職人の意地

2010/12/14, 16:45 | 固定リンク

12月14日 火曜日 曇り 

 仕事場を移転するにあたって、屋根裏に収納されていたウゾームゾーの資料を全部整理した。何せ30年分だから、目眩がするほどあった。ひとつひとつを開封して、捨てて捨てて捨てまくった。そして、本当に必要なものだけを残し、年代別に箱に詰めた。現存する最古のポスターが出てきた。87年のものだから、23年前。僕は22歳か23歳ってことになる。あはは、と悶絶しそうに笑い転げて、この若者たち、なかなか覚悟がすわっとる、と他人ごとのように思った。
 音楽が簡易にダウンロードされる時代になった。それはそれで構わない。アルバムがまったく売れないと云われている時代に、若干無謀な数をプレスしてしまったとは思う。でも、「speechless」は全部の曲が繋がっていてこそのアルバム。ある意味、時代に逆行している。多分、配信もするけれど、曲をバラバラにして届けることは出来ない。ユーザーが音楽を聞く環境に関しては、こちらは選べないのであって、mp3に圧縮して聞いている人が居れば、それはそれで仕方がないと思う。どんな状況であれ、僕らは「音楽の本質」を届けなければならない。ただし、良質な再生装置で聞くほど、深みが聞き取れるように作ってある。それは僕ら職人の意地でもある。聞こえてくる「ひだ」のようなものは、僕らの心にある「ひだ」そのものなのだ。

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by 山口 洋