本気の力

2010/12/16, 03:46 | 固定リンク

12月16日 木曜日 曇り 

 亡父命日。彼は49歳で死んで、そのとき僕は18だった。とりあえず、その時、僕は49までは生き延びて、彼の無念を晴らしてやるわい、と無意味なほど固く誓ったのだが、残りあと2年弱。脳味噌の回転の速さは彼に及ぶべくもないが、彼に足りなかった「タフネス」。それだけは彼を凌駕しているとは思う。くだらん親子の争いだけどね。あと2年。云ったことは必ずやるけん、まぁ、見ときんしゃいね。と、薄れかけた博多弁で仏壇の彼と日付が変わる頃に乾杯。

 朝起きて、ディーラーに出向き、クルマにスタッドレスを装着。来週、おおはた君と「とつぜん北に行きたくなったのだ」ツアーに出るのだが、もう彼の地は積雪しとる。とつぜん北に行って、還らぬ人たちになる訳にはいかん。しかし、ランフラットのスタッドレスは高い。しかもホイールごと買うしかないんだと。そして装着したなら、乗り心地はふにゃふにゃで、スパルタン度ゼロ。燃えないなぁ。僕はあの地面に密着したまま、更に密着しながら加速していく、あの感じに燃えるんだけどなぁ。まぁ、安全のためには仕方ないし、ディーラー氏も奔走してくれたし、ヨシとするしかない。でも、家に突然レーシングタイヤみたいなものがホイール付きで4本やって来た日にゃ、いったい何処に置けばいいのかね?悩んだ挙げ句、それは今、仕事部屋のギターの横に置いてある。かなりシュールな眺め。アーメン。

 閑話休題。今日は小坂忠さんのアルバム発売記念ライヴ。いきさつはともかく、招集されたのだから、行きますとも。「嗚呼、愛の赤紙」。僕は忠さん大好きだし。何よりも素晴らしいシンガーの横で演奏しているのは無上の歓びだし。マネージャー氏によって選曲された「昨夜の5曲」は殆ど意味がなく、忠さんのノリによって、全然違う曲目になったのであるが、相変わらず学ぶことは沢山ある。彼は富士山の裾野のように寛大でいて、誰よりも無邪気。「ヒロシ、一緒に旅に出ようよ」って、そんなこと云ったら本当に行きますよ。って云うか、それ、愉しそうだなぁ。ゲストの佐野史郎さんは忠さんの無茶振りで、「ほうろう」や「機関車」を歌ったのだが、本気になった時の重心の低さとか、一気にギアを入れる感じとか、さすがだなぁ、と。学ぶこと、多し。多分、このお二人に共通しているのは「本気の力」だ。それを感じた瞬間、僕の全身の毛が「ざわわ」する。そのような瞬間に反応できなかったり、燃えなくなったりしたら、音楽を辞めようと思う。今日もまた感謝です。

追伸
重たい一眼レフを持っていたにも関わらず、今日は一度もシャッターを押さず。でも、シャッターを押すことに意味がない、と思える日もあるのです。だって、脳味噌に刻んだ方が遥かに有益じゃん。

by 山口 洋