万都市であるのなら、せめて一人くらいはあのような人物が必要だ。そこに集まる人々も素晴らしかった。随分と前、この街に種を撒いてくれた連中が居て、そして今日がある。ありがとう。と、俺にはいつもの言葉しか浮かばない。この街に来たのなら、ピッキンと云う店でランチを喰って、摩訶舎で飲んでみてくれ。帰りの足も、摩訶舎が開いているのかどうかも、俺は保証できないけれど。でも、幸運な事に、彼に会えたなら、ある意味に於いての「嘘のない人生」がそこにはある。ありがとう。

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by 山口 洋