奇人変人列伝#2、三重県桑名市にて。

2006/02/23, 18:42 | 固定リンク

2月23日 木曜日 晴れ 

 三重県桑名市。寅さんが泊まっていそうなホテルに居ます。フロントのおじさんはきっとLANケーブルが何なのか知らないと思うけど、ちゃんとネットに繋ぐことが出来ます。ちょっとカンドー。
 蓄積された疲労も、もう峠を越して、何が何だか分からなくなってきました。でも、音楽をやると不思議と元気になる。せめて一日でも休みがあると、かなり復活するとは思うんだけどね。

 さ、三重県に居ます。俺は三重が好きなんだ。行ったことのない人は分からないかもしれないけど、三重県は広い。名古屋の方から入っていくと、どんどんディープになっていく。そして土地には不思議なエネルギーがあるんだ。立ってるだけで、俺の身体が何かを感じ取る。もちろんそんな場所には奇人変人がウヨウヨしてる。(あの、褒めてますから)今日の小屋は三重の玄関口、桑名にある。オーナー姉弟とはもう10年来の付き合いになるかな。実直で素敵な姉、救いようのないアホな弟、でもとっても可愛い奴。

 まずは地元のシンガー、吉元君が歌ってくれた。今日が初めてのステージだったそうな。きっと思い通りに行かなかったんだろうけど、俺は26年やってても、未だにそうだよ。だからこそ、続けていられるんだと思う。心配するなよ。きっと大丈夫さ、君が音楽を愛してるなら。
 そして、俺の可愛い妹分(本当に心がきれいな奴なんだ。あんな妹が居たら、いいなぁといつも思う)と小向定君が歌ってくれた。定君の何が素晴らしいって、音に無理がないところが。彼のこれまでの人生がその音楽に凝縮されてる。改めて、いろんな事を教えられたよ。ありがとう。

 さて、と。俺?俺はね、このツアーでいちばん苦戦したよ。昨日の会場は頭上に電車が走ってた。今日は窓の外を車がびゅんびゅん走るんだ。甚だ会場に引っ張られる俺としては、それらとどう響き合っていいのか全然分からなかった。まだまだ甘いね、俺も。俺の兄弟みたいな、マサルが(最近彼は舞踏をやってる)俺の曲で踊りたいと云った。だから、やってもらった。いやぁ、あり得ないよ。でもきっとマサルの身体は今表現に向かってんだね。うまく行ったかどうか、不明だけど、俺は愉しかったよ。ありがとう。結局、会場のお客さんたちに助けられたライヴだった気がする。この小屋がコミュニティーの中で、不可欠な存在になっていきますように。店主、平田姉弟のモーレツな働きっぷりを見て、俺はそう思わずに居られなかった。沢山の足を運んでくれた人たち。本当にありがとう。

 そうそう。平田の発案で、最後に「満月の夕」を全員で演奏した。あまりにも多種多様な人たちが居たから、俺は定君とグルーヴを作ることに集中した。あはは、あり得ないレゲエ・タッチの曲になってけど、それでいいじゃん、と俺は思う。音楽にタブーはないのさ。

 嬉しかったこと。ひどいアトピーに悩んでいた可愛い妹分その2。一時、危篤状態までなったんだそうだけど、まっすぐ前を向いて、それを乗り越えた。そして、新しい仕事を得て、その給料でチケットを買って、ライヴを観にきてくれた。嬉しかったよ。ひどい病のさなかに居る人たちが音楽や誰かの言葉を支えに生きているのだとしたら、俺がここでヘタレてる場合じゃない。逆に力をもらってるのは俺の方かもしれんしね。ありがとう。そしておめでとう。life goes on だよ。ヒッキー。

 今日は平田姉弟と積もる話があった。だから、最後まで店に居て、飲んだ。どうやってホテルに帰ったのか、覚えてないけど、いい時間だった。姉弟に幸あれ。この小屋が歴史を積み重ねて、みんなに愛されますように。

 午前6時。携帯にベロンベロンに酔っぱらった平田弟からメッセージが入っていた。「おう、ヒロシ。何でーゆきてかえらずーやらなかったんだよ! あの曲は名曲なんだよ。ちゃんとやれよな。No regrets!」。奴は飲むと強気になるのが悪い癖だ。はは。分かった分かった。じゃ、今度な。飲みたい気持ちは分かるけど、お前も身体に気をつけろよ。バカ。

追伸
 この旅の途中で出会った人々の数。すんごい事になってます。だってもらった名刺の数、半端じゃないんだもん。俺は名刺すら持ってないし。お礼の手紙も書けず、心苦しく思ってます。この場を借りて不義理をお詫びします。



 

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by 山口 洋