ドリアン・グレイの肖像

2006/05/17, 18:23 | 固定リンク

5月17日 水曜日 雨 

 雨が降っている。しとしとと、日々を洗うように降っている。曇天。でもそんなに重い色じゃない。今日の雨はそんなに嫌いじゃない。
 
 歌を書いている。いつもは地下の仕事場に居るのだけれど、犬が居る2階の部屋で書いている。スースーと寝息を立てて眠っている。ピースフル。机の上にはラフ・スケッチが入ったipodと紙と鉛筆とギターとカポタストだけ。考えてみれば、本当のところ、必要な道具なんて、これだけじゃないか、と思う。だったらいいな。身軽でいいな。ふとギターを見やる。いつ、何処で買ったんだっけ?マーチンのD-28。このところ、ずっとこれで曲を仕上げてる。阿蘇に逃避する時には何故かヤイリを持っていきたくなる。どうしてなんだろ?自分でも分からない。永い間に刻まれた沢山の疵。でも、これは妙に愛おしい。多分、怒りや憎しみで出来たものじゃなくて、表現はどうか、と思うけど、多分それが「愛の証」みたいなもんだからかな?随分前、「増えていくのはギターの疵だけで充分だ」って云った人が居るけど、俺もそう思うんだ。

 簡単に、シンプルになっていく。包んでいるのは「空しさの雲」。あるいは雲海のようなもの。それは霧じゃないんだよ。雲なんだってば。無理にヘッドライトをつけたって、余計それは見えなくなるんだ。だから、自分の心の声を聞く。あるいは耳を澄ます。新聞を読んで、街を歩いて、人々の顔を観察する。殺伐、そして殺伐。もう誰も他人の顔を見ようとはしない。人は一人で生きていないことを知ってるくせに。でも一人だけれど、独りではない。いつも、いつもそう思う。望んでいるのは「空しさの勝手な連帯」みたいなものだ。手を握り合うことじゃない。愚痴ることでもない。あるニュース番組の背景に「変」という言葉。俺ならそこに「空」と書き込みたい。「空虚」で「空しい」けれど、それは「空」とも読めるからね。

 百貨店の一階はどうして化粧品売り場なんだろうね。失礼を承知で書くなら、そこに足を踏み入れた瞬間、お腹が痛くなる。頭がガンガンしてくる。ものすごい臭い(ごめん)が混じり合ってる。それもまた雲海かもしれん。意味もなく、女性ってすげぇ、と思う。ドリアン・グレイ。

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by 山口 洋