プチ・ワークショップ

2008/09/01, 21:19 | 固定リンク

9月1日 月曜日 曇り 

 芸能人と違って、ミュージシャンの歯が命、とは思っていないが、ニンゲンは喰ったもので出来ているから、噛めない俺がニンゲン以下であったことは間違いなかった。おそらく、あのまま放置していたならば、ポーグスのシェーンの前歯フォロワーになるしかなかったのだと思う。俺は「テクマクマヤコン@秘密の歯医者さん」のファミリーに助けられた。道が何であれ、そのプロフェッショナルな心意気に助けられた。ちょっと涙ちょちょぎれたぜ。

 何はともあれ、俺は明日のために歯を磨くことにした。

 俺は引き続き、東北某所に居た。何かちょっとでもいいから、恩返しをしたかった。子育てや仕事に少しだけ余裕が出来て、昔弾いていた楽器を「久しぶりに取り出してみよう」と思う人々が増えているのは、とても嬉しいことだ。俺のギターはヤイリギターが治してくれる。でも、旅先で出会ったそのギターは久しぶりにメンテを施されて、とても嬉しそうだった。一小節にどれだけの音符を刻めるか、なんてことに俺は興味はないのだ。その楽器がどれだけ愛されてきたか、これから持ち主とどんな音楽を奏でていくのか、それを夢想しているのが好きだ。
 某所に夜な夜な人々が集う。それぞれにギターを持っていた。上手下手なんてことはどうでもよくて、演奏にはその人格が丸ごと出てしまうものだ。俺は二人の演奏者の真ん中に入って、グルーヴを調整したり、テンポを出したりする。俺の右側に居たギタリストは少年のような表情で弾き、左側のギタリストはプチ哲学者のような顔で弾いた。機が熟して、俺が演奏を止めてみる。すると、どうだろう?
そこには二人が描く音楽の風景が浮かび上がってきた。それはもはや、演奏にまみれた俺が描くことができない「オヤジなのにイノセント」な風景だった。輝いていた。ちょっとカンドー。楽器を演奏することを「教える」ことなんて、基本的に不可能だと思っている。だから、職業としてそんなことをやるつもりはない。けれど、ライヴの後に、演奏することの素晴らしさを伝えるってのも、旅ガラスの自分の役目かもしれん、と思ったりもする。

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by 山口 洋  
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