破格の才人、横浜にて

2010/08/17, 04:17 | 固定リンク

8月17日 火曜日 晴れ 

 おおはた雄一が破格の才人であることは、僕の中では揺るぎのない事実であって、何でかと云うと、「そうだ、京都に行こう」じゃなかった「そうだ、音楽やろう」とはるか彼方、何光年も昔に抱いた気持ちでステージに立たせてくれるからだ。僕らは過度なリハーサルはしないし、軽くメールでやりとりするだけ。日によって多分キーも違うし、曲順なんてあってないようなものだし、出てきたものを互いに瞬時に受け止めるだけ。書くと簡単だけれど、それが出来るミュージシャンはとても少ない。ほんとだよ。例えばリハーサルを入念にしたとしよう。確かになにがしかの手応えを得る。でも、失われるものもたくさんある。僕らが本番で、滴のついた演奏をしたとしよう。二度とできないような。おいおい、いったいこの曲は何処に行くんだ?誰にも分からない。そんな瞬間に生きているとき、僕は至福だ。勝手だけれど。
 言っておくけど、緊張感はある。僕の五感は研ぎすまされている。だから、笑いが止まらない。ちょー、愉しい。そんな瞬間を過ごしていることが。今日はね、おおはた君のバンドと一緒に演奏した。ドラマーは女性で、人格と母性が演奏ににじみ出ていた。モーリン・タッカーを初めて生で観たとき。母性がリズムを刻むってこんな事なんだ、と感じたことを思い出した。そりゃ、パワーは男には劣る。でもね、じわじわと染みてくる何かがある。女性のリズムは。そして、彼女と共にリズムを刻むベーシストも素晴らしかった。
 人を信じるのは難しい。でもステージに上がった以上は信じるしかない。こんな僕でも、その時だけは全面的に人を信じることができる。だから、音楽が好きなんだと思う。やがてそのエネルギーがオーディエンスに波及したとき。この世は捨てたもんじゃないと思う。忙しい中、足を運んでくれてありがとう。愉しかったよ、心から。

img10080017_1img10080017_2img10080017_3
by 山口 洋