Milton day2

2009/04/19, 15:51 | 固定リンク

4月19日 日曜日 晴れ 

 普段、絶対に「群れない」連中が、結果的に、この街と店に吸い寄せられて、共に音を奏でている。それが素晴らしかった。小さな街ではあちこちで音楽が奏でられ、オーディエンスは街の名産品を食べたり、飲んだりしながら、音楽を愉しむことができる。各地から集まったミュージシャンだけではなく、地元の人々もそれぞれのステージで演奏している。かつて、僕が世界のあちこちで観てきた、素晴らしき「音楽の祭り」と理念がほぼ共通していた。
 午前10時という殺人的な時間に白石城の広場でリハーサルをやって、何曲か演奏した。僕は吹いてくる風に身を任せているだけで、勝手にステージに上がっていって、誰かの知らない曲に加わっていた。気持ち良かった。それから、近所のお寺まで移動して、新良幸人と志田真木さんの踊りを観た。あれは何なんだろう。詳しくないから、ちゃんとは書けないけれど、あのような「タイム感」のものを、僕は未だかつて観たことがない。bpmが30くらいで、ゆっくりと、ゆっくりと時が流れる。二人のパフォーマンスが始まると、時空がちょっとだけ歪んで、そこから観た事のない風景が広がっていく。静かでいて、それでいて原色が散りばめられている。真木さんは踊っている間、ただの一度も「まばたき」をしなかった。何度も確認したけれど、もはや彼女は「ニンゲン」には見えなかった。この文章じゃ、どんな風景なのか、分からないよね?実のところ、僕もよく分からない。本当に目撃したのか、どうかも。それほどに摩訶不思議だった。また観にいこう。
 石垣島の白保が生んだ、大島保克と新良幸人、それから宮古島の言葉で歌う下地勇、それからリクオと俺。狭いにもほどがある、カフェ・ミルトンにパツンパツンのお客さんを詰め込んで、最後のコンサート。全員素晴らしかったのだが、特筆すべきは大島保克と新良幸人のデュオ。もはや、言葉が見つからず。僕は文章にできないから、是非観てくださいって、この二人が同時にステージに立つことは殆どないらしいんだけど。
 最後に本日限りのユニット、「デスペラーズ(要するに全員)」で「満月の夕」を演奏した。いやはや、何とも、言葉なし、三たび。彼らのことは今まで良く知らなかったけど、とても刺激を受けた。一言で書くなら「本物」。彼らの故郷は話を聞けば聞くほど、ドニゴールに似ている。ならば、行くぞ。

 「Live at Cafe Milton」。多くの人が手にしてくれました。何故、僕がこの盤を作ったかってことは、今日のライヴを観てくれた人には説明不要だと思います。そういうことです。そして、今日出会った「本物」の連中とは、これからあちこちでまた関わっていくことになると思います。どんな未来が待っているのか、まったく不明だけれど、「おーーーーっ」っとワクワクしながら、生きている。そのことに深く感謝したくなる一日。出会った人々、本当にありがとう。こんなに文章化できない日ってのも、そうあるもんじゃないけど、素敵だ。

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by 山口 洋