9600

2010/12/19, 20:46 | 固定リンク

12月19日 日曜日 晴れ 

 生きているうちに、僕はいったい何台のマッキントッシュを買うのだろう?コンピュータは「家電」と呼ぶにはほど遠く、技術が進歩するたび、時代遅れになっていくのは仕方ないんだろうけれど。「下取り」なんてことが一切出来ない性格なので、家には使わなくなったコンピュータがたくさんある。さすがに個人情報やいろんな原稿、アイデアがそこには残されているので、捨てることは出来なかった。
 そんな訳で新しい巨大マックが何故が中国から送られてきた。メモリーやハードディスクをバカ積みしたからなのか、何なのか、不明だけれど。と、ここまで書いて。このコンピュータはあくまでも「日常用」。僕が音楽の制作に使っているのは今や化石と呼ばれても仕方のない名器「power mac 9600」。遊びにきたミュージシャンやエンジニアが「まだ、こんなの使ってんの?動くの?」なんて失礼なことを云うのだが、未だ現役バリバリです。って云うか、僕はこの「9600」にただならぬ愛情を持っていて、大切に使っています。この「9600」はタダものではなく、その道のエキスパート、エンジニアのK氏によって激しくカスタマイズされています。みかけはボロ車なんだけれど、エンジンとんでもない、みたいな。ただし車体の古さゆえ、日本語は使えない(日本語を入れると重い - つまりはそんな時代のコンピュータってことです)し、安全のためネットにも繋がっていません。純粋に音楽を作るためだけのものです。5~6年前、僕らが使っているソフトやシステム自体が大きく変わったことがありました。その時に、某メーカーは規格を変えたのです。つまりはハードも全面的に買い替えろってことです。この「9600」の中にはウン百万するものが積載されています。それを買い替えろ、と。そこで僕はカチンときたのです。ふざけるな、と。どうして互換性を持たせないのか。僕には意味が分からない。
 例えば、僕が今、恋焦がれているライカのデジタルカメラ、M9は昔のライカのレンズをすべて装着することができます。それがモノを作る企業として、当たり前の姿勢だと思うんだけど。なので、僕は抵抗した訳です。時代遅れのこの「9600」と行けるところまで行くぞ、と。まず、再起動している間に珈琲を淹れることができます。このくらいゆったりしているのが僕には丁度いい。昔のレコーディングの現場には「テープを巻き戻す」時間があったのです。僕はその余白が好きだった。それから画面に表示できないトラック数は使わない。ハードディスクも16ギガしかないので、後でどっちのテイクか選ぼうなんてことはせず、あらかじめスタジオでガシガシ捨てて「骨」だけにして持って帰ります。周辺機器が殆ど売っていないことを除いたら、何の問題もありません。こうして、「eagle talk」以降のアルバムはすべて、この「9600」で作られました。もちろん「speechless」も。何とか、次のHEATWAVEのアルバムまでは現役で頑張って欲しいなぁ、と思っています。

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by 山口 洋