知らない日本、鳥取県鳥取市にて

2007/10/23, 23:19 | 固定リンク

10月23日 火曜日 晴れ 

 俺がこのヤクザな稼業に従事していなかったら、一生、鳥取県には来ることなく死んだのかもしれん。ただ、このツアーは出来るだけ多くの街に自らの力で足を運んで、街を感じ、人と出会い、Land of music(音楽の場所)があることを感じたり、伝えたりしたかった。「山陰」と人はひとくくりにするけれど(俺も昨日までそうだった)、俺が知っている山陰と鳥取とはメンタリティーが微妙に異なるのだった。街をひとしきり歩いてみても、店でおばちゃんと会話を交わしてみても、それがどう違うのか、掴みかねていた。
 そんな気持ちのまま、俺はステージに上がった。フロアを埋め尽くしていた約10020人の観客はそれぞれにそれぞれの表情をしていて、余計混乱した。当たり前か。ただ、気持ちを込めていると、次第に開いてくる扉のようなものがあって、ほぼ柔らかな表情に変化していった。多分、これでいいのだ。
 after hoursと云うこのお店、一階は驚くなかれ、「天然温泉」。二階はafter hours、そして三階では少年がユニフォームを着て、トスバッティングに夢中になっていた。謎だ。でも、終演後、オーナーや手伝ってくれた人々と話していて、事情が飲み込めた。オーナーご夫妻はキャリア35年の現役ミュージシャン(大先輩だ)、で、実家が温泉を経営されてた、と。三階で見かけたトスバッティングはオーナーが息子さんとやっていたのだった。マスターのパンチョさんは「パンチョさん」としか呼びようのない愉快かつ豪快な人物で、この店もまた、鳥取の揺るぎない「Land of music」なのだった。想いのある人が続け、それを支える人たちがいる。この相関関係をステージに上がる前に、俺が飲み込めていたなら、、。
 来月、ここには近藤智洋がやって来るらしい。何処かで奴に会ったなら、この相関関係を伝えておこうと思う。奴も同じ、九州人だし、いつもは余計なお世話をしないのだが、どうせなら、それが分かってた方がいいに決まってるし。そんな訳で、近藤君、俺が完璧に把握してるうちに連絡されたし。

 お詫びを。会場にカメラを持っていくとを忘れたとです。なので、写真はありません。すまぬ。それから力を尽くしてくれた人々、本当にありがとう。東京に戻って、誰かが「鳥取に行きたい」と云ったなら、迷わずafter hoursのことを伝えておきます。心からありがとう。

by 山口 洋