名古屋にて

2005/12/09, 22:04 | 固定リンク

12月9日 金曜日 天候失念 

 いやぁ、ハードな旅だった。デビューした頃の無鉄砲なツアーを久しぶりにやった感じだ。思い返せば、俺も渡辺某も、良くもまぁ、あんな無茶な事をして、今まで生きてるもんだと思うのだが、ひっさしぶりぶりにそれに近い感触があった。って、俺がこれを書いてんのは12月11日。書き留めておかないと、忘れそうだよ、もう。
 12月9日。朝8時、渋谷で車に乗り込んだ。朝8時集合ってのはミュージシャンには「死」を意味する。つまりほぼ寝ていないっつーことだ。昼頃、名古屋に着いた。このトリオのツアーはまったくリハーサルをしていなかった。最近のバンドの音は魚の役割がとても大きい。それなのに、彼が居ないってのは、「足をもがれたバッタ」になる可能性があるってことだ。ひえーっ。おまけにこのシリーズは限りなく少ない機材でどこまで演奏できるかってこともテーマのひとつなのであった。別にマゾじゃないけど、もしそれが可能なら、どんな小さい街だって、バンドで行けるってことじゃないすか。そうあなたが住んでる街に。PAなんてなくても。政令指定都市しか廻ることができないツアー、とか、ずっとおかしいと思ってきた。音楽ファンは都会にだけ居る訳じゃないのに。俺はルースターズを自分の住んでる街で確か500円で観た時に、確かに何かが変わったのだから。
 俺は車の中で考えた。このトリオならありものの機材でも、すげーロッキンな演奏をするだろう、と。しかし、会場でちょっと音を出しただけで、その方向が間違っていることに気づいた。だから、小さい音で、全員の調和とダイナミクスを大事にする演奏に切り替えた。ない音はないのだ。ならば観客にそれを想像してもらえばいい。押してもダメなら引くのだ。俺たちは全員リハ嫌いなのに、会場で思いっきり練習した。未だかつて、あんなに真面目に当日リハーサルをやったことがないっちゅーくらい。しかし、池畑兄はさすがに歴戦の強者だった。会場のタイコをチューニングしていくうちに、だんだん彼の音になってくるのだ。すげぇ。
 で、本番になった。何だよ、ぜんぜん問題ないじゃん。サッカーで云うと、スペースが沢山あるから、どこにでもパスを出せる。イメージを共有してれば、ミラクルなパスの連携ってものが出来る。久しぶりに自分がギタリストでもあったことを思い出した。適度な緊張感とフリースペース。魚が居るバンドとは違う音だ。そして、魚と俺が二人でやる時はまた違うバンドになる。4人でやればもっとゴージャズになる。素晴らしいじゃん。うーん。燃えたよ。ミュージシャンとして。ちょっと大変だったけど、俺たちは新しい可能性を発見した。嬉しかった。結局、コンサートの終わり頃には轟音暴走バンドと化していた。うん。それでいいのだ。
 昔から世話になってる小屋だ。みんな暖かくもてなしてくれてありがとう。それから仕事を休んで、あるいは遠隔地で、俺たちのために力を尽くしてくれた人たちにも礼を云います。そしてもちろん足を運んでくれた人たち。ありがとう。俺たちに出来る事はいい音楽を作り、それを演奏し続けることだと思ってます。愛を込めて。
 名古屋を出た時はもう午前0時を廻っていた。そして雪が降ってきた。無茶な行程だった。金沢に着いたのは午前5時。死んだように寝た。そうそう、車内で魚に連絡して、彼の偉大さをあらためて知った
ことを報告したことを付け加えておこう。


 

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by 山口 洋