怪傑魚さん現わる

2006/06/30, 21:34 | 固定リンク

 
6月30日 金曜日 晴れ 

 完全に煮詰まって、黒焦げになっていたところに、怪傑(っちゅー感じでもないか)魚さん現わる。彼はひょいひょいと新しい音楽の流れを構築して、帰って行った。俺が主観と客観を繰り返してるうちに、染み付いてしまった固定観念を見事に破壊。そこに立ち現れてきたのは、「切なさ」のフロウだった。流石だ。

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by 山口 洋  

確かな光

2006/06/29, 22:54 | 固定リンク

6月29日 木曜日 晴れ 

 昨日、俺は確かな光を観たはずだった。でも、出口は遠かった。また混迷の世界に逆戻りって訳だ。しゃーない。ここまで来たら、とことんまで行くしかない。
 昨夜、悪友からの誘いに乗った。「深酒にならないならいいっすよ」。確か、そう応えたはずだ。でも、しっかり飲んだ(気がする)。タラモアデューとブラックブッシュをロックであおった。多分。おかげで、俺は14時間ぶっとうしで寝た。多分、睡眠が足りてなかった。魚先生に音を送った。リプライ。「ところで、その方向性はどうなの?」。「ほ、方向性すか?」。俺は根本的なところから足を踏み外していたんだろうか?軽く目眩がする。もう明日は先生に来てもらおう。俺の手には負えなくなってきた。限りなくシンプルな音楽なのに、どうしてだ?彼はアプローチが80年代的だと云った。は、80年代。そりゃマズいぜ。俺は80年代の音楽はあんまり好きじゃない。猫も扚子も「すっぱーーーーーーん」ってリバーブのかかった音楽は気恥ずかしさを感じることがある。

 夏の気配。湿気と暑さが相まって、地下の部屋に迫ってくる。軽く苦しい。たまらず半ズボンにシフトした。髪の毛はラーメンの小池さんみたいになっている。煮詰まって散歩する時は雪駄を履く。職業不詳、年齢不詳。うう。
 

by 山口 洋  

生きるとか、死ぬとか

2006/06/28, 18:03 | 固定リンク

6月28日 水曜日 晴れ 

 ようやく暗くて長かったトンネルを抜けようとしている。表現しようとしていた世界がとんでもなくヘビーなものだったから。でも、向こうから確かに光が漏れてくる。そちらに向かって歩いていく。もうすぐだ。そんな予感がする。何かを創るってことは、時に決して入ってはいけない風穴の暗闇の中に、自らの意思で突入していくようなものだ。だから、猛烈な体力と忍耐を強いられる。強い気持ちを持っていなければ、その渦の中に巻き込まれて戻ってこれなくなることがある。自分にとってのコンパスとも云えるもの。それは「エスポアール」であり、「光」である。
  シンキ臭い話になるけど、この何年かと云うもの、好むと好まざるとに関わらず、否応なしに「死」を見つめなければならなかった。それが多分、人生と云うものなんだろう。だから、とことん見てやろうと思った。アホな歌を書こうとしたし、軽い歌も書こうとしたが、自分にはまったくリアリティーがなかった。あぁ、こりゃ、このトンネルを抜けなきゃ、明日はないんだと、本能的に理解した。ルー・リードの近年の曲に「俺を下取りしてくれ」っちゅー素晴らしい表現があるんだけど、そこに行くには、ここを抜けなきゃ、って事だと思った。入っていた風穴は我ながら深くて複雑なものだった。「俺、毎日何やってんだろ?」と思ったけど、この曲は多分、新しいアルバムの核となるものだ。だから、逃げる訳にはいかなかった。あぁ、下取りして欲しい、本当に。でも、もうすぐだ。海が見えそうだ。潮騒と、磯の香りがここまで漂ってくる。

by 山口 洋  

今日まで、そして明日から

2006/06/25, 23:00 | 固定リンク

6月25日 日曜日 晴れ 

 若者の音楽に取り組みながら、ギターを握って、今日に到るまでの日々が頭の中に流れていった。いろんな事があった。でも、俺は相変わらず、こうやって音楽の事を考えているのが好きだ。熱くならなくなったら、すぐにでも辞めるだろう。
 一生のうち、どれだけの音楽を生み出すことが出来るんだろう?あるいは、どれだけの音に関わることが出来るんだろう?
 どこかで誰かが耳にするかもしれない。そう思うと、デモだろうが、何だろうが、思わず全力で突っ走ってしまうのが、哀しい性かもしれん。でも、それでいいのかもしれん、とも思う。若者に未来があるように、俺にもそれはあるはずだ。誰にでも、それはあるはずだ。

