ベンダ・ビリリ、アゲイン
2010/10/16, 15:05 | 固定リンク
10月16日 土曜日 曇り
目覚めたら、ヤスは仕事場の居間でラジオを聞きながら眠っていた。車のディーラー氏は戦車みたいな代車を用意してくれた。機は整った。せっかくの戦車なんだから、出来るだけ多くの人を積載して、あの素晴らしい音楽を浴びに行こう。僕とヤスはベンダ・ビリリを松本まで観に行くことにした。週末の高速はひどい混みようだった。車中でヤスがローカル・コメディアンに徹して、笑わせてくれたおかげで、イライラすることもなく、どうにか開演に間に合った。この過剰なまでのコンパッションとホスピタリティー、どこかで感じたことあるなぁ、と思ったら、それはドニゴールの友人たちに共通するものだった。八重山とアイルランドは本当によく似てる。
さぁ、ベンダ・ビリリだ。この最新かつ豪華で、巨大な会場には別件で足を運んだことがある。でも彼らはそもそもオープンエアーの路上で音楽を奏でてきた連中だ。演奏が始まったとき、先日の日比谷の野外音楽堂とはあまりに違う響きに、ミュージシャンである僕でさえ戸惑った。おそらく今日はあの時とエンジニアも違うのだろう。アコースティックな響きを大事にしていた。僕の勝手な発想だけれど、彼らの音楽は「屈強のコンゴ魂」が奏でるノン・ストップのトランスミュージックだ。だから、あのドラム・キットとはおおよそ呼び難い手作りのパーカションから繰り出される「4つ打ち - 4分音符」が心臓にグイグイ食い込み、ブンブン唸るベースラインと共にグルーヴが渦巻き、その上に彼らが人生を賭けて紡いだ言葉が叫びとして乗っからなければ、踊る、笑う、何故か涙腺決壊と云うコースを辿るのは難しい。つくづくライヴとは一期一会なのだと思った。
もう故郷を離れてどれだけになるんだろう。あの過酷なスケジュールをあの身体でこなしてきたのだ。それを支えるスタッフも燃え尽きる寸前だろうと思う。けれど、後半、今日ならではのグルーヴが渦巻きだした。さすがだ。「屈強(かつ不屈)のコンゴ魂」。プロレスかよ?とも思えるこのキャッチコピーを考えたのは多分、僕の友人だが、その言葉通りに、大好きな段ボールの歌で野音とは違う波が押し寄せてきて、涙腺決壊。コンサートの後、トイレに行ったヤスがこう云った。「足に障害のある人に会ったんだけど、彼が「どうだ、俺の仲間がやってくれたぜ」と云わんばかりに誇らしげに歩いていたよ」、と。素晴らしいバンドにスタッフ。心からありがとう。この一週間、とんでもない力をもらってばかりだよ。
戦車は渋滞の高速を抜けて、東京に戻り、ヤスと友人が八重山そばの店に連れていってくれた。美味かった。この二日間、濃密だったなぁ。さぁ、自分のできることをやろう。ビバ、ニンゲン。
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