「至上の愛」、高岡にて。

2006/02/19, 23:51 | 固定リンク

2月19日 日曜日 晴れ 

 昨夜、ハープをレコーディングして、「うっしゃー、これで終わりじゃー」と思っていたら、魚先生から電話で「じゃ、ひとつブズーキも」って事で、目眩がしたが、人力テクノにブズーキをダビングすると云う、彼の意味不明なアイデアはとても魅力的だったから、最後の力を振り絞ってやってみることにした。とは云え、全てのやりとりは電話によるものなのだ。お互いの頭に浮かんだフレーズも全て電話でっつー前代未聞のものだった。多分、体力、集中力ともに、無駄な事をやれるだけのものは残っていなかったので、4種類のブズーキを弾いて、無事魚先生にファイルを渡すことが出来た。しかし、意味不明であればあるほど燃える人種ってのも奇人変人なのかもしれんね。はは。何にせよ、俺はツアーに魚はリミックスにと、バンドは日本のいろんな場所で獅子奮迅にがんばってるのである。
 
 ツアーは北陸に突入。午前中の飛行機で富山空港へ。東北の地獄の移動を経験した身としては、この40分の空の旅がどれだけ楽に感じたことか。明日の金沢が終わったら一旦東京に戻る行程にしたので、荷物も北海道ー東北よりも激減。窓からは富士山や立山連峰が見える。きれいだなぁ、とか。人間って勝手だなぁ、とか。
 空港にはサラリーマンW君の出迎え。会場のある高岡市に向かうまで、いろんな話をした。高岡って知らない人も多いよね。かく云う俺もそうだった。アルミ産業を主とする人口18万の街だよ。街のいろんなところから雪を頂く立山連峰が見える。いざって時、自分の暮らしを俯瞰できる山があるってのは、それだけで落ち着く。それがビルなのか、山なのかってのは、俺にとっては死活問題だ。W君は、このライヴの構想を5年間温めてたんだってさ。2000年に黒部市でライヴをやってから、北陸に沢山応援してくれる人たちが増えた。本当に嬉しい。俺はね、北陸が肌に合ってる。何でか分からないけど、無駄なテンションが一切無くなる。フツーの自分で居れるんだ。
 会場のジャズ・カフェは驚くなかれ、田んぼのど真ん中にあった。こ、ここにどうやってお客さん来るわけ?と思ったが、それは都会の発想であって、みんな車でやって来るらしい。マスターはとってもシャイな人なんだけど、きっと音楽が好きなんだろうなぁ、とか。このツアーは何処に行っても、音楽の好きな人ばかり。ほら、ここにも、また。会場を一目見て、また余計なテンションがなくなった。本当のところ、疲れてたんだ、俺は。でも、今俺が出来ることをやればいいんだってことを、会場やW君や沢山の手伝ってくれてるスタッフから教えられた。
 小さな子供から、年頃のお嬢さん方や、ライヴの間じゅう俺が突っ込んでたおばさま方、そして、鋭い目で俺を見つめてる連中とか、エトセトラ。ファンはもちろんのこと、街のいろんな人たちが会場を埋め尽くしてくれてんのが、嬉しかった。だから、俺はそのような選曲をした。無理にテンションを上げなかった。泣いてる人は居る、居眠りをかましてる客は居る。俺を睨んでる奴はいる。おしゃべりしてるおばさまは居る。それでいいのさ。昔、俺がやってたラジオを(かれこれ10年以上前の話なんだけど)を聴いてた人たちが複数居たのも嬉しかったな。あ、届いてたんだって。今頃返ってくる何か。あの頃は毎週深夜、生で2時間やるのはそれなりにしんどかったんだけど、やってて良かった、と単純にそう思う。こうやって10年経過しても、忘れずに観に来てくれる人が居る訳だからね。
 何にせよ、W君の仕切りは5年に渡って構想を練ってただけあって、完璧だった。地元に、音楽を愛する店が田んぼの真ん中にあって、いろんな人たちがやってきて、美味しいものを飲んだり食べたりしながら、音楽を楽しむ。それは書けば当たり前の事なんだけど、なかなか難しいんだよ。ライヴが終わった頃には俺はすっかり元気になっていた。音楽の力はすごいもんだね。でも、きっと明日は全く違うライヴになるんだよ、はは。
 ありがとう。いつもこれしか書けないけど、ありがとう。マスターが店の名前が恥ずかしいって云うから、書かないけど、本当に素晴らしい空間だったよ。でも、それは彼やそこに集う人たちが作り上げたものだよ。W君は云うまでもなく、今日もまた多くの力を貸してくれた人々。本当にありがとう。いつも、いつも同じ事しか書けないけど、新しい音楽の中にその気持ちを込めます。でもって、また帰ってきていいすか?云われなくても、また来るけど。多謝&再見。願わくば、みなさんがそれぞれのハピネスと共に夜を迎えていますように。高岡のホテルにて。
 
追伸
写真はすべて、飛行機の中から撮影したもの。この国って美しいよ。
たまに、自然を見てて、そう思う。

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by 山口 洋