Mastering day #4、音楽は嘘をつかない

2010/07/26, 21:29 | 固定リンク

7月26日 月曜日 晴れ 

 亡父誕生日。マスタリング4日目。4th album 「No Fear」、1994年作品。

 「音楽は嘘をつかない。すべてはそこに刻まれる」。それが僕の実感。1992年に3rd album「陽はまた昇る」をリリースした後、僕は殆ど日本に居なかった。遅れてきた「何でも見てやろう」、あるいは「見る前に跳べ」。NYで居候を繰り返したり、世界中を流浪しながら、僕は新しい曲を書きあげていった。頭の中は破裂しそうなくらい、いろんなイメージで満たされていた。やる気満々で東京に戻り、アルバムの制作を開始した。が、しかし。他のメンバーとのテンションの相違はいかんともし難かった。ここに至るまでに、ある程度のセールスを記録してさえいれば、彼らとて、他の時間の過ごし方があったのかもしれない。僕は独り身だったから、ビンボーを楽しんで、自由きままに生きることができた。けれど、彼らにはそれぞれの生活があった。スタジオに入り、頭の中にあるヴィジョンを具現化しようとしても、まったくうまく機能しない。そして締め切り(物理的かつ金銭的な)は迫ってくる。仕方なく、曲によっては、僕はすべての楽器を演奏する決断を下した。
 そのような状況で作られたこのアルバムには「未熟さ」と野心と冒険心が刻まれている。けれど、この作品は初めて自分やこの国から「外に出た」アルバムでもある。「fear is the man's best friend」とジョン・ケールは歌っているけれど、ホリスティック・ビューを求めて、外に出た若者に一番必要な態度が「No fear」だったことは間違いない。

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by 山口 洋