デラシネ

2009/04/21, 12:31 | 固定リンク

4月21日 火曜日 雨 

 このところ、僕にはイタコみたいにいろんなものが降りてくる。ステージに上がる前に、できるだけ「空っぽ」の状態にして、演奏を始めると、やおら何かが降りてきて、自分を振り回す。ミルトンの最後のステージで降りてきたものは、自分にもどうすることも出来なかった。ひょっとして、内包しているのかもしれないけれど、そいつは茶目っ気たっぷりで、それでいてちょっと「邪悪」で、ずいぶんと振り回されて、プロのミュージシャンとしては、それと格闘しなければならなかった。振り返ってみると、楽屋に居るときから、ヘンな耳鳴りがしていて、その予兆を感じてはいたのだけれど。
 関東に帰って、今僕が熱にうなされてるのは、風邪とも病気とも違う「気」みたいなもの(説明になってない)が理由だと思う。元気なのか、元気じゃないのか、自分でも良く分からない。
 先日のイベントで、八重山の連中に感銘を受けたのは、しっかりとしたルーツを持っていると云うこと、それを今の時代に昇華させようとしていること、そしてあれだけのルーツを持っているにも関わらず、どこかデラシネ(根無し草)で、流れ者で、ならず者だってところにある。こんな奴らがまだ居たんだ。つーことが多分、僕やリクオを励ましたんだと思う。自分にルーツがないから、と云って、もはや卑屈になることもない。彼らに比べると自分は本当にデラシネだと思う。帰る故郷も失くしてしまった。そのことが苦しかった時期もあるけれど、あのイベントの帰り道に、まっすぐな道が目の前に見えた気がするのだ。気恥ずかしいけど、それはバカみたいにひとつのことを続ける、あるいは想い続ける「愛」の道に、僕には見えた。
 あるミュージシャンの背後には「god」が見える。あるミュージシャンの背後には「ルーツ」が見える。そして自分には何もないから、訳の分からないものが降りてくるんだと思う。結局のところ、行くしかないのだ。

 今週は久しぶりにバンドに戻れる。受け取った何かを繋げていこうと思っています。でもって、「Live at Cafe Milton」、いよいよ明日からwebでの通販開始です。よろしく。

by 山口 洋