全裸階段落ち

2010/03/24, 23:43 | 固定リンク

3月24日 水曜日 雨 

 雨の日は走ってはいけない。そのことで、ひどく叱られたことがある。

 レース4日前。最後の刺激を筋肉に入れる必要があった。10キロのJOGと5キロのレースペース走。練習自体は大したことないのだが、いかんせん雨は止まなかった。天気予報によるとレース当日も雨の可能性あり。ならば、それを体験するっちゅー意味でもやっておくか、と。5キロを26分30秒で走ればよかったが、今日は23分40秒。それでもまだ余裕はたっぷりあった。これにて、本当に長くてキツかった練習も終わり。後は食事と軽いJOGで体調を整えるだけ。全部やったぜ、やりきったぜ。充実した気持ちで帰ってきた。
 身体が冷えきっていた。っていうか、ツアーで疲れてもいた。ストレッチを終えて、風呂に入っていつものようにマッサージをした。ところで、ツアー暮らしの間に、ボディーシャンプーだの、何だかんだ。切らしていた。補充するものは階段のところに置いていた。仕事場の風呂は二階にある。
 あー、面倒くさい。と濡れた身体のまま、全裸(すいません)でそれを取りに行った。急いでいたのが災いしたんだろう。階段の一歩目で完全に足を滑らせた。身体が信じられないくらい宙に浮いたところまでは覚えている。そのまま頭から落下して強打。受け身も取れないまま、衝撃で気絶。どれくらい経過したのか不明だけれど、呼吸困難で気がついた。下まで落ちてくる間に背中を強打したらしく、呼吸が出来ず苦しい。「うーん、オレは階段から落ちて、全裸で死んだとこ、発見されんのか、そんな人生嫌じゃ」と思ったものの、身動きできず。そのままじっとやり過ごして、呼吸が回復するのを待った。苦しい。視界が暗い。良く見えない。相当頭打ってるなこりゃ。階段から落ちたくらいで、こりゃ大変なことになったわい。まずは救急車呼ばなきゃ。でも全裸じゃん、俺。とにかく身動きできないので、じっとしていた。30分くらいして、視界も呼吸もマシになった。どうにかソファーまでたどり着いて身体をチェックした。骨は折れていない。折れたらこんなものじゃない。でも、足の裏と臀部、背中の打撲が特にひどい。とりあえず、ロキソニンを貼って明日まで様子をみよう。つーか、ロキソニンを貼る行為ですら、苦行だった。でも、受け入れよう。起きてしまったことは仕方がない。
 「いてー」とソファーで苦しんでいたら、沖縄のおばあから電話があった。まただ。当たり前だが、この事実は俺しか知らない。「云っただろ。雨の日に走るなって。お前は疲れきってるんだよ。今度はこんなことじゃ済まないよ」。彼女は何も云わずともお見通しだった。

 レースまで、これだけ努力を重ねてきてオチがこれかい。と笑うしかないのだが、とにかく目の前の出来ることに全力を尽くそうと思う。とりあえず、寝てみよう。な訳で生きてますんで、どうぞご心配なく。みんなも家の中だって、こんなことがあるから気をつけて。特に一人で住んでる人はね。誰も助けに来ないって、こういうことかって、身にしみたよ。

 今は全裸じゃありません。念のため。

by 山口 洋