奈良の呪い

2008/09/30, 03:23 | 固定リンク

9月30日 火曜日 雨 

 一年前、奈良の蔵武Dでは、とっても気持ち良くライヴをした記憶があった。だから、雨が降ろうとも、何度となく、会場とホテルを往復しようとも、屁とも思わなかった。この時点で、俺もまだまだ甘いね。へへ。
 何が起こったのか、ここには記さない。だって野暮だもんね。だからライヴなんだもんね。一言で書くなら、このツアー史上、一番タフな状況ではあった。音楽に集中できないと云う意味に於いて。それもこれも、この雨なのに、こんなにお客さんが来るとは思わなかったとか、一挙に大量のフードの注文を受けたことがなかったとか、エトセトラ。
 一部と二部のインターミッションの間に考えた。このままじゃ、終われん。結果的に、最終的には音楽に集中できたことによって、かつてなかったような不思議なライヴにはなった。だから、この稼業は止められん。こんな大雨の日に、みんな来てくれて、ありがとう。通常のライヴの何倍ものエネルギーは確かに使ったけれど、音楽は素晴らしいと、人は素晴らしいと、あらためて思った。
 終演後、何故か深い話になった。俺と8つしか変わらない女性が本物の「おばあさん」になったとか、住職は痛風だけど、何故かお店に欠かせない存在だったりとか、いろんな人生が古い蔵に交錯して、このツアーならではの深い味わいがあった。今更ながら、同じライヴは二度としてない。今日と云う一日を、愛と敬意を込めて「奈良の呪い」と命名しよう。一日でひと月ぶんくらいの振幅、味わったなぁ。また来年、帰ってくるね。帰ってきてもいい?本当にありがとう。俺、この場所、大好きだよ。ほな(奈良風に)。

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by 山口 洋