BERLIN

2010/10/23, 19:30 | 固定リンク

10月23日 土曜日 曇り 

 渡辺圭一が絶賛していた、ルー・リードの「BERLIN」を遅ればせながら観た。やっぱり公開中に映画館に行くべきだった。後悔先に立たず。ルーが居なければ、僕は今頃ステージには立っていなかったと思う。という位には影響を受けた。高校時代に叫んでいるものだけがロックじゃないと教えられ、3分の曲に短編映画を上回る情景を描けることを教えてくれたのも彼。何と云っても、突然、僕が歌わなければいけない状況に追い込まれたとき、徹底的に真似したのが彼だった。
 ある種(ほんの一握りだけれど)のソングライターは、幾多の荒波を乗り越えると「哲学者然」とした表情になる。先日、生で観たディランと同じく、その眼光は老いて、鷹より鋭く、そして深かった。ハル・ウィルナーのプロデュースはいつも素晴らしいのだが、今回はおそらくブルックリンあたりのアマチュアのクワイヤーが参加していて、アマチュアならではのピッチの悪さが、逆に「BERLIN」のあの空気を体現していると云うか。見事な手腕だ。おまけとして、エルヴィス・コステロがホストを努める番組に出演した際のルーとジュリアン・シュナーベル監督の対談の模様が収録されているのだが、あの毒舌家のコステロがまったく生彩を欠いているように見えるところが凄い。まさに凄みと深みの90分。悶絶。

富豪の息子はしばしば帝国を崩壊させる
貧しい出の息子はしばしば何もできぬ
金持ちの息子は父親の死を待ち
貧乏人は酒をあおって泣く
おれにはどうでもいいこと
富豪の息子はしばしば何も出来ぬ
貧しい出の息子はしばしば何でもできる
実際に彼らは男らしく立ち向かおうとし最善を尽くす
頼れる父親などいないのだから

 ルーがアルバム「BERLIN」を作ったとき、彼はベルリンに行ったことがなかったのだ、と。信じられないけれど、だからこそイマジネイションの世界の中で、あの傑作が作れたのかも、とは思う。

 僕は身の回りの優れたクリエイター達と一緒に居るときがいちばん愉しい。欲も得もなく、モノを作るときの現場が好きだ。僕が僕で居られる、と云うか。年齢も性別も何も関係なく、フラットなのだ。新しいアルバムは、それらの信頼かつ尊敬できるクリエイターたちと、全ての常識をまずは疑ってみることから始めている。とても愉しい。まずは写真集から。これに関しては、僕らはただ撮影されていただけだけれど。それぞれの立場から紡がれている言葉が興味深い。

 まずは昨日に引き続きトレイラー
http://www.youtube.com/watch?v=i8sKzeNcaso

 撮影した松本さんのblog
http://d.hatena.ne.jp/hw_live_docu/

 編集したスントー氏のページ
http://www.sg-tokyo.com/

by 山口 洋