過去と他人、そして自分と明日。

2009/10/17, 15:02 | 固定リンク

10月17日 土曜日 曇り 

 曇りの日は目覚めたときから気分がすぐれないことが多い。カーテン越しのぼんやりした光を見るだけで、その日の空模様が分かってしまう。灰色の空と心のブルー。そんな時は無理に「おふとんの国」から出ずに、言葉を失っていたときに見つけたある「言葉」を自分に投げかける。今までのいろんなことにゆっくり感謝し続ける。そして、ストレッチをしてから、ベッドを出る。多分、オレは触れることに飢えている。でも、これ以上心が渇かないように、海を見ながら走るとしよう。
 
 連日のハードトレーニングで、階段を降りることもままならず。でも、ゆっくりと時間をかけて、10キロ走る。1時間5分。海辺ではたくさんのファミリーがくつろいでいて、その光景が目に染みる。でも、今のオレに出来ることはこれしかない。乗り越えていく以外に方法はない。
 
 家に帰って、テニスプレイヤーの杉山愛さんのドキュメントを観た。彼女はアスリートならではの簡潔な言葉でこう語った。「過去と他人は変えられないけれど、自分と明日は変えることができる」。その目はとても美しかった。経験が人を作る。ならば、マイナスの経験ってのはあり得ないはずだ。多分。

 酒場には暗黙の掟がある。その人が自らの口で語らない限り、他人の過去に介入してはいけない。一人でふらりと入ることができる店には、自然とそのようなルールが出来上がっている。稀にいろんなことを詮索する輩が居たりすると、ひどく居心地が悪くなる。たまに真面目な話もするけれど、オレは他愛もない、くだらない話をして笑っているのが好きだ。静かに音楽を聞いているのが好きだ。たいていの人間がなにがしかの傷のようなものを抱えている。あるいは家族が居ないか、遠く離れているか、エトセトラ。その暗黙の掟の上に、一人でふらりと現れた者たちが、その日限りの「疑似家族」のように他愛もない話をして、家路に着く。その空気を繋いでいるのが極上の音楽と、絶妙なヴォリュームコントロール。

 さ、書きかけの曲に向かって、夕方からライヴに行くとするか。

by 山口 洋