by 山口 洋  

モグラビトその後

2006/06/24, 23:04 | 固定リンク

6月24日 土曜日 晴れ 

 すっかりダイアリーの更新が滞って申し訳ない。
 ヒートウェイヴのミックスだけで、いっぱいいっぱいになっていたのに、19歳の若者のプロデュース、演奏、ミキシングっちゅーこともやってます。猫まっしぐら、いや違った。猫てんてこまい、いや、猫も手も借りたい。でも、彼は才能に溢れてるんで、愉しい作業ではあります。もう少し時間の余裕さえあれば。にゃん。

by 山口 洋  

the basement tracks

2006/06/21, 23:02 | 固定リンク

6月21日 水曜日 曇り 

 吉祥寺でのライヴを終えて、俺はまた地下人になる。モグラビト。ちょっとだけ頭がおかしくなりそうである。行ったり来たり、閃くまでウンウン唸って、閃いたものがしょ−もなくて、またモグラビト。ホンカクテキに頭がおかしくなりそうである。ふと鏡を見やると、俺の頭はシモンマサトみたいになっていた。アーメン。

 どうしようもない時は、魚先生にネットで音を送って泣きを入れる。ありとあらゆる可能性を探ったはずだったけど、もうひとつだけあった。ん?いいぞ。いいかもしれん。そうやって、俺はまたモグラビト。アーメン、アゲイン。

by 山口 洋  

吉祥寺にて

2006/06/19, 16:57 | 固定リンク

6月19日 月曜日 曇り 

 久しぶりの外界は新鮮だった。ステージに立ってるうちに、自分の本分が蘇ってきた。やっぱり地下で「根切りもやし」みたいになって、音楽を作ってることじゃなかった。リハビリも兼ねて、久しぶりに電車に乗った。すっかり人々は半袖になっていた。し、知らなかった。山で書いた新しい歌は、手を加える必要があった。っちゅーか、まだ自分のものになってはいなかった。い、いやぁ、きんちょーしたぜ。「life work」はもっと気軽に音楽を楽しめる場所にしたいと思ってる。会場のスタッフも今時珍しく音楽に理解がある。それが嬉しい。普段、俺は汗をかかないんだけど、蓄積されてたいろんなものが吹き出してくる。ライヴが終わる頃にはバサバサだった肌がスベスベになっていた。(本当だってば)。多分、肉体と精神のバランスが取れたんだろうね。
 
 とにも、かくにも。ミュージシャンにとって大事なのは、人前でコンスタントに演奏してることです。痛感しました。だから、「on the road,again」みたいな本数は無理かもしれないけど、年内にもう一度、ひとりで全国を廻ろうと思ってます。書いた曲をあちこちで歌って、仕上げて、それを録音して、新しいアルバムをみんなに届けたいと思ってます。会場でも流したけど、新しいシングル「明日のために靴を磨こう」。完成しました。永い年月を経て、まったく違うものになっています。7月のツアーには、それを持って行きます。収録された3曲はそれぞれの方向に振り切れています。「now and then」。アルバム発売前のバンドでの最後のツアーになります。ヒートウェイヴはえぇバンドです。強力に違う個性が音楽を奏でてること。求めていたミラクルに近づいてきました。みなさんがそれぞれのやり方で楽しめる場所にしたいと思ってます。日々に忙殺されて、音楽から足が遠のいている人たち。いまひとつ身体や心の調子がすぐれない人たち。是非、足を運んで欲しいのです。音楽に答はないけど、力があります。僕らはバカみたいに、それを信じています。
 
 とにも、かくにも、アゲイン。きっとワールドカップで寝不足のところ、ライヴを観に来てくれてありがとう。楽しんでくれたかい?ライヴっていろんなことがあるし、おまえ、その音程はないだろうとか、自分で突っ込みたくなる事もあるけど、音楽をやってる時、「生きてる」って実感させてもらってること。「おー、俺は生きてるぜー」と心の底から思うこと。それは何よりも力なのです。ありがとう、アゲイン。

