ハコの神様と狂乱のヒロシ'ズ・ナイト、広島にて。

2006/03/05, 22:40 | 固定リンク

3月5日 日曜日 春の陽光 

 福山のホテルで目覚めて、駅前のコーヒーショップで飯を喰った。地方都市の晴れた日の昼下がりって、本当に幸福な風景だよ。ノー・テンション、ノー・プレッシャー。乗った「こだま」は博多行きだった。このまま九州に帰りたいと、もうひとりの俺が云う。昔ね、どんとさんが云ってたんだ。「俺はのぞみに乗ると疲れる。人間には単位時間あたりに移動していい距離ってもんがあって、俺はこだま以上は無理なんだ」。人生を駆け抜けた彼ならではの言葉だと思うんだけど、俺もこだまの方が好きだったりする。6両編成の新幹線って東京じゃお目にかかれない。
 
 昨日も書いたけど、良いハコには神様が住んでる。それは店とお客さんとミュージシャンが長い間に作りあげたものだ。ステージに上がって、今日の空気を確かめる。そうすると2曲目あたりで、その神様が降りてくるんだよ。昨日は本当にそんなライヴだった。後は、無理せず、流れに身を委ねていたら、自然に音楽が「フロウ」となって進んでいくんだ。一人のライヴで出来ることなんて、タカが知れてる。たった一本のギター、6本の弦の響きと自分の声とハーモニカだけなんだから。だから、最近はピックを使わないことが多い。指で弾いた方が遥かに豊かな表情が出るから。で、ピックはダイナミクスを頂点に持っていくための、リーサル・ウェポン、あるいは飛び道具のための最大のエフェクターって訳です。

 広島です。ここにはボンバー石井と云う弟のようなアホがいます。自慢は「シベリア超特急」に出演したこと。奴は自分の仕事もせずに、俺のライヴのために奔走してくれるっつー、奇特な輩。このツアーはどこまでも自力でやるツアーなのです。いつものライヴじゃ、俺たちがリハーサルをやってる間にバイトの子たちがビラを折ってるんだけど、今日はリハーサルをさっさと終えて、ボンバーと二人でやりました。超新鮮。俺、このツアーをやるまで、自分でギターのセッティングどころか、電池も換えられなかった(コメ先輩に教えてもらいました)から、すっげえ進歩だよ。でも、こうやってライヴが作られてるって事を知るのは悪くないです。

 さて、ライヴ。同じ広島県なのに、昨日の福山とここまで違うかって位、お客さんのリアクションが異なるのでした。シャイなのかな?でも、何かが伝わってたら、嬉しい。昨日が激しく壊れた俺なら、今日は静かに自分に向き合うことができるライヴだった。善し悪しの問題じゃないんだ。ライヴも人間も天気も音楽も、毎日違って当たり前なんだから。

 最初は鍋なんぞ、つつきながら大人しく飲んでたんだ。話題はお下劣だったけど。でも、今日は俺が日本で一番愛してるクラブ、スリム・チャンスでヒロシ’ズ・ナイトが催されるんだ。スリム・チャンスてね、そうだよ、愛するロニー・レインだよ。俺たちは午前5時まで踊り続けた。そこで行われた詳細を記す野暮は止めておこう。いやー、超絶に楽しかった。ストレス、全て発散。無数のハグとチューをして、ホテルに帰って気絶した。テキーラとストーンズっちゅー組み合わせはいつもながら危険だ。ははは。一番嬉しかったのは、途中で店に入ってきた60代のおばさんが踊り出したこと。音楽って素晴らしい。俺はこのツアーで何回の抱擁をしたんだろう。悪くないよ、人間って。応援してくれた広島の大アホどもに、特大の感謝を。

追伸
 そうそう。旅先で沢山のCD(シンガーだったり、バンドだったり)を手渡されます。旅してる間はipodしか持ってないから聞けないけど、ツアーが終わったら全部聞くからね。
ありがとう。

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by 山口 洋