ダンシング・ベアフット

2010/08/30, 10:47 | 固定リンク

8月30日 月曜日 曇り 

 かれこれ一週間、新聞もテレビもニュースも観ていない。この何日か、誰にも会っていない。多分、そんな隔絶された時間が必要だったのだ、と満天の星空を見上げながら思う。目覚めて、喰って、労働して、排泄して、走って、音楽に向き合って、寝る。僕が必要としているものは全部ここにある。やるべきことはすべて自分でやるしかない。そして、あまり肉類は必要としない。地元で採れた野菜をワシワシと食らう。栄養について学んだことがないから不明だけれど、必要な栄養素はすべてこの中にある、と身体が云っている。多分、そんなに的外れでもないだろう。クソ暑い都会を逃れたおかげで、どうにか8月も月間300キロを超えた。この頃はランニングシューズさえも煩わしく思える。裸足で草原を走ったら、どんなに気持ちがいいだろう、とか思う。ザトペックは「愛」のために走ったとモノの本で読んで、モーレツに感動を覚えた。自身の身体の感覚に耳を澄ませることほど、官能的なことはない。人生で大事なことは最後まで走りきることだけだ。 
 多くのランナーが走る時に音楽を聞いている。一度だけ僕も試してみたことがある。でも、まったく必要なかった。潮騒や風の歌や、何よりも自分の心の声が聞こえなくなる。あの「官能的」な感覚がなくなってしまう。その代わりに、走るときに、マントラのように唱えることができる歌があれば、とずっと思っていた。苦しいときに自分を鼓舞するような歌。僕は8ビートで育った。後天的に16ビートと、その裏のリズムを身につけた。僕はその両方のリズムで走っている。テンポは150bpmくらいがいい。そして劇的な展開がなく、シンプルでいて、「ジャックと豆の木」みたいにどこまでも伸びていけるような、ゆっくりと、トランスして天まで走っていけそうな、そんな曲がいい。

緑の台地(メサ)を登り 
風を味方につけたとき   
痛みと君は友達さ 
もう独りじゃない

自らの手を汚し 
風を受けて明日へと進め
働くことの尊さと 未来への感覚を研ぎすますとき
きっと君は自由になれる

ザトペック
きっと気がつくはずなんだ 
走るために生まれてきたことを

あまりにも多くのことが
言葉にはされなかった
でも何も考えるな 
感じるだけさ

荒れた手は君の勲章
世界は相変わらず 君と共にある
さなぎのままで くち果てながら
今は 生きることの深さを知る

どこまでも熱病にうなされて
道を作ろう 明日へと続く
痛みを友に 駆け抜けるのさ

ザトペック
きっと気がつくはずなんだ 
走るために生まれてきたことを

img10080038_1
by 山口 洋