追伸
 ウチの犬、ハナに沢山の心遣い、メッセージをありがとう。この場を借りて、お礼を云います。奴は沢山の想いに囲まれて、幸福です。ワン。

by 山口 洋  

雨のカリフォルニア

2006/06/17, 23:27 | 固定リンク

6月17日 土曜日 雨 

 「雨のカリフォルニア」。ずっと、その風景に向かう。マネージャーから今年のスケジュールが送られてきた。目の前の事に夢中になっていたけれど、それを見て、軽く目眩がした。でも、考えようによっちゃ、一年中、ヒートウェイヴ漬けになってるってのは幸福かもしれん。

by 山口 洋  

紫陽花

2006/06/16, 18:41 | 固定リンク

6月16日 金曜日 雨 

 この季節、太陽は殆ど雲に隠れている。ましてや俺はずっと地下の仕事場にこもりっきり。音楽が完成に近づくと、ipodに入れて、散歩をしながら聞いてみる。どんよりした空、通り過ぎる人々の表情。携帯、見えない無数の電波、配達中のトラック、赤い傘、求めていたものはほぼ表現されていた。嬉しかった。
 紫陽花がしずくに濡れて咲いていた。近寄って見てみる。ちょっと怖いんだけど、至近距離で眺めていると、宇宙に見えてくる。生命力に溢れてる。トシを重ねると、見えてくるものが変わる。この季節に紫陽花なんて咲いてるのは当たり前で、気に留めたこともなかった。でも、梅雨には梅雨の良さがある。うっとうしいけど、多分ある。きっと陰鬱な音楽の中にある光にも、意味があるのさ。と、呟いてみる。

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by 山口 洋  

オーディナリー・ライフ

2006/06/14, 17:51 | 固定リンク

6月14日 水曜日 曇り 

 「てめぇ、ダイアリーを更新せんと、死んどるんやないかって心配するやんけ」的メールを沢山頂いております。あの。大丈夫です。死んでませんから。ずーーーーーーーーーーーーーっと、地下の仕事場にこもって、音楽に向き合ってる日々です。色気ありません。見ているのは、以下の写真のような光景だけです。書くことないのです。そのような日々の中では。この部屋には4つのモニターがあって、それらがブレードランナーのように不気味な光景を醸し出しております。音楽用のモニター、連絡用に常にネットに繋がっているモニター、思いついた事を書きなぐるためのモニター、そして、ワールドカップは放映されている全試合が音を消して、常に映し出されております。メキシコーイラン戦は、音楽やってる場合じゃなくなって、仕事を中断しました。
 えーっ。とはいえ、「strikes back」シリーズ第二弾。本日マスタリング完了予定です。収録された3曲すべてがいろんな方向に振り切れています。ジャケットも秀逸です。近いうちにアナウンスできると思うんで、楽しみにしていて下さい。19日は久しぶりのライヴです。ずっと、地下で根切りもやしのようになっていたので、そろそろフィジカルなコンディションを上げていこう(って書くと、大したことみたいだけど)ー要するに散歩しようと思っております。

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by 山口 洋  

rainy days

2006/06/11, 19:08 | 固定リンク

6月11日 日曜日 雨 

 梅雨って英語で何て云うんだろうね?一年で一番苦手な季節が本格的にやってきた。有象無象に楽器が保管してある小部屋の除湿器も半日くらいで、水で満たされる。したたるような雨音の調べ。濡れる新緑の匂い。こんな時は抗っても仕方ないから、気の向くままに音楽に向かう。するとどうだろう。前の曲は10日もかかったのに、あっと云う間に「雨の日々の風景」がスピーカーの間から立ちのぼってきた。ラッキー。

by 山口 洋  

離脱

2006/06/10, 23:11 | 固定リンク

6月10日 土曜日 曇り 

 とある曲のミックス、本日最後の手直しを入れて、ようやく離脱。ったく、何日それにかかり切りになってたことか。トホホ。
 

by 山口 洋  

Comfort Of Strangers

2006/06/09, 18:28 | 固定リンク

6月9日 金曜日 雨 

 Beth Ortonのアルバムを聞いてる。何の飾りもギミックもなくて、シンプル極まりないんだけど、素晴らしい。音楽にはその人となりが表れる。虚勢のない音楽って、風や雨や陽の光みたいだ。女性の音楽に良くある「メスの香り(失礼)」もしない。
 弱冠19歳のミュージシャンが遊びにきてくれた。1987年生まれ。父上は47歳とな。しばし絶句。眼を輝かせて、ウチにあるブズーキやマンドリン、ドブロやバウランを演奏してた。どんな時代でも、その感性が音楽に表れる。渋谷を闊歩している多くの若者と違う輝きを彼は持っていた。ちょっと嬉しかったな。
 

