新しい音楽のあり方

2005/12/23, 23:55 | 固定リンク

12月23日 金曜日 晴れ 

 休日だと云うのに、働いているウチのスタッフから、午前6時にHWニューアルバム・プロジェクトの状況が送られてきました。ツアーの会場やネット、あるいは郵便振替を通して、理解や賛同してくれた人々が少なからず居ること、心から嬉しく思っています。本当にありがとう。そのおかげで、何とか来年初頭にワン・クール目のレコーディングに突入できるメドが立ちつつあります。アルバム完成までに、レコーディングを3つから4つのクールに分けて、いろんな可能性にチャレンジしたいと考えています。
 ヒートウェイヴには大まかに云って、二つの録音方法があります。1つ目は「熱いうちにせーのでパっと録る」方法。ロックンロールの醍醐味です。最近のもので云うと、ルースターズ・トリビュートの「do the boogie」はたった1回の演奏で録音されました。何かを足す必要を全く感じなかったので、あまりに長かったものを編集して、僕がミックスしました。そして、もうひとつは天才細海魚が得意とするところの、「一度録音したものを、寝かせて、熟考して、仕上げていく」方法です。それは食品で云うところの「発酵」に似ています。同じく、ルースターズ・トリビュートの「in deep grief」は1度か2度演奏したものが、すべて魚の脳味噌に委ねられ、阿蘇の山中と、東京の街の中で、彼の才能とコンピュータを駆使して仕上げられました。つまり、同じ演奏でも、全くテイストの違うものが出来る可能性がある訳です。今までのレコーディングでは、締め切りに圧迫され、クールを分けることが出来なかったため、それらの可能性を試してみることが出来ませんでした。今回アルバムの制作に約一年の期間を設けているのは、一連の作業の中から湧き出てくるいろんなものを、全て音楽にもう一度フィードバックして、アルバムの完成度を高めたいと云う理由からです。当然の事ながら、制作の過程で、生まれてくるものは一枚のアルバムには収まりきれないと思います。突然テクノをやってしまうかもしれないし、その反動で、あり得ないくらい静かなものが生まれてくるかもしれません。ですから、どういった形でかは不明ですが(おそらくマキシ・シングルや配信のような形になると思いますが)、アルバムがひとつの作品として完成していくまでの過程を、音楽の可能性の広さをそのクールごとにみなさんに届けられたら、と考えています。我々が一番大切にしたいと考えていることは、音楽に対して「honest」であることです。なにぶん、初めての試みなので、暗中模索な部分も多々あります。我々はようやく第一歩を踏み出したに過ぎません。引き続き、多くの方の賛同をお待ちしています。
 そんな意味で、丸山茂雄さんがおそらく私財で設立したmF247のようなネット上の新しいメディアに注目しています。いい加減なことは書けないので、詳細は以下のURLに直接アクセスして欲しいのですが、ここでは審査(全ての音楽に門戸を開くと云っても、ある程度のクオリティーは必要だと思います)を通過した音源を無料でダウンロードすることが出来ます。ジャンルも何も、垣根がありません。我々の世代はラジオで育ちました。レコードを買う金に窮していたので、ラジオから流れてくるものを録音して、擦り切れるまで聴いて、そしてどうしても欲しくなったものを、寂しい懐から身銭を切って買っていました。アルバム全曲、フルコーラス流れることもありました。DJが音楽にのっかって喋る、あるいは曲の途中でCMへ、なんてことも稀でした。音楽への愛情が確実にそこにはあったのです。それは結果的にレコード会社にとっても、もっとも効果的かつ、「honest」なプロモーションだったと思っています。実のところ、丸山さんは僕らがEpic Sonyと契約した際の長でした。彼は「お前たちは5年間好きにやれ」と云いました。その言葉通り、僕らは5年間、好きにやらせてもらいました。その後、我々はポリドールに移籍し、氏のその後の動向も詳しくは知りません。ただ、彼がこの業界に於いて、素晴らしく頭の回転が早く、何よりも「honest」な人物であることは間違いありません。ラジオが僕らにとって、その役目を終えつつある今、このような「honest」なメディアと積極的に関わっていけたら、と思っています。また、このような動きはミュージシャンである我々にとっても「励み」と呼ぶにふさわしいものです。

https://www.mf247.jp/view/index.php

by 山口 洋