雪を求めて三千里
2009/04/04, 17:43 | 固定リンク
4月4日 土曜日 晴れ
毎年桜が咲く頃になると、ディランの歌みたいに「ブルーにこんがらがって」どうしようもなくなる。理由は分かっているのだけれど、避けようがないのだから、どうしようもない。この季節特有の生ぬるい風から遠く離れたかった。車にスキーを積んで、午前3時に家を出た。雪を求めて三千里。滑ってる時は何も考えないから楽なのだ。閉鎖間際の寂れたゲレンデには誰も居なかった。一番の急斜面をバカみたいに繰り返し滑っていたら、居眠りが趣味のリフト係のおじさんがパスを見せろとは云わなくなった。そのスキー場は何故かどこに侵入しても怒られない。季節外れの新雪が積もる林の中に突っ込んで、いつか自分は迷子になった。それはそれで悪くなかった。
外国人に会った。彼も僕と同じように、ひとり雪を求めて放浪しているらしい。人のことを云えた義理じゃないが、「なんでそんなことしてんの?」と聞いたら「渇いてるんだ」と確かに彼はそう云った。
僕の第二の故郷でもあるアイルランドはドニゴールのDと云う街にたどり着いた友人から連絡があった。「早く戻ってこいよ」とみんなが云ってる、と。何だか、訳もなくじーんとした。今すぐ飛ぼうにも自分のパスポートは切れていた。
とある家族が僕を受け入れてくれた。それは「保護」とか「捕獲」と云う状態に近かった。にんじん抜きのカレーとか、手巻き寿司とか、他愛のない会話とか、思いやりとか、エトセトラ。目を丸くして、その光景を見つめていた。素晴らしかった。13歳の女の子の目に映るこの世界が、希望に満ちたものでありますように。
深夜の高速を飛ばしながら、自分の血に流れる「手に負えない感情」について考えていた。それが自分に歌を書かせてきたし、きっとこれからもそうだろう。そして癒してくれるのは結局、時間でしかないし、永遠に向き合うことでしかない。都会が近づくにつれて、空気は生ぬるくなった。しばらく居ない間に桜は満開になっていた。ネガティヴな感情はいくぶん薄れていた。さぁ、道を歩こう。
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1998年2月〜2005年9月