日々の垢か、財産か

2008/05/31, 16:45 | 固定リンク

5月31日 土曜日 曇り 

 先日まで録音していたとある作品は、とってもいい感じで仕上がりつつあります。皆さんの耳に届く時期や詳細が決まったら、アナウンスするんで、しばしお待ちを。ところで、この作品。いつものように、俺と魚先生でミキシングするつもりだったのですが、久しぶりに旧知のエンジニアのM氏と仕事したら、あまりにいい音だったので、ミキシングもすべて彼に委ねることにしました。餅屋は餅屋。持ち家は餅屋。つーか、ソングライターがいい曲を書き、そのアイデアを素晴らしいバンドと煮詰め、人間にしか出来ないパフォーマンスをし、無駄なコストは省きつつ、それを素晴らしい耳を持ったエンジニアが録音する。関わった全員がプロフェッショナル。クリエイティビティーとくだらないギャグに溢れた、実に気持ちの良い現場でした。このようなエネルギーの連鎖が人々をハッピーにするのなら、本当に嬉しいことです。長い時間をかけて、我々は「本当に大事なこと」と「どうでもいいこと」を本能的に取捨選択できるようになったんだと思います。
 スタジオのアシスタントエンジニア君は弱冠21歳。我々の息子でもおかしくないような存在です。慣れない駄洒落の連発に戸惑いながらも、彼に我々のやり方はどう伝わったのかなぁ、と。それもうまく伝播するといいんだけど。最終日にこの作品の「監督さん」が差し入れを持って、来てくれたとです。その鮨が美味くてね。必要以上の華美さがなく、仕事が丁寧で、実に「間」がある味っつーか。うまく云えないけれど、「粋」ってことの意味を教えてもらいました。職人の道は深い。

 で、俺はミキシングから解放されて、時間が出来たはずだったのですが。

 楽器だ、機材だ、グッズだ、資料だ、エトセトラ。それらが格納されていた倉庫を引っ越すことになり、整理整頓しなければならなくなったとです。結成29年、デビュー18年すよ。そんな時期なんでしょう、多分。モノを持つのが嫌だとか、過去を振り返らないとかウソぶきつつも、溜まりに溜まったそれらを整理せねばって訳です。何から何まで、スタッフ任せで、そこに何があるかのかもまったく把握していなかった俺は、倉庫に近づいたことすら殆どなく、おえっ(嘔吐)、けれどそれらの中に宝が眠っていることは間違いなく、ぐえっ(悲嘆)、、、。

 目ん玉かっぽじって観ましたとも。ええ。前もってスタッフが整理してくれてたので、本当に助かったのだけれど、確かにそれらは巨大な宝の山ではありました。権利上どうしようもないものとか、古い巨大な機材とかはともかく、できるだけモノを無駄にしないように、倉庫で眠っているよりは、皆さんの手に渡る方法を考えてみることにします。

追伸
 「the Rising」特設サイトに新しいインタビューがアップされています。この国にはたくさんの「Land of music」があります。それをこれからも紹介していくつもりです。「the Rising」、残り少なくなってきました。欲しい方はお早めにどうぞ。

http://d.hatena.ne.jp/theRising/

蛇足
 写真のタイプライター、親父が仕事に使ってたものなんだけど、ほぼオブジェと化しても、捨てられないものってあるよね。コンピュータで書くものと、この無骨なタイプで書かれるものは、違う気がする。

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by 山口 洋