by 山口 洋  

鳴らぬ鍵盤

2006/06/08, 23:40 | 固定リンク

6月8日 木曜日 雨 

 友よりメール。訃報。ビリー・プレストンが亡くなったと。小学生の頃、「let it be」を何故か福岡市天神のフタタっちゅー洋服屋で観て以来、彼の鍵盤が好きだった。もしも鍵盤がギターみたいに弾けるなら、あんな風に弾きたかった。R.I.P。
 先日録音した、とある新曲。魚先生が「どうしても、このフレーズ弾きたくなるんだよね」と。記憶が正しければ、それはビリーが「don't let me down」をアップルレコードの屋上で弾いてた、そのフレーズだった。ありがとう。

by 山口 洋  

我が道を往く

2006/06/07, 23:47 | 固定リンク

6月7日 水曜日 曇り 

 近藤智洋から、その名も「近藤智洋」と云う身も蓋もない名前のアルバムが、ソウル・フラワー・モノノケ・サミットからは「デラシネ・チンドン」と云う、それぞれの新しいアルバムが届いた。両者の音楽は交わるところは少ないのかもしれないけれど、己の頭蓋に渦巻くものに、純度100%で立ち向かっていると云う意味において、例えようもなくワンダフルである。もう一度書くけど、ワンダフルである。貫かれている。振り切れている。痛快である。巷で良く聞かれる「勇気をありがとう」と云う表現は好かん。でも、友人たちのこのような音楽には、ぶるっと勝手に奮い立つものがある。これらの音楽が突然街で流れ出したら、俺にはドブ川に映る夕陽のように輝いて見えると思う。ありがとう。その光景を夢想しながら、俺も自分の道を行くよ。
 

by 山口 洋  

search and destroy

2006/06/06, 22:57 | 固定リンク

6月6日 火曜日 曇り 

 「見つけては、壊す」。面倒くさい、とか、ややこしい、とか。そんな風に云われることが多い今日この頃。
 でも、音楽をやってるのは、ありえない「希望」を描きたいからじゃない。だから、「見つけては、壊す」。ありそうで、なさそうな、その場所に辿り着くまで、ただ、その繰り返し。ほぼ出来上がったものを持って、魚先生の家を訪ねる。夜、話し合って出した結論は「search and destroy」。それでいいと、俺は思う。こんな思考が可能になったのも、「Album project」のおかげだと、感謝してる。ありがとう。
 

by 山口 洋  

路傍の石から見上げる空

2006/06/05, 19:42 | 固定リンク

6月5日 月曜日 晴れ 

 寝ても覚めても、ミキシングの日々。
 10ウン年前に書いた曲を新たに録音した。過去の曲をリイシューすることは、自分への背信行為だと思ってた時期もあったが、さんざん歌われ、磨きをかけられ、己もトシを重ねて、まったく違うものになることもある。ヘコんだ日々の間、まるで他人の音楽のように、その曲に込められたものが自分を励ますっちゅー、ヘンな構図の中に居た。ほぼ完成に近づいて、その二つを比べてみたんだけれど、まるで、違う人間が演奏してるみたいだった。昔のバージョンが当たりもしない「猫パンチ」を必死に繰り出しているとするなら、今のバージョンは旅路の中途、路傍の石に座って、流れていく雲を見上げているようだった。どちらにも、それなりの良さがあるし、大切な会合の前に、ジーパンを洗うのと、踵のすり減ったものであろうと、靴を磨きたくなることは変わらない。

by 山口 洋  

ペロペロの刑

2006/06/04, 23:39 | 固定リンク

6月4日 日曜日 晴れ 

 沢山のメッセージをありがとう。
 犬が居なくなって、自分でも情けない位のダメっぷり。遠くにエスケイプしようとも思ったが、その気力さえ湧いて来ず。結局のところ、音楽に対峙して、ミックスにいそしむしかなかった。この音楽バカ。
 あまりの情けなさに嫌気がさしていたところに、旧知のIさんが相棒のラブラドール、タオ君とやってきてくれた。タオ君は俺の心を見透かしたのか「いつまでクサクサしてんだよー、犬にはさー、余命とかさー、ターミナルケアとかさー、そんな観念ないんだよ、ワンワン。愉しい思い出とかさー、今を一生懸命生きるとかさー、誰かをまっすぐに愛し続けるとかさー、そういうことなんよー、ワンワン」と云いながら、俺の顔をペロペロ舐めるのだった。ペロペロの刑は効いた。バツグンに効いた。うっしゃー。俺もまっすぐ生きるぞー。って、あんた。単純ですいません。

by 山口 洋  
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