それぞれの春

2006/03/27, 23:32 | 固定リンク

3月27日 月曜日 晴れ 

 桜が五分咲きになってるのを見た。もう春だね。嬉しいけど、切ない。桜は俺にとってはそんな植物だったりもする。

 夕方まで、ずっと金の計算とか、今年のスケジュールとか、そんな事を考えてた。逡巡って言葉が似合う時間だったけど、それがみっともない事だとか、ミュージシャンがやらなくていいはずの事だとか、そんな風には思わない。第一義的な目的が金じゃないとしても、愉快に暮らすためにそれは必要なんだ。

 夕刻。mf247の社屋で、中村貴子女史とポッドキャストの収録。彼女との縁を語ると長くなるから割愛するけど、ずっとずっと音楽を愛してくれてる素晴らしいパーソナリティー。彼女の変わらない体温。書くと簡単だけど、良い時も悪い時も、同じ体温でミュージシャンに接するって事がどれだけ難儀な事なのかってのは、身をもって俺も知ってる。だから、別れしな、いつも同じ台詞でごめんね、と思いながら、「じゃ、貴ちゃん、身体に気をつけて」って。それ以上の台詞は思いつかないんだ。ありがとう。

 mf247。社屋には自由な風が吹いてた。長は丸山茂雄さん。俺や貴ちゃんがデビューした時、エピックの長だった人。久しぶりにお会いした。人間の顔にはいろんな事が刻まれてる。再会の瞬間。彼のキャラクターと強運(それも実力のうちだよね)と才能ってものが顔に刻まれてることに気づいた。うん。愉快な話だったよ。取り囲んだ全ての人間を惹きつけるだけの求心力があるんだ。おごらない自信とともに、それが彼一流の気遣いでもあるんだろうけど。俺は自分に足りないものを発見しながらも、それが一朝一夕で出来る事でもなく、勝手に「人生ってやっぱり可能性は無限大だ」と思っていた。丸山さん、スタッフのみなさん、ありがとうございました。

 それから俺は家に帰り、レーベルの人々やスタッフと打ちあわせ。アイデアは、取りとめのない話の中から湧いてくることだってある。そうやって決まっていった、相変わらずの無茶なスケジュールを横目で見ながら、「よっしゃー、ひとつやってみるかい」と思った。何にせよ、俺は今日何も生産していないのかもしれないけれど、人の力はやっぱり絶大なのであった。それぞれの人にそれぞれの春。ありがとう、アゲイン。

 

by 山口 洋