don't think!

2006/03/22, 17:49 | 固定リンク

3月22日 水曜日 曇り 

 ツアーバスに乗って、東京に戻る。昨夜、さんざん盛り上がった「俺的ストーンズ曲順」をロ−ディーの阿部ちゃんがipodにプレイリストにして入れておいてくれたので、道中、仮想ストーンズ来日公演で盛り上がる。いやぁ、音楽ってすごいね。いろんな記憶がイントロと共に突然フラッシュバックしてくる。酸っぱいものも、愉しいものも。あの娘と眺めた玄界灘とか、いつも練習してた友達の家の納屋から見上げた空とか。やがて、プレイリストの再生も終わり、気がつくとドライバー氏と俺以外は全員寝ていると云ういつもの光景になる。いいなぁ、みんな。乗り物で眠れて。俺は、例のツアーをやって以来、こうやって移動している間も、時間が惜しくて仕方がない。起きている間にやれることは沢山ある。
 とりあえず怒濤のライヴシリーズは終わった。家に帰って、いろんな事をゆっくり考えようと思う。いろんなメールが届く。98%は人生きびしいっすよ、みたいな内容。でも、多分それは今に始まったことじゃないよ。太古の昔からそうだったんじゃないかな?ひとつだけ伝えたいことがある。どんな職種であれ、どんな状況であれ、どんな人生であれ、八方ふさがりの道なんて、よっぽどの事を除いて、実はないんじゃないか、と思うんだ。たいていの場合、自分の視野が狭くなっていて、客観性を失っているだけの事で。俺はその事をこのツアーで教えられたよ。自分がうまく行かないのはきっと社会や環境や金のせいじゃない。間違いなく自分のせいだと思うんだ。笑いを忘れず、さぁ、窓を開けて、新鮮な空気を吸って、また明日からやり直そうぜ。どこかに繋がっていない道なんてないし。あったとしたら、それは道じゃないんだからさ。

 もう少ししたら、何処からか歌がやってくるだろう。そんな予感がする。だから、無理にひねり出すのは止めて、しばらくギターを握らずにいようと思う。それだけの体験、そしていろんな人の想いを俺は受け取ってきたはずだからさ。歌って何処からやってくるんだろうね?自分でも分からないんだよ。これだけ長い間、続けていても。でも、ある日やってくるんだ。俺が「完全なるオリジナル」を書いてる、なんて意識はないんだ。使ってる言葉だって、メロディーだって、俺がゼロから発明したなんて思っちゃいない。この時代に生きてて、その空気を吸って、その中で生まれてきたものを、閃きとともに、多分編集してるだけなんだ。だから、もっと時代を見つめていたいし、多くの人に会いたいし、いろんな人と演奏してみたいんだ。ようやくね、楽譜がなくても(読めないけど)、前もって聞いていなくても、その場で演奏さえしてくれれば、俺は響き合えるだけの能力を手に入れたんだ。頭で考えちゃだめなんだ。流れに乗っかって、互いの新しい流れを作るだけの事なんだ。音楽の動物になるんだ。俺たちには12/26日にみんなに届けるアルバム以外の締め切りはもうない。全部自分たちで決めたことなんだ。それが気持ちいい。昨日、池畑さんに云われたんだ。「まだヒロシには絶対に負けん」って。俺も「今日の俺にしか出来ない演奏をしよう」と思うんだ。それも考えちゃだめなんだ。考えすぎると出来ないんだ。音楽の神様が降りてこないんだ。響き合うんだよ。そんなバンドのリレーションが俺は好きだ。どんな年齢になっても、人間に伸びしろはあるのさ。可能性はあるのさ。自分で諦めてしまわない限り。トシを重ねて失うのは体力だけさ。トシを取らなきゃ見えてこないものってのが沢山ある。だから、人生が愉しいと、最近思えるようになってきた。若い頃に戻るなんて、まっぴらごめんだよ。もういい。あんな想いは二度としたくない。だから、何処まで行けるのか全く不明だけど、行けるとこまで行くつもりだよ。

by 山口 洋