春の匂い、名古屋にて。

2006/02/22, 23:04 | 固定リンク

2月22日 水曜日 晴れ 

 わずか10日余の間に北海道から南下してきたのだけれど、名古屋でさえ、随分南に来た気がする。陽射しも、空気も、何もかも。もう既に春の匂いがする。
 
 新幹線とタクシーを乗り継いで、小屋にやってきた。いい感じにユルい。久しぶりに(多分20年振りくらいかな)モニタースピーカーもなかった。でも、俺もこの旅で随分タフになったのだった。その位は技量と愛で乗り越えられる。会場は高架下にあって、頭上を電車がガンガン通る。その昔は画家のアトリエだったのだそうな。そう云えば、創作のエネルギーに満ちてる。企業臭がプンプンするピカピカのでっかい箱より、俺はこっちの方が好きだったりする。第一楽屋もないから、逃げる場所もない。だったら、お客さんと触れ合えばいいじゃん、と思う。

 この箱はでかい音が似合わない。だから、ツアーの中で、一番小さな音で演奏した。PAブースは俺の頭上にあって、エンジニアは音を確認することもままならないのだ。でも、問題はそんな事じゃない。例えば10年来の友人が物販を買ってでてくれたり、亀山の某Mに再会したり、佐野さんとのポッドキャストを聞いた輩がインタビューに来てくれたり、アップル・コンピュータの人が同じくそのポッドキャストを聞いて駆けつけてくれたり。世の中はいろんな風に繋がってる。だったら、流れに身を任せて、出来ることを楽しんでやることでしかない。
 このツアーがもたらしてくれたもの。それは例えば、街や人や箱に引っ張られるってことだと思う。そこに身を委ねて、自分の引き出しの中から最良のものを出す。そうすれば、同じライヴはなくなる。全てが違ってくる。それが「自由」って言葉の意味のような気がしている。名古屋、ありがとう。この街には何度も来たけど、そのどれとも違う演奏だった気がしています。

 そうそう。今回のツアーを支えているたった一本のギター。それは名古屋にほど近い岐阜は可児市にあるヤイリギターの職人が作ってくれたものです。北海道ではさすがに寒さにびっくりして、チューニングが狂ったりしたけど、過酷なツアーにもメゲず、弦も一度も切れることなく、俺のお供を努めてくれています。どんな箱にも調和して、俺のイメージ通りの音を出してくれるようになりました。人間と同じく、ギターも育つのです。たった1本のギターで、2時間のライヴのダイナミクスをつけることが出来るのか、始めは半信半疑でした。でも、このギターなら問題ないのです。ありがとう。大切にします。

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by 山口 洋