って云うか、民家?山梨県都留市にて

2008/09/20, 12:46 | 固定リンク

9月20日 土曜日 曇り 

 台風一過。俺とマネージャーは山梨県都留市を目指した。山梨にはレコーディングでは何度も来たことがあるが、一度たりともライヴをやったことはなかった。47都道府県。ライヴをやったことがないのは、ここ山梨と、残すは難攻不落の福井県を残すのみとなった。
 そもそも、カーナビで今日の会場「高部座」を探したときから、不穏な空気が漂っていた。ナビによると、それはとんでもない山の中にある。しかも、ネットで検索しても、「高部座」は発見できなかった。怪しい。怪しすぎる。車はナビに導かれ、どんどん市街地を離れ、山の中に入っていく。目の前には山里の風景が広がっていく。(写真参照)もう充分だろ、と云うくらい登った時「高部座」が現れた。それは「高部座」と云うよりは、明らかに「高部さんの家」だった。まぎれもなく。都会の家に慣れた我々には信じられないくらい巨大な家。座敷は「遠山の金さん」状態にブチ抜かれ、軽く50畳はあり、老若男女のために座布団が敷き詰められ、真ん中にはご先祖様の仏壇が鎮座し、ステージは玄関に設置されている。民家なのに、何故か自前のレッキとしたPAが設置されていて、俺は頭の中の?マークを払拭するのに苦労した。こりゃ、「最低」か「最高」かどっちかだろう。でもなるようにしかならん。おまけに、俺はこう云う状況が嫌いじゃなかった。
 「高部家」の入り口にはチャウチャウと柴犬のハーフ、「チャウ」が居た。久しぶりに出会ったイケてる雑種犬。微妙にチャウチャウ、絶妙に柴犬。俺はグラビアアイドルを撮影する写真家みたいに、奴のポートレイトを撮るのに熱中した。(写真参照)もちろん、ご先祖様にも挨拶したが、巨大な家には「奥の院」があって、そこから「高部」のおとんとおかんがお出ましになった。おかんは今日ライヴにやってくる老若男女のために3升の「赤飯」を炊いてくれた。もちろん頂いたのだが、美味すぎて、涙腺決壊。っていうか、俺にはほぼ「反則行為」に近かった。
 話はまだ続く。今日は俺のソロライヴのはずなのに、続々とミュージシャンがやってくる。車椅子で自ら車を運転して、全国を廻っているシンガー森君。旧知のパーカッショニスト永原元、ミスチルやゆずのギタリスト河口君、それに主催者高部某。これを制御しようなんて考える方が間違ってるんであって、とりあえず曲を知っていようがいまいが、立ってるミュージシャンとは演奏するに限る。リハーサルは不要。我々は都留市の山の中でしか描けない風景を描いた(と思う)。いつの間にか巨大な50畳は人で埋め尽くされていて、それぞれに音楽を楽しんでいた。素晴らしかった。
 ライヴが終わっても、音楽は止まなかった。近年稀に見る声を持った女性シンガーとも演奏したし、本業はカレー屋さんなのに、素晴らしいギターを作る職人さんにも会ったし、何故かセクシーなフラメンコを踊る女性が居て、俺と河口君はニセモノのフラメンコギターを弾いていた。
 と書いて伝わるだろうか?恐るべし、山梨県都留市。日本をどれだけ廻っていたとしても、まだまだこの国の懐は深い。だいいち、あれだけのオーディエンスは殆どが「車」でやってきたはずなのだが、いったい何処に駐車したのだろう?謎は深まるばかり。この頃、何処に行っても同じようなライヴばっかりやっていると嘆いているミュージシャンは今すぐ、「高部家」に行くべきである。芸のない者は去るしかないっちゅー厳しい掟はあるが、ここの人々は音楽、つまり「音を楽しむ」と云う一番の肝の部分を心から知っている。恐れ入りました。頼まれなくても、来年必ず再訪します。心から、ありがとう。多謝&再見。

追伸 「チャウの秘密」
俺はチャウの出生の秘密が知りたくて、仕方がなかった。奴はニンゲン様の意思によって、出来たのではなく、山間部にありがちな、多少、強姦チックな犬同士の自由恋愛活動によって誕生したらしい。もし、メス犬であるチャウが更なる自由恋愛活動によって、身ごもったら、是非この私に連絡されたし。

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by 山口 洋