リセット、そして潮の路

2009/12/08, 21:02 | 固定リンク

12月8日 火曜日 晴れ 

 二日前のレースを終えて、燃え尽きてしまったような気がした。ベストを尽くすと云うことは、ときどきこのようなことをもたらすのかもしれない。走っている間じゅう考えていたのは、ただただタイムのことだけだった。最後まで決めたペースを落とさないこと。それ以外のことは何も考えられなかった。キツすぎて。でも、それって果たして、自分が望んでいたことなのだろうか?それが分からなくなって、うろたえた。オレは機械じゃない。人間だ。多分、ここらでリセットしなきゃならないんだろう。恐怖に煽られてマシンのように走るのは一度止めてみよう。そう思った。
 音楽では、もうそんなことはない。きっと生きている限り、前を向いて、何があっても続けていくだろう。そのくらいには音楽の神様にも愛されているのを感じる。何よりも、面倒なことも含めて、楽しい。ステージではもう何も考えない。「無」に近い。
 こんな時に限って、たくさんの「誤解」がもたらされる。あからさまな誤解。ひどくしんどい。でも、こうも思うのだ。それも自分が引き寄せている。
 もう一度、何がオレを走らせているのか、確認しよう。時計も外した。眼鏡もかけた。小銭も持たない。ただ、何も考えず、ゆっくりと走ってみよう。海に出た。とても穏やかだった。凪いでいた。そこに映る夕陽が本当に奇麗だった。光に向かって走っているようだった。やがて太陽が沈んだ。海は黄金色に輝いていた。そこに路が見える。これが潮の路か。初めてみた。ゆっくりと穏やかな気持ちになった時、そこに行くべき路が見えることもある。嗚呼、そうだったのか。今日も走らせてくれてありがとう。そうでなければ、この光景には出会えなかった。路はどこに繋がっているのか。オレはそれが知りたいんだと思う。そして、まっすぐな気持ちでそれに向かっていけば、偶然は必ず必然になると、信じていたいんだと思う。

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by 山口